(ネタバレあります!)

これはどう捉えたらいいのか。読了後ふたたびオビを読んであらためて首をかしげさせられた。(以下、オビを転載)

「ごめん、好きにならずにはいられない」

失踪した弟の嫁に会った瞬間、俺は雷に撃たれた

解けない謎が、出逢うはずのなかった二人を近づける

だから、気をつけたほうがいいですよ、と注意したんです。

弟が失踪した。
彼の妻・楓(かえで)は、明るくしたたかで魅力的な女性だった。
楓は夫の失踪の原因を探るため、資産家である夫の家族に近づく。
兄である伯朗(はくろう)は楓に頼まれ協力するが、時が経てばたつほど彼女に惹かれていく。

どの部分かは明示しないが、明らかにウソをついている箇所がある。
最近のミステリ界では、これはセーフなのだろうか。

それから今どきの小学校の先生が、
「この子は将来ノーベル賞も夢じゃない」
とか、そんな無責任なことを言うかなあ。
東大云々ならまだしも、ノーベル賞というのは。
だいいち、なんで分かるのかっていう。

そういう細かいところでの粗さがいくつか。
大きいところでは、応援したくなるキャラクターが一人もいないというのが痛かったか。

そもそも事件らしい事件が起こらない。
母親の死が、他殺の疑いがあるらしいとか。
だが、その件について話が進むわけでなし。

弟が行方不明だとか。
しかし本人の書き置きはあるし、ノーベル賞取れそうなほど頭がいいそうだし、まあ大丈夫でしょ、と読んでいても危機感を煽られない。

それから主人公の獣医が診察のとき、飼い主たちにぞんざいな口の利き方をする。
こんな動物病院すぐ潰れちゃうのでは。
弟の嫁にも、初対面にもかかわらず同じ態度で接している。

あと細かいことだが、
タイトルの、危険な「ビーナス」をはじめとして、「サービス」「プライベート」「ビデオ」「バンクーバー」「ライバル」などは“バ行”表記なのに、この小説のテーマとも言えるある言葉だけ“ウに点々”表記となっている。
その統一性の無さも気になった。

ファンの目で見ても、良いところを見つけ出すのが難しい作品だ。
東野圭吾御大の全キャリアの中で、箸休め的な作品として位置づけられることになると思う。

アマゾンレビューも、辛口評価が並んでいる。
がしかし、だからこそ次作は“買い”なのだ。

御大はきっとやってくれる。
逆転ホームランを信じよう。

br_banner_kokuban


<東野圭吾作品 - 極私的星取り表>
★★★★★ 「容疑者Xの献身」
★★★★★ 「真夏の方程式
★★★★★ 「白夜行
★★★★★ 「卒業
★★★★★ 「眠りの森
★★★★☆ 「マスカレード・イブ
★★★★☆ 「人魚の眠る家
★★★★☆ 「どちらかが彼女を殺した
★★★★☆ 「新参者
★★★☆☆ 「マスカレード・ホテル
★★★☆☆ 「片想い
★★★☆☆ 「赤い指
★★★☆☆ 「嘘をもうひとつだけ
★★★☆☆ 「私が彼を殺した
★★★☆☆ 「悪意
★★☆☆☆ 「ラプラスの魔女
★★☆☆☆ 「虚ろな十字架
★★☆☆☆ 「麒麟の翼
★★☆☆☆ 「宿命
★★☆☆☆ 「名探偵の掟
★★☆☆☆ 「カッコウの卵は誰のもの
★☆☆☆☆ 「夜明けの街で
★☆☆☆☆ 「パラドックス13
★☆☆☆☆ 「ナミヤ雑貨店の奇蹟
★☆☆☆☆ 「危険なビーナス

番外編 :
映画『白夜行』 | 東野圭吾ワールドを完璧に再現。