若草物語シリーズと銘打っているが、中身は小学生くらいの年代の子を中心とする学園もの。
マーチ家の次女ジョーと夫のベア先生が経営しているので、「若草1,2」と全くつながりが無いわけではないが、マーチ家の人々はほとんど出てこない。

巻末の解説によると、著者ルイザ・メイ・オルコットの父親は自らが理想とする学校を設立するも、当時としては革新的すぎてあえなく廃校となったという。
孝行娘ルイザは「第三若草物語」の中で、父親の夢を実現させてあげたわけだ。

ただ1800年代のアメリカの学校の様子が分からないので、プラムフィールド学園の特異性も知りようがない。
かりに分かったとしても登場人物の多くが小学生なので、起こる事件も知れている。
ウソとか盗みとか迷子とかボヤとか、あとは学芸会とかまