本日は、佐分利信の命日。
(1909年2月12日-1982年9月22日)
ということで『家族会議』を鑑賞した。

株の仕手戦でドロドロ、ボロボロ、人命まで失われるという、いったいこれのどこが「家族会議」なの?という映画。
それでも見直してみると、やはり島津保次郎監督ならではの、ホッコリ、ウルウル、しみじみテイストが随所に溢れていた。

途中で何度か「トウサン」という言葉が出て来る。
若い女性に対してそう呼ぶのである。
調べてみると、関西ではむかし、商家の長女を「とうさん」と呼んでいたそうだ。
なるほど納得。

それからウィキペディアの役名がどうやら間違っている。
OIKAWA-Michiko_wikipedia
家族会議 (映画) - Wikipedia (2016年9月22日現在)

及川道子の役名は「素子(モトコ)」ではなく「泰子(ヤスコ)」である。

また、ところどころフィルムが失われているようで、キャスト名には名前があっても、本編には顔を出していない人がかなりいる。
飯田蝶子、斎藤達雄、坂本武(これも漢字が『阪本』と間違っているなあ…)は、本当に出演していたのだとしたら実に惜しいことだ。

セリフも聞き取れないところがあったり、全体的に痛んだフィルムであるにもかかわらず、見終わったあとに満足感しか残らないのは、さすが島津保次郎監督。

佐分利信は二十代とはとても思えぬ存在感。
高杉早苗も輝きを放っている。
(この人、香川照之のお祖母さまにあたる方なんですね、今日初めて知りました)

。。。あらすじ(ネタバレしています!)

重住商事の若社長、高之(佐分利信)はモテモテ。
今日も春子(立花泰子)の紹介で、清子(桑野通子)と歌舞伎座で見合いデート。

春子というのは高之の会社の大番頭・尾上の娘で、高之の姉のような存在。
…ということが、シナリオ(『日本映画代表シナリオ全集5』に収録)を読んで初めて分かる。

本編ではカットされている箇所が多くあるので補足しながら進めていきたい。

清子はかなり乗り気だが、高之は素っ気ない。

その頃、関西から東京へ向かう二人の女性。
忍(高杉早苗)と、泰子(及川道子)である。

…汽車が画面左から右へ走っているので、分かりやすい。
…及川道子はこれが遺作となった。
本作の2年後、26歳という若さで逝去。
この時すでに病魔に冒されていたのか、痛々しいくらいに痩せている。合掌…。

じつは高之と泰子は惚れあっている。
しかし泰子の父親が、高之の父親を自殺に追い込んだ過去などがあり、高之は結婚に踏み切れない。

泰子の親友、忍はなんとかこの恋を成就させようと奔走する。

…勝ち気で行動的なセレブお嬢様といった感じの忍。
「行きまほ」「ちょいとそのタバコ取ってんか!」
などの関西弁が微笑ましい。

というわけで、泰子と忍からなる関西コンビと、清子と春子からなる関東コンビとが、高之を獲り合うという図式で話は進んでいく。

関西チームが上京してきたのは、高之の父の法事に出席するため。
高之の父の仇?である仁礼文七(志賀靖郎)もふてぶてしい顔をして出席。
仁礼の娘・泰子は高之と父の板挟みでいたたまれない。

仁礼の秘書は京極錬太郎(高田浩吉)。
この男だけ毛並みが違う。農家出身の叩き上げ。
若手ながら仁礼の信頼を得ている切れ者だ。
ネチネチと嫌らしい笑いを浮かべ、嫌われ役を担っている。

仁礼はこの男と泰子を一緒にさせたいようだ。
だが、上に記したように泰子のほうは高之に気がある。
また錬太郎も生涯の伴侶は自らの手で見つけたいと秘かに思っている。

「泰子さんの件についてはフェアに行きまほ」
と、高之に申し入れる場面がシナリオにある、が本編ではカット。

仁礼と錬太郎は製紙会社の合併を目論み、こっそり株を買い集める。
真の目的は高之潰しにあるようだ。

「高之さんところが困りますよ、いいんですかぁ」
などと言いながらホイホイと自分の持ち株を売る梶原(河村黎吉)である。
娘の清子(歌舞伎座デートで高之にひとめ惚れした娘)はこれを立ち聞きする。

仁礼たちの仕業により、株が暴落。
高之、窮地に立たされる。
そこで待ってましたとばかりに清子、黒幕が仁礼であることを教えて点数稼ぎ。
このおかげで対策のめどが立った高之、何とか持ちこたえる。

高之の窮地を救った清子は、満を持してのプロポーズ。
高之、やんわりと断わる。
清子、あまりのショックに握りしめていたコップをパリンと割る。

…ここの演出が凄い。
いまどき映画で殺人とか見ても何とも思わないが、桑野通子の手にガラスが刺さり、コップに鮮血が垂れ(とはいってもモノクロだが)、佐分利信が手当てする…この間、見ているこちらのほうが痛かった。

また、結婚を断わられた桑野通子が窓際に立った時、いきなり窓下の川に飛び込むんじゃないかというくらい迫力があった。
そのとき窓の桟がちょうど桑野通子の目を隠していて表情が分からない。これも本当に怖かった…。

さあ、これからが大変。
あれほど高之に惚れていた清子が、これ以降は敵方に回る。

「打倒高之」ということで目的を同じくする錬太郎と結託し、高之潰しに執念を燃やす。
貧乏パワーと失恋パワーがタッグを組んだ、これは強力そう。高之、大丈夫か?

