『サウンド・オブ・ミュージック』(1965)、『ウエスト・サイド物語』(1961)を世に送り出した巨匠、ロバート・ワイズ監督の1948年の作品。
世間の評価はおおむね厳しいようだ。
その理由は前半の分かりづらさにある気がする。
そこさえ気にしなければ(笑)、なかなかどうして良い作品と思う。

あらすじ(完全ネタバレしています)

ジム・ギャリー(ロバート・ミッチャム)が野宿をしている。
ラフトン一家の見回りに咎められ、キャンプまで連れて行かれる。
親玉のラフトン(トム・タリー)に飯を御馳走になるジム。

ラフトンは牧畜業を営んでいる。
今はライリング(ロバート・プレストン)率いる新興勢力と揉めているようだ。

ライリングは入植者(= 開拓者)を集め、さらにインディアン保護区(※ 映画字幕表記に準じています)を束ねるピンダレスト(フランク・フェイレン)と裏で手を組んでいる。
ラフトンは保護区に牛を供給して生計を立てているので、ピンダレストに敵側に回られてはまずい。
この時点でラフトンは、ライリングとピンダレストがグルだということを知らない。

牛は草を食んで生きているので、どうしても広い土地が必要になる。
ところが川向こうにはライリングに雇われた入植者たちがたむろしていて、ラフトンの牛を渡らせないようにしている、というような状況。

以上のような話をジムはラフトンから聞かされる。
この時点では、まだジムの立場は明確でない。
ラフトンの部下たちは、ジムはライリング側ではないかと疑っている。

そんなジムにラフトンは娘への手紙を言付ける。
ジムは快諾する。

途中、いきなり撃ちかけられる。
応戦するジム。
そのうち相手は女性ということがわかる。
何となく拍子抜けしたジムは、からかい半分に女性を川に突き落とす。

その後、ラフトンの家へ。
出てきたのは長女のキャロル(フィリス・サクスター)。
ここでいきなり銃声。
なんとさっき川に落ちた女がジムにライフル銃を向けている。
ラフトン家の次女エミー(バーバラ・ベル・ゲデス)だった。
憎しみに燃える表情でジムの帽子を撃ち抜く。
が、女性には敬意をもって接するジムはやり返さず。

町の酒場。
ライリング一味がたむろしている。
ジムのことが噂になっている。
昼間、ラフトン家に出入りしているのを見た者がいるので、ラフトンが雇った用心棒だと思われている。

ジム、酒場に入ってくる。
バーテンに「ライリングはいるか」と聞くと、「奥でポーカーをしている」。

…ここがちょっと分かりづらいところ。
ネタばらしをすると、実はジムはライリングの幼馴染みで、今回は仕事を頼まれてやってきたのだ。
つまりジムはライリングの顔を知っているわけ。
ところがポーカーをしている面々の中にライリングはいない。
ということはバーテンは嘘をついているということになる。
そしてポーカーをやっている中の一人が「俺がライリングだ」と言う。

自分が騙されていることをジムは知っていて、敢えて乗っかっているわけなんだけれど、このあたり、初見では非常に分かりづらい。

そこで手下どもとジムが揉めているところに、本物のライリングがやってくる。
「よお、ジム! よく来てくれた」
となって、ここで初めてジムがライリング側で、しかも幼馴染みということが観客に明かされる。

しかし明かされたからといって、主人公のジムにすぐさま感情移入できるというものでもないが。
ラフトンの土地をぶんどろうとしているライリングが良い人とは思えないし。

この時酒場に投げ文。
「ラフトンは今晩、牛に川を渡らせる」
ラフトン一家の中にスパイがいるようだ。

酒場の二階。
ジムとライリングで今後の打ち合わせ。
ライリングの話によると、ラフトンがライリングを追い出そうとしていると言う。
ラフトンの話と全く逆だ。
どっちが本当なのか、といぶかるジム。

