本日は人気脚本家・島田満の誕生日ということで、中村誠監督との共著「ちえりとチェリー」を読んでみた。

(以下、ネタバレしています!)

ど田舎住まいなので、肝腎の映画が来てくれない。
DVDの発売を首を長くして待つ。

小説を読み終えての第一印象は、現代日本版「不思議の国のアリス」といったところ。

小学六年生の女の子・ちえりは妄想力にたけている。
白昼夢の中では、ぬいぐるみのチェリーも生命を宿し、ちえりのかけがえのない親友になってくれる。

二人はお盆(と思う)に、田舎のお婆ちゃん家で大冒険を繰り広げる。
…とはいっても、異世界に放り込まれるわけではなく、想像の翼が止めどなく広がっていく、という趣きなので、その世界はあくまでも小学六年生の女の子の想像の範囲に留まる。
なので、それほど酷いことは起きそうにない。

また兎のチェリーの図体がでかい。ラグビー日本代表の五郎丸選手くらいありそうだ。実際に見たことはないが。
頭も良い。これなら何が起こっても大丈夫。逆に大丈夫すぎて読んでいて緊張感を保つのに苦労する。

さらにネズミとネコも仲間に加わる。
この布陣に対して、敵はカラスが三羽。
これではカラスのほうを応援したくなってしまう。
あとで、もっと強いのが出てくるけれど。

ちえりは小さい頃に父親を亡くし、今は母親と二人暮らし。
その母親も、普段は休みが取れないほど忙しい。
だから母親との関係は決して良好というわけではない。
しかし冒険により精神的に成長したおかげで、ちえりは母親の立場を慮れるほど大人になる。

まことに喜ばしいエンディングだ。
しかし元々がちえりの夢想の中での出来事で、しかも道中のお供に超強力助っ人がついているので、勝ち戦は目に見えていた。

主人公に対して、おめでとうよかったね、と素直に祝福できない気持ちが残るのはそのあたりのせいか。

ちえりがピンチに陥った時、父親の声が励ましてくれる。
「ちえりにできないことなどなにもない」

このセリフにも引っかかってしまった。
大人が子供に安易に口にしていい言葉だろうか。
子供は…いや大人だってできないことだらけではないか。

「できる」「できない」は結果論である。
また相手がケタ違いに強ければ、いくら努力してもどうにもならない。
「できる」と決めつけられてしまっては、子どもには大変な重荷だ。

せめて「できるできないは二の次、挑戦する気持ちが大切なんだ」
くらいに留めてもらえれば賛同できるのだが…甘いかしら。

このあたりも含め、映画ではどうなっているのか、ぜひとも拝見したいものだ。
中村誠監督は『チェブラーシカ』で、パペットアニメーション製作の手腕を世界に見せつけた。
その監督が紡ぎ出す映像を観ずして本作を論じ終えるのは、片手落ちも甚だしい。

小説のカバー&イラストを担当したのは井部由起子。
ちえりはもちろん可愛いし、犬、ネズミ、カラスなど、描くのが難しいと思われる動物も(おそらく得意分野ではないと思われるが)愛らしさに溢れている。

中でも突出して素晴らしいのがネコのレディ・エメラルド!
この高貴さ、妖艶さ、野性味はいったい何なのか?
しばらく壁紙にしよう。


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