昨日、2016年9月7日は山口淑子さんの三回忌。
ということで山口さんが李香蘭名義で主演された『サヨンの瞳』を観賞した。

太平洋戦争当時、日本の支配下にあった台湾の人々が、召集令状を受け取って、よろこんで日本のために戦地に赴く、という馬鹿げたというか、ありえない内容の国策映画。
それは百も承知とは言いつつ、やはり見ている間は身の置き所がなかった。

主演の山口淑子さんは、戦後になってはじめて自分が日本軍のプロパガンダに利用されていたことを知り、大変なショックを受けたそうだ。
しかし恥じ入るべきは、山口さんを騙し続けていた日本の軍部で、山口さん本人にはかけらほどの非もない。

他国の人々を啓蒙したい気持ちはあったとは思うが、それは当時のほとんどの日本人が、この戦争を正しいと信じていたからで、洗脳とか、搾取とか、そのような上からの、邪な気持ちは微塵もなかったと思う。
この映画での、澄み切った、意志の強そうな瞳にそれは現われているし、戦後の山口さんの生き方が立派に証明している。
今では国内だけでなく、世界中の人々が、当時の山口さんのつらい立場を理解してくれていると信じる。

映画の内容そのものは、まあ、普通か、やや下か、そんなところ。
これを撮っている最中に、清水宏監督の左遷が決定したそうだ。
その理由は「品性劣等」。
要するにそれまでの暴君ぶりに松竹社員の怒りがついに爆発したということだろう。

清水宏はこの後も佳作を発表し続けるが、松竹大船撮影所時代の輝きを取り戻すことはなかった。
ちなみに『サヨンの鐘』は清水40歳の時の作品。
通算139本目。(全163作)

本作においても、清水宏「らしさ」はたっぷり味わえる。

なが〜い道を集団で縦移動。(画面奥から手前へ)
なが〜い道を集団で横移動。(画面端から端へ)
子供たち。
自然。。。

葬列で泣かせるはずの場面なのに、アヒルを使って笑わせにかかったり、手前に墓碑の列を置いたところなどは、戦争礼賛映画を作らされたことへの清水なりの抗議だったのかも知れない。

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あらすじ (ネタバレあります!)

台湾の山間の村でのどかに暮らす高砂一族。
17歳の娘・サヨン(李香蘭=山口淑子)は元気いっぱい、子供たちのリーダー的存在。
そんなサヨンの想い人、サブロ(島崎溌)が内地留学から戻ってくる。
フォークダンス(?)などして盛り上がる若人たち。ランララン…。

村には女人禁制の湖があった。
サヨンとサブロはかまわず入り、デートを楽しむ。
これが村の長老たちの怒りを呼び、サヨンは孤独な湖畔の生活を強いられる。
だが、子供たちが毎日通ってきてくれて、サヨンは無事に戻ることができた。

そんなサヨンに秘かに想いを寄せている男がいた。
モーナ(中川健三)である。彼はサブロに怪我を負わせたりするが、故意ではなかったと言うことで丸く収まる。
モーナは、彼を慕う少女ナミナ(三村秀子)に心惹かれていく。

いよいよ村にも召集令状がくるようになった。
サブロは選に漏れ、悔しがる。なぐさめるサヨン。

召集されたのは武田先生(近衛敏明)だ。
喜ぶ村人たち。宴会、そして見送り。

心優しいサヨンは雨にも構わずどこまでもついて行く。
だが、今になって湖のたたりが鎌首をもたげたか、サヨンは流され、亡くなってしまう。

子供たちはサヨンをしのんで設置された鐘の音に耳を澄ませながら、湖に向かってサヨンの名を呼び続けるのだった。。。(終わり)

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20160908_Sayons Bell

Sayon's Bell (allcinemaより転載)

監督: 清水宏
脚本: 長瀬喜伴 牛田宏 斎藤寅四郎
撮影: 猪飼助太郎
美術: 江坂実
編集: 猪飼助太郎 斎藤寅四郎
音楽: 古賀政男

出演:
李香蘭 サヨン
近衛敏明 武田先生
大山健二 村井部長
若水絹子 その妻
島崎溌 サブロ
中川健三 モーナ
三村秀子 ナミナ
中村実 ターヤ
水原弘志 豚買

by カエレバ

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