…当然どちらかが嘘をついているのだけれど、こういう展開だと観客は今までのセリフすべてを真偽不明として保留し続けなければいけないので、見ていてつらいものがある。

ここで保護局長のピンダレストが部屋に入ってくる。
「11月1日までに立ち退かないと軍がラフトンの牛を没収する」
「牛を安く買い叩き、ピンダレストを介して政府に売る」

なぜ軍がラフトンの牛を没収するのか、そのあたりの理由はちょっと分からないが、とにかくここでようやくライリングのほうが悪者と言うことがはっきりした。
でも、ジムは用心棒役を受け入れたしなあ…。

翌日の昼、エミーとキャロルの姉妹が川のほとりを探索。
「牛が渡った後がないわね」

そこでライリング一味と出くわす。
その中にジムの顔があるのを見て、キッとなるエミー。

「父は別の場所を渡った。待ってても無駄よ。昨日の手紙は罠だったの」

…これはエミーがとっさについた嘘。
でも観客には分かるわけがない。ますますややこしい…。

ラフトンが川を渡ろうとすることをライリングが知ったのは、酒場への投げ文によって。
ジムもそれで初めて知った。

ジムはラフトンから言付かった手紙を、読まずにちゃんとキャロルに渡した。
ところがエミーが「あんたが盗み見したのね?」と問い詰めると、ジムはなぜか認めてしまう。

なぜだろう。
「読んでいない」と言い張れば、ラフトンの身内に内通者がいることになるからか。
ここはいったん罪をかぶって、内通者が誰なのかを秘かに突き止めようとしたのかも知れない。
いやそれともすでに内通者の見当が付いていたのかも。
その人を庇って罪をかぶったのだと思いたい。

とりあえずエミーの中のジムは減点1となったわけだ。
ちょっとまずいのは、ジムの中でラフトンが減点1になってしまった。

というのは、ラフトンがジムに手紙を渡したのはジムを試すためだった、となってしまうからだ。
あるいは、ジムを利用してライリングを動かし、そのすきに牛を渡らせようとした、ということになる。
どちらにしろ「俺は手紙を盗み見るようなヤツと思われていたのか」という話になる。

ここでまた真相を明かしてしまうと、ラフトンはジムを信用できるヤツと見込んで手紙を言付けたのだ。
だがエミーが「あの男が読んだのよ」と父のラフトンに言ったもんだから、ラフトンも「見誤ったかな」と、ジムが盗み読みしたと思ってしまった。

今度はエミー、クリス(ウォルター・ブレナン)親子のほうへにじり寄る。
この親子はずっとラフトンの元で働いていたのだが、ついひと月ほど前にライリング側に行ってしまった。

クリス「(しょんぼりと)わしは土地を守りたいだけだ」
エミー「幼馴染みなのに裏切るの!?」

場面は変わり、ライリングの家。
帰宅し、中へ入ってくと、なんとキャロルがいる。
そしていきなりキス。
観客ビックリ。
あんただったんかい、裏切り者は!

「あれが父の作戦だとは知らなかったの」
やっぱり、投げ文したのはキャロルだった。
でも、これでさらにややこしくなった。

だからあれはラフトンの作戦じゃないんだってば。
父親のラフトンはジムを信じて手紙を言付けた。
ジムは正直にそれを届けた。
キャロルがこっそりそれを酒場に投げ入れた。
ただそれだけのことなんだけれど、
キャロルが「父の作戦だった」などと言うものだから、観客はそれが事実だと思い込んでしまう。

でもだったらなぜラフトンはなぜ手紙に書かれていた場所を通らなかったんだろう。
という疑問が当然出てくるが、これは用心に用心を重ねてということと解釈したい。
(映画では手紙の文面は映らなかったが、渡る地点は明記されていたと思われる)

[※ 訂正 20160322 メモの内容は、ジムがキャロルに届けるシーンでしっかり写っていました。内容は“今夜、ロッキーフォードで牛を対岸に移す。父より”です。ここに訂正させていただくと共にお詫び申し上げます]

無事に川を渡ったラフトン一家と牛たち。
だが程なくライリングの部下たちに見つかってしまい、牛をちりぢりにされてしまう。
このどさくさに紛れ、クリスの息子が射殺される。ただの気まぐれ殺人のようだ。