やっぱりダメだった。
あえなく潰される高之。会社は倒産しちゃった。

高之を励まし続けているおてんば令嬢の忍は、高之の家や権利など一切合切の買い取りを申し出る。
そしてこれからは自分が社長になり、高之を番頭として雇うという。
これは忍の父・池島(藤野秀夫)からの、高之の亡父との交誼の賜物でもあった。
高之はありがたく受け入れる。

高之らを潰して大もうけした仁礼。
「もうこのへんで錬太郎と結婚しなさい」
と、娘の泰子に強権発動。
これはたまらないと泰子、東京へ逃げる。

泰子を乗せた汽車が、画面左から右へと向かう。
汽車は富士山の裾野あたりで下り列車とすれ違う。
これに乗っているのが春子だった。

春子というのは、高之と清子の歌舞伎座デートをセッティングした娘だ。

…これは本編にはないのだが、春子の父・尾上(水島亮太郎)は、高之の会社が倒産した後、自殺を試みる。
春子が関西へ向かっているのは、父の仇(?)である仁礼文七を刺殺するためである。

(※追記 某映画サイトのあらすじ紹介では、春子の父親は『自殺』となっているが、シナリオを確認した限りでは『自殺未遂』のようだ。未遂で済んだのに、娘が敵方の大将を刺し殺しに行くものか? 疑問がないでもないが…とにかくシナリオ上では『自殺』していないということを付記しておく)

この事件は物語上、かなり重要と思われる。
が、本編ではそっくり抜け落ちているので、勝手ながらシナリオから引用させていただいた。

224 文七の部屋

文七、彼女を入り口へ迎える。

文七「や、これはお珍しい……どうぞ……」

春子、しとやかに一礼し、共に中へ消える。やや間。とたんに奥より、物音と「うーむ」と云ううなり声(間)

225 廊下

お雪とむら、茶菓を持って奥へ。

226 廊下の一箇所

女中たち来る。と、向うより春子が出て来る。

むら「(会釈し)もうお帰りでございますか?」

春子「ええ」

と茶菓を置き、むら、春子を送って玄関の方へ。お雪は文七の部屋の方へ行く。

227 文七の部屋

お雪、入って来て、叫び声をあげる。

228 文七、短刀で殺されている

229 お雪、バタバタと元の方へ叫びながら走る

230 廊下

おむら、下男の弥兵がその声に走って来る。お雪、おむらにしがみつき、

お雪「死んでなさる!」

むら「何?」

お雪「早よう行って」

むら「何んでんね」

おむらと弥兵、走り行く。飯炊き、他の女中たちも集まる。

231 文七の部屋

両人、入って立つなり、弥兵、ヘタヘタと座る。

232 文七の死体

落ちている短刀(尾上の品)

233 夜の町

春子が自失した面持でただ歩く、ぐんぐん歩く。

仁礼亡き後、事業はそっくり錬太郎が引き継ぐことになった。
錬太郎は生涯の伴侶に泰子ではなく、清子を選ぶ。
打倒高之という目的の下、二人三脚を組んだコンビはそのまま結婚までゴールインということに。

いちど会社を潰した高之は、これからは雇われ番頭という形で再出発。
もう泰子との間にわだかまりはないはずだが、何となくぎこちない二人である。

ラストは忍の別荘───。

忍は相変わらず、高之と泰子の世話を焼いている。
二人を別荘に残し、お邪魔虫は消えますとばかりに一人ドライブに出かける。

車中で初めて孤独で哀しげな表情を見せる忍。
彼女は高之を愛していたのだ。

溢れる涙を拭おうともせず、ステアリングをしっかりと握り、前方を見つめる忍。
車は六甲の山道を走り続けていく───。

(終)

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Family meeting (1936 / Japan)

監督: 島津保次郎
原作: 横光利一
脚色: 池田忠雄
監督部: 吉村公三郎
撮影部: 生方敏夫、木下惠介

キャスト
重住高之: 佐分利信
素子: 及川道子
忍: 高杉早苗
清子: 桑野通子
春子: 立花泰子
京極練太郎: 高田浩吉
仁礼文七: 志賀靖郎
池島信助: 藤野秀夫
尾上惣八: 水島亮太郎
梶原定之助: 河村黎吉
信江: 鈴木歌子
取引員: 大山健二

キネマ旬報別冊 日本映画代表シナリオ全集5◆土 父ありき - ヤフオク!
『丹下左膳』『家族会議』『愛怨峡』『泣虫小僧』『土』『海を渡る祭礼』『父ありき』『椿姫』『村の花嫁』『何が彼女を殺したか』『抱寝の長脇差』