アマゾンでの買い物は楽しい。
またありがたいことに、態度の悪い店員にイヤな思いをさせられることがない。
それに不誠実なショップはカスタマーレビューの手厳しい批評により自然淘汰される仕組みになっている。
いまやネットのほうが安心なくらいだ。

アマゾンの中の人は、我々の好みをすっかり知り尽くしている。
気持いいくらいにこちらのツボを心得た魅力的な商品を提案してくれる。
かくして我々は気持ちよくアマゾンの大河を漂流し続ける。
ページをスクロールし、クリックし、サーチし、またスクロール…。

ふと部屋を見渡せば、読んでいない本、観ていないDVDが山と積まれている。
そこでようやく愕然となる。
こんな状態なのになぜまた新たに買い足してしまったのだろう。
ネットに淫しているあいだ、脳内ではいったい何が起こっていたの?

この本はそれらの疑問を解き明かしてくれる。
ケリー・マクゴニガル博士がユーモアあふれた語り口で、ときには節度ある下ネタも交えながら。

この本の教えを習得して、月末のクレジット請求額に腰を抜かさずに済むようにしよう。

(以下、引用です)


一日分でもいいですから、その日に行なった選択をふり返ってみてください。一日の終わりに、「自分がいつ目標を達成するための選択、あるいは妨げてしまう選択をしたのか」を分析してみましょう。そのように自分の選択をふり返って意識することで、いい加減な選択の数が減っていきます。それにより、意志力は確実にアップします。

また、彼らはあまりジャンクフードを食べなくなり、もっと健康的なものを食べるようになりました。テレビを観る時間が減って勉強する時間が増えました。さらに、衝動買いが減って貯金が増えました。
参加者らは以前よりも感情をうまくコントロールできるようになりました。物事を先延ばしにすることも減り、約束の時間に遅れないようになりました。
いったいその奇跡のような薬は何なのでしょう? どこに行けば手に入るのでしょうか?

その治療とは、薬ではありませんでした。意志力の奇跡は、運動によってもたらされたのです。

自己コントロールの科学によって明かされた厳然たる、気がかりな研究結果。
それは、人は意志力を使っているうちに「使い果たしてしまう」ということです。
たとえば、24時間禁煙した喫煙者は、アイスクリームをドカ食いする確率が高くなります。大好きなカクテルを我慢した人は、持久力のテストで体力が落ちているのがわかります。最も穏やかならぬ例としては、ダイエットをしている人は浮気をしやすくなること。意志力を使い果たしてしまうと、人は誘惑に対して無抵抗な状態か、もしくはかなり弱い状態になってしまうのです。

目標を達成するために積極的に努力してきた人たち───たとえば、エクササイズや勉強、節約など何でもいいのですが───に質問をするとしましょう。「目標の達成に向けて、自分でどれくらい進歩したと思いますか?」こう訊かれた人は、翌日はジムに行くのをサボったり、勉強をやめて友だちと遊びに行ったり、買い物で散財したりして、目標の達成を妨げるような行動をする確率が高くなります。
いっぽう、「あなたは目標を達成するために、どれくらい真剣に努力していますか?」と訊かれた人たちは、目標の達成を妨げるような行動をしたくなったりはしません。
このように心構えが異なるだけで、自分の行動についての解釈の仕方が大きく変わってしまうのです。

私たちはテクノロジーのとりこで、つねにさらなる刺激を求めています。現代の特徴ともいうべきインターネット生活は報酬の予感にふり回される最たる例でしょう。私たちは情報をサーチします。さらにサーチします。それでも飽き足りずにサーチし、マウスをクリックし続けます───まるでケージの中のラットが、こんどこそ満足感をもたらしてくれるはずの幻の報酬を求めて、何度でも電気ショックを受けようとしたように。

別の実験では、人が死亡したニュースをテレビで観た視聴者は、高級車やロレックスの時計など、贅沢品の広告に購買意欲をそそられることがわかりました。ロレックスをしていればミサイル攻撃から身を守れるわけではありませんが、そういう品物を所有することで自己のイメージが高まり、パワフルになった気がするわけです。

脳を落ち着かせて賢明な判断をさせるためには、どんな誘惑に対しても必ず10分間は辛抱して待つようにします。もし、10分経ってもまだ欲しければ、手に入れてもよいでしょう。
しかし10分待っているあいだに、誘惑に打ち勝ったあかつきに待っている長期的な報酬を思い描いてください。できれば、誘惑になるものとは物理的に距離を置きましょう(あるいは、見ないようにします)。

マーケティング研究者らの発見によれば、人はひとりパソコンに向かってインターネットで買い物をするときより、人目のある店で買い物をするときのほうが、エコ製品を買う確率が高いことがわかっています。エコ製品を買うというのは、自分がどんなに公共心が高く思いやりがある人間かを他人にアピールするひとつの方法であり、高い意識をもって買い物をすることで社会的な信用を得たいという思惑があるわけです。
(中略)
この研究から、自分の決心を守り抜くためのヒントが見えてきます。すなわち、自分の意志力のチャレンジをみんなに宣言すること。成功を願って応援してくれる人たちが、自分の行動をいつも見守っているのだと思えば、いいことをしようというモチベーションがますます向上するにちがいありません。

たとえば、チョコレートを食べないように指示された女性は、1週間後の試食テストで、そのような指示を受けなかった女性に比べて、チョコレートアイスクリームやクッキーやケーキを2倍も食べてしまいました。
(中略)
ある食べ物を避けようとすればするほど、逆にその食べ物のことで頭がいっぱいになってしまうわけです。

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目次 (大和書房HPより転載)

Introduction
「人生を変える教室」へようこそ
――意志力を磨けば、人生が変わる

第1章 やる力、やらない力、望む力
――潜在能力を引き出す3つの力

第2章 意志力の本能
――あなたの体はチーズケーキを拒むようにできている

第3章 疲れていると抵抗できない
――自制心が筋肉に似ている理由

第4章 罪のライセンス
――よいことをすれば悪いことをしたくなる

第5章 脳が大きなウソをつく
――なぜ欲求を幸せと勘ちがいするのか

第6章 もうやけくそだ
――気分の落ち込みが挫折につながる

第7章 将来を売りとばす
――手軽な快楽の経済学

第8章 感染した!
――意志力はうつる

第9章 この章は読まないで
――「やらない力」の限界

第10章 おわりに
――自分自身をじっと見つめる