白昼の通りで、ライリングの用心棒たちがラフトンを殺そうとしているところをジムが救う。
人殺しも辞さないライリングのやり方に嫌気がさしたジムはひっそりと町を去ることにする
彼をライリングが追いかけてくる。
しかしついに決裂。壮絶な殴り合い。
ふらふらになったジムをライリングの用心棒が撃つ…とその直前、クリスが用心棒を射殺。
息子の仇討ちだ。

ジムはこのまま捨て置けないと思ったか、ラフトン家に出向く。
部下に銃を向けられるジムだったが、エミーが中から出てきて彼を招き入れる。
この前、父の命を救ってもらって以来、目がハートマークになっちゃってるのだ。

ジムは、ライリングとピンダレストが裏で手を組んでいることなど、すべてを話す。
ただし娘のキャロルがライリングに騙されていることは伏せる。

一週間以内に散り散りになった牛を集められないとすべてを失うラフトン。
(なぜそうなのかはよく分からない…)

ジム「一週間期限を延ばす良いアイデアがある」
ラフトン「ガンマンに助けてもらう気はない」
ジム、ぷいと出ていく。

…この映画内では「ガンマン」は蔑称らしい。

ジムを追いかけていくエミー。
その日は二人して野宿。ここのラブシーンは良い。
娘にそうまでされては折れるしかないラフトン、ジムのアイデアに乗ることにする。

まず、ジムは保護局に行き、ピンダレストに言う。
「ラフトンが言い値で牛を売ることにしたそうだ」
ピンダレストは大金を持たない主義だから、山の向こうの銀行へお金を下ろしに行く。
同行するジムは、途中でピンダレストを軟禁、一週間留め置くという寸法だ。

ところがジムがピンダレストを尋ねるところをライリングの手下が見ていた。
ライリングは部下と共にジムたちを追う。
雪山の追跡劇。遭遇、そして格闘。
ジムは何とか追っ手を振り切るが、このときナイフで刺され重傷を負ってしまう。

その後、ジムはクリスの家のそばで力尽きて倒れる。
クリスは家へかくまい、ラフトン家へ行きエミーに事情を説明。
エミーはジムの介抱をしにクリスと共に家へ向かう。

もうすぐライリングたちがやってくるのは必至だ。
エミーが応援を呼びに行こうと家を出かけると、時すでに遅し、ライリングたちが現われた。
昼夜にわたっての銃撃戦。
最後は、ジムとライリングの一騎打ち。
ライリング、倒れる。

これにて一件落着。めでたしめでたし。

感想。。。

後半駆け足になってしまいました。すみません。

見れば見るほど好きになる映画です。
特にジムとエミーのラブシーンは絶品。
キャロルとライリングの決別のシーンも凄く良い。
さすがロバート・ワイズ監督。
それだけに前半のややこしさが惜しまれます。
ジムの立ち位置が明確になるのが、映画の半分を過ぎてからというのはさすがに…。

まだ何回か観たい、そう思わせてくれる映画でした。

br_banner_kokuban

Blood on the Moon (Movie Walkerより一部転載)

監督: ロバート・ワイズ
脚色: リリー・ヘイワード
原作: ルーク・ショート
製作: スローン・ウォース
撮影: ニコラス・ムスラカ
音楽: ロイ・ウェッブ
作曲: ハロルド・シューメイト、ルーク・ショート

キャスト
Jim_Garry: ロバート・ミッチャム
Amy_Lufton: バーバラ・ベル・ゲデス
Tate_Rilling: ロバート・プレストン
Kris_Barden: ウォルター・ブレナン
Carol_Lufton: フィリス・サクスター
Jake_Pindalest: フランク・フェイレン
John_Lufton: トム・タリー
Fred_Barden: ジョージ・クーパー
Ted_Elser: Richard Powers
Cap Willis: バッド・オスボーン
Nels_Titterton: ゾン・マレイ
Bart_Daniels: Robert Brag

月下の銃声 [DVD]
by カエレバ