本日は、日本のテレビの黎明期に活躍したTVマン、井原高忠氏の三回忌。
ということで氏の著書「元祖テレビ屋大奮戦!」(1983年刊)を読ませていただいた。

井原氏と言えば、とんねるずの名付け親としても有名。
また、70年代に権勢をふるっていた渡辺プロダクションとの確執は今なお語られることが多い。

氏はこの件を本書の中で、日テレとナベプロとの「戦争」と表現している。
以下のリンクに詳しいので、興味がおありの方はどうぞ。
↓ ↓ ↓
NTV紅白歌のベストテン - 渡辺プロ事件 - Weblio辞書

また1978年、飛ぶ鳥を落とす勢いのピンクレディーがNHK紅白歌合戦を辞退したことがあった。
当時としては考えられない行動の真相など、「今だから語れる」話がてんこ盛りだ。

かなり赤裸々な内容を含んでいるためか、現在は絶版。
古書にはかなりの値がつけられている。
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だが、そんな芸能ゴシップなどネットを検索すればいくらでも出てくる。

本書の価値は、井原氏の凄まじい仕事ぶりを垣間見られるところにある。
どのようにして人気番組を世に送り出し続けたのか、余すところなく語られている。

『ゲバゲバ90分!』『11PM』『うわさのチャンネル!』『24時間テレビ』『カリキュラマシーン』…
など、革新的な番組を次々と生み出し、そしてヒットさせてきた伝説のテレビマンの貴重な教えに、真摯に耳を傾けたい。

(以下、引用です)

10時開始、と言った場合には、9時半には来てるべきなんだよね。僕の考えでは。何故かというと、10時開始で10時に来るってのはおかしい。10時に集まると言ってるんじゃないんだから。
だから、10時に顔をそろえていない人には、「帰れ!」になっちゃう。やっぱり総合芸術だからね。大半の人はもう、10時に仕事を始められる状態にいるのに、たった一人の人間が来ないために、その人たちが待つということになると、何のために眠いのに早起きをして、200人なら200人の人が起きて来たのか、っていうことになるでしょ。寝坊したバカな一人のために、あとの199人が全部損するわけですね。それが許せないわけですよ。
だから、その場合には、「お前、死ね!」と、「おわびのためにそこで腹をかっさばいて死ね」と怒鳴ることになる。「お前のためにみんな損したんだから。だから死ぬのやなら、みんなにお金を配れ。お前の出演料を全部」。そういうことになっちゃうわけですよ、僕の場合。

今はちゃんと前説屋っていうのがいるらしい。それ専門の人がいたり、タレントのお付きがやったり、あるいは局の人がやったりしてるようですがね。あんまり売れない役者の卵だとか、頭の悪い人にやらせたら絶対いけないですよ。
僕がそれをやったのは、その番組の全責任者であるし、いちばんその番組をよく知ってるし、どうしてほしいかもいちばん知っているからです。
(中略)
だから、公開放送の前説ってのは、拍手の練習をして、笑ってくださいって言うためだけにやってるんじゃない。そうとしか思えない前説も多いけど。何事にも依って来たるべきことってものがある、何故やったか、という理由が。それが何代か過ぎると、何故やったかってことじゃなくて、ただやるという慣例になってしまうんですね。

ディレクターによっては、そういうときに大長考に及ぶ人がいる。
(中略)
そこでディレクターがウーンと唸ってるってことは、役者が遅刻するのとおんなじなんですよ。やっぱり200人からのスタッフを待たせてるわけだからね、失礼だって僕はいうの。ディレクターたるものは、もう考えて考えて、完全に変更の余地がない状態でスタジオ入りしなさい、って僕は若いディレクターには教えました。そこで考えるなんて恥ずかしいことなんだからと。

数年前に、あるドキュメンタリーの企画で、作家の平岩弓枝さん、橋田壽賀子さん、佐藤愛子さん、と会食する機会がありましてね、佐藤さんがその席上で、「どうしてテレビってのは、あたし達の原作よりみんなつまらなくなるの」って、言った。
だから、僕は言ったの。「当たり前じゃありませんか。見てごらんなさい、テレビっていうのは、ドラマがゴールデンタイムだけで、一週間に40本から出てますよ。本当なら、40人のすぐれたプロデューサーと演出家がいなきゃいけないわけだ。だけど、世界中見渡したって、すばらしい監督なんて何人もいないじゃありませんか。ということは、テレビで40人もいるわけがない。せいぜいおまけして1割、4人だとしますか。そうすると、週4本位は、まあ見られるものがあるとしても、あとはたいていバカな担当者に当たる訳ですね。だから、すぐれた1割の人に当たるのは、まあ、運、不運の問題ですよ」ってね。
結局、人ですよ。テレビ番組の制作っていうのは。非常に属人的なもので、組織でやるとか、そういうものではありませんね。

そうして、朝から晩まで、ワーワー、愚にもつかないことで騒いで、自分で作るものに自信がないから、出て来た人間に「おもしろいですね、すばらしいですね」って言わせてる。そんなのは視聴者がいうことだ、出てる奴の言うことじゃないってんだ。そんなのは全部やめろ。そこから始まるわけですよ。

『巨泉・前武ゲバゲバ90分!』という番組のスケジュールはいちばん最初に香番表っていうのを作るところから始まる。
これは頭からおわりまで順に、どこに何が入るかという構成表ですね。
ギャグが130シーンある。
(中略)
そのコマーシャルの間にもギャグを入れたからね。これが日本初。そのギャグを見落としたくないから、コマーシャルも見てくれるだろう、というスポンサーへのサービスです。それとやっぱり、コマーシャルの間に、チャンネルをよそへ逃がしたくないから。まあ、大変な努力だといえる。

僕は『ゲバゲバ』の出演者には、みんながスターだという気持ちになってもらいたい、と同時に、みんなが通行人だって気持ちになってもらいたい、って言ってたんです。
当時、宍戸錠さんは、日活の大スターだし、朝丘雪路だって大スター、欽ちゃん、二郎さんというのも大スター、そういう押しも押されもせぬスターが一方におおぜいいて、そしてもう一方、まだスヌーピー抱いて歩いてた岡崎由紀とか、小山ルミ、ジュディ・オング、キャロライン洋子、石崎恵美子といったほんの子どももいた。それから、小松方正、熊倉一雄、常田富士男、藤村俊二、亡くなった大辻伺郎、為五郎のハナ(肇)ちゃん、といった個性派の俳優さんたちもいた。女優さんでは小川知子、宮本信子、松岡きっこ、太田淑子、うつみ宮土理、沖山秀子、吉田日出子といった人たちがいた。そういうバラエティに富んだキャストがすべて、この番組の中では同じスターなんだ、ということでやりたかった。だから、小山ルミや岡崎由紀が主演をやってるときにね、宍戸さんとか、浅丘さんが通行人で通ってくれる。何の役もつかない通行人をやってくれる。こんなことは芸能界始まって以来、なかったことでしょうね。

最初の放送の翌日ね、作家の津瀬宏さんから電話がはいって、「井原さん、これ絶対当たりましたよ」って言うんです。彼の家の前を、子どもたちが、“アッと驚く為五郎”って叫びながら通ったって言うんです。「だから、絶対当たりです」って電話があったんですが、やっぱり結果は大当たりでした。

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「元祖テレビ屋大奮戦!」井原高忠
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