サイトウ・キネン・オーケストラの伝家の宝刀、いわゆる“ブラいち”。
1990年8月10日、ロンドン、ロイヤル・アルバート・ホールでのライブ。

ブラいちのDVDは他にもあるが、私はこのバージョンがいちばん好きだ。
カメラマンが曲の構成を良く分かっている。

女性団員を、それもなるべく若い人のアップを映せばそれで済むと思っているどこかの放送局とは大違いだ。
特にこの時は、当時18歳、チャイコフスキー・コンクール優勝で話題の諏訪内晶子さんが参加していた。
もし、かの局が番組を制作したら、彼女ばかり映してせっかくの名演を台無しにしていただろう。

BBCが制作しているので、マエストロ小澤や団員の方は英語でインタビューに答えている。
潮田益子、今井信子、和波孝禧、志賀佳子さんたちの英語の達者なこと!

出だしは、今は亡きエバレット・ファースさんのおどろおどろしいティンパニーで幕を開ける。
この人の表情はいつも真剣そのもの。マエストロから片時も目を離さない。

小澤はタクトを持っていない。
時々、右手と左手が全く違うディレクションをするのには驚かされる。
また、弦楽器パートに対してはあまり細かく振らないようだ。
よほど信頼しているのだろう。

コンサート・ミストレスは潮田益子さん。
スッと伸びた背筋が美しい。
いったんカメラが彼女を映すと、魅了されたように貼り付いて動かなくなる。

最前列に座っている、横縞のTシャツを着た青年が微動だにせず、真剣な表情で聴き入っている。
このDVDを名作に押し上げた、陰の立て役者の一人だ。

オーボエの宮本文昭さんとフルートの工藤重典さんはお隣さん同士。ツー・ショットで映されることが多い。
お二人とも上体を大きく揺らして、非常に熱の入った演奏。観ているほうも燃えてくる。

怒濤の第四楽章では、全員が決死の特攻隊となり、小澤さんに命を捧げます!という様相を呈す。
ファンにはおなじみ、小澤のうなり声「ウイイイィィ」「エイイィィィ」もふんだんに聴こえてくる。
やっぱりこれがなくちゃね。

56分台、ついにやってきたクライマックス。
管楽器が満を持してファンファーレをとどろかせる。
力強く上げられる小澤征爾のこぶし。(この時の表情が見えないのが実に惜しい!)

最後のストップ・モーションは・・・正直いって微妙。
傑作ドキュメンタリー「OZAWA」のエンディングを意識してのものか。
まあでも、やりたくなる気持ちは分かる。

至福の時間は無情にも終わりを告げる。
鳴りやまない観客の拍手、足踏みを背に、笑顔の団員たちがステージを降りていく。
このシーンはテレビ放映バージョンでは見られない。
その代わり、テレビ版はアンコール曲も放映されたようだ。
YouTubeにあるかも知れない。

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