まるでグーグル内部をツアーしているかのようだった。
もちろんこれはフィクションで、会社の名前は「サークル」。
だが、どうみてもグーグルがモデルであることは間違いない。

筆者の立場は、どちらかといえばインターネット否定派だ。
このままネット依存、SNS依存が進んでいくと、世界は大変なことになってしまうかも……といった内容のフィクションだが、あくまでもエンタメとして楽しめるようになっている。

主人公のメイは20代女性。
天才集団「サークル」に入社、という夢のような日々が始まる。
寝る暇も惜しんで仕事、仕事、フォロワーづくり、仕事、仕事、会社での付き合い、仕事、仕事、親の世話、仕事、仕事、ときどき恋……と、目の回るような忙しさだ。

本人はこれ以上ないほどに一生懸命やっている。
だが、徐々に会社とのズレがあらわになってきて……。

SNSに押しつぶされそうになりながらも、フォロワー数が増えるとやっぱりうれしい。
踊らされているのは分かっているのだけれど、きっぱりとやめることもできない。
そんな我々の気持ちを、著者のデイヴ・エガーズはこれ以上ないほどうまく代弁してくれた。

トム・ハンクス、エマ・ワトソン主演で映画にもなった。
私はまだ観ていない。
エマ・ワトソンはともかく、トム・ハンクスはこの小説の中の誰を演じているのか。
イメージがぴったりする人がいないように思うのだけれど。
ぜひ、そのうち覗いてみたい。

(以下、引用です)
「じゃあ、今度は実際の問合せをやってみよう。準備はいい?」
メイは準備ができていなかったが、そう言うこともできなかった。「いいわ」
ジャレッドは顧客からの依頼を選んで目を通すと、初歩だと言わんばかりにちょっと鼻で笑った。定型回答文を選ぶと少々手を加えて、顧客にすばらしい一日を、とメッセージを送った。やりとりは90秒程度で、2分後、スクリーン上にアンケートの返信が確認されスコアが現れた。99点。ジャレッドは椅子にもたれてメイのほうを見た。
「さて、悪くないよね? 99点は悪くない。でも100でないのはなぜだろうと僕だったら考えてしまう。調べてみよう」彼は顧客のアンケート結果を開き、さっと目を通した。「うーん、どの部分が不満足だったかというはっきりした形跡はない。さて、たいていの企業だったら、ワオ、100点中99点、ほとんど完璧じゃないか、と言うだろうね。そして、僕もまさしくそう言う。ほとんど完璧、確かに。でも、サークルでは、その残り1点を気にするんだ。じゃあ、その真相を探ってみようじゃないか。これがフォローアップのメッセージ」
ジャレッドが示したのは、別のアンケートで、前のよりは短く、クライアントに当社とのやりとりのどんな点がどのように改善できるか尋ねるものだった。それを顧客に送る。
数秒すると返信が返ってきた。〈すべて満足。ごめん、100点にしておけばよかった。感謝!〉
ジャレッドはスクリーンを指でトントンと叩き、親指を立ててメイに首尾上々の仕草をした。
「いいかな。ときには数値にあまりこだわらない人に出くわすことがある。だから質問するのはいいことだ、物事をはっきりさせるために。これでパーフェクト・スコアに戻った。自分でやってみるかい?」
「ええ」

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