1995年に、フジテレビ系列の『世界名作劇場』枠で放映された「ロミオの青い空」を、脚本とDVDを見比べながら、ゆっくりと鑑賞しなおしてみようと思う。
果たして最終話までたどり着けるかどうか、心もとないが。

脚本集を何年かぶりに読み返して感じたのは、
「躍動感にあふれている」ということ。

教会の鐘つきのアルバイトをしているロミオ(折笠愛)が寝坊して、大急ぎで走って行くシーンにも、それは如実に表われている。

慌てて塀を乗り越えるロミオ。
飛び降りたのは……墓地だ。
墓石を躱して走って行く。
苔むした小さな聖人像のそばを通り抜けたとたん……聖人像ががくっと傾いた。
行きかけたロミオの背中が、一瞬、とまる。気がとがめて振り向くと──聖人像はまるでロミオに文句でも言いたげに首をかしげていた。
ロミオ、素早く戻って首を元の位置に治すと、十字を切って、また駈け出した。
※ ※ ※
ロミオの行く手──朝日が今昇ろうとする、その先に教会が見えてきた。
教会に飛び込むロミオ。
朝焼けの色と競争で鐘つき台に駆け上がった。
朝日は今、山から顔を出すところだ。


また、表現もかなり感覚的で、名だたるアニメーターの皆さんの矜持を喚起したことと思う。
たとえば“死に神”と呼ばれる人買いルイニがロミオ親子に目をつけるシーン──。

窓の外……ロベルトとロミオが歩いてくるのを見つけるルイニ。
楽しそうなロミオに目をとめる。
ルイニの目が細く歪んだ……。


並みの脚本家ならば
「ルイニ、不気味に笑う。」
で、済ませてしまいそうなところだ。

ここにいるのは、どこにでもいるステレオタイプの悪役ではなく、複雑に屈折した、世界にただ一人しか存在しない人間ルイニ(小村哲生)である。

世間さまに顔向けできない仕事をしているというコンプレックス。
その引け目、弱さからくる、カムフラージュとしての自己正当化、不遜、嘲笑、強面の演出。

タイトなスケジュールの中で、しかも基本的には子供向けのアニメ番組に、そこまで要求されたのかと、プロ意識の高さには舌を巻くよりない。

そういった重層的な性格を、シンプルな線の中に込めることのできる、信頼のおける凄腕の職人さんたちが支えてくれたからこそ、このアニメが長年にわたって愛されてきたのだろうし、島田満先生も思う存分、健筆をふるわれたのではないだろうか。

放映から20年以上たった今見ても、まったく色あせない、それどころか、年月がたつほどにその輝きが本物であることが証明されていくような、素晴らしい作品だと思う。

第1話 アルプス! 小さな村の大事件
絵コンテ・演出 楠葉宏三
作画監督 佐藤好春
脚本 島田満

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ロミオの青い空脚本集 上巻