本日は映画監督・佐々木康の命日。(1993年9月13日没)
ということで『螢の光』(1938)を観賞した。

高杉早苗が実に良い。高峰三枝子にひけをとらない存在感。
この二人がダブル主役。卒業間近の女子高生を演じている。

高峰[三枝]子の役名 = 三枝(みつえ)
高杉[早苗]の役名 = 早苗(さなえ)

…なんとも分かりやすいネーミングだこと。
先生に扮するのは桑野通子。
いつもの気の強いモダンガールとは打って変わった、おしとやかな先生役を好演している。

出だしは清水宏監督の『港の日本娘』(1933)を参考にしたかのような構図で、この後どうなるのかと思ったが、途中から一気に面白くなり、とても良い時間を過ごさせてもらえた。

。。。あらすじ (ネタバレあります!)

卒業間近の仲良し女学生6人組が、想い出づくりに箱根旅行へ出かける。
河原先生(桑野通子)も同行。かしましい教え子たちを優しく見守っている。
先生はすでに退職が決まっており、生徒と共に学校生活を終えることになる。
その後は実家へ帰り、父の農業を手伝うそうだ。

生徒の中で特に将来が輝いているのは三枝(高峰三枝子)だ。
ヨーロッパにピアノ留学という話も持ち上がっている。

三枝の親友・早苗(高杉早苗)は京都へ嫁ぐことになっている。
周りからうらやましがられる早苗だが、この結婚には哀しい事情があった。
父親が先方から金銭を融通してもらっており、その代わりに娘を嫁にやるという、いわば身売りのようなものだったのだ。
しかも許嫁は寝たきりの病人で、早苗が看病しなければならない。

そんな早苗を憎からず想っている青年がいた。
女学生の間で“貴公子”と呼ばれているイケメン・有賀(夏川大二郎)である。

実は三枝のピアノ留学のために奔走してくれているのが、この有賀なのだ。
のちに三枝も有賀に好意を寄せることになり、ややこしくなっていくのだが、今はまだ良いお友だち。

有賀は何度目かのデートで早苗にプロポーズ。
すでに婚約しています、とはさすがに言えない早苗。
なんとなく返事を保留、というかんじで告白タイム終了。
有賀、これであきらめた様子はない。

そして迎えた卒業式。
ここでまったく予想外の展開。
あの大人しい早苗がハイヒールにドレス姿で現われたのだ。
(吉田秋生・原作、中原俊・監督『櫻の園』を思い出します)

これに激怒したのが、あろうことか親友の三枝だった。

…わかりあえていると思っていたのに、自分にひと言も言ってくれなかった、とかいろいろな感情がない交ぜになったのだろう。
それは早苗も同じで、このあたりの説明のつかない混沌さがとても素晴らしいと思った。いい映画に当たって良かった…。

ここで早苗は初めて結婚の内情を打ち明ける。
さすがに同情を禁じ得ない三枝。ふたりは仲直り。

三枝は早苗への協力を買って出る。
早苗、いったんは三枝の屋敷にかくまってもらうが、三枝と有賀がヨーロッパに同行するという話を聞き、三枝の家を後にするのだった。

早苗は河原先生の実家を訪ね、暮らし始める。
そこへ早苗の父親(坂本武)が訪ねてきた。

河原先生、静かに、だが厳しく父親を責める。
寝たきりの夫へ身売り同然の結婚は早苗さんが可哀想すぎます、と。

それに対する父親の答えは意外なものだった。
早苗が家出してくれて本当は良かったと思っている。
あんな家へ娘を嫁にやりたい親などいるものか。
くれぐれも娘をお願いします…と言い残し、去っていくのだった。

これを陰で聞いていた早苗、父親の後ろ姿を追いかけていく。
「お父さん!」
タクシーに乗りこむ直前、見つめ合う父と娘。
一瞬、滋味にあふれる表情、だがすぐまた厳しい顔に戻り、娘にひと言の声もかけず車に乗り込む父親だった。(この演技凄かった!)

入れ違いのようにして、有賀が姿を現わす。
さっと身を隠す早苗。親友をおもんぱかったのか…。
有賀、とぼとぼと引き返していく。

それ以来、バーで毎晩飲んだくれる有賀。
そんな有賀を見て、三枝も大荒れだ。
バーまで追ってきた三枝、もう留学なんかどうだっていい!とばかりにガンガン酒をあおる。

それでも有賀の心は動かなかったか…。
三枝はその夜、自殺を図る。
未遂に終わるも、ほどなくして失踪。新聞に大々的に報道される。

三枝は田舎の旅館でひっそりと静養していた。
だが容態が悪くなり、いよいよ最期の時が迫ってきた。

連絡を受けて駆けつけてきてくれた河原先生と早苗。
彼女らに見守られて、三枝は19年間の短い生涯を閉じるのだった。(終)

感想。。。

他にもよいシーンが沢山ありました。
卒業式で、生徒たちが「蛍の光」を歌っているとき、カメラが外に出て、いろいろな場所を散策していきます。
ガランとした教室が映し出されたときは胸が締めつけられました。

また、微笑ましいシーンも。
早苗の実家は果物屋さんのようで、そこの小僧さんが早苗の母親(葛城文子)に用事を言いつけられるシーンがありました。

「へーい」と落語の与太郎よろしく下がっていく小僧さんを、
「あ、あともう一つ」と呼び止めるおかみさん。
戻ってきた小僧さんへひと言。

「クラブ歯磨きね。アレを二つほど」

…タイアップもここまであからさまだと気持ちが良いですね。

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監督: 佐々木康
脚本: 斎藤良輔 荒田正男
撮影: 野村昊 長岡博之 寺尾清
作曲: 万城目正

出演:
桑野通子
高杉早苗
高峰三枝子
東山光子
夏川大二郎
小林十九二
山内光
坂本武
葛城文子
吉川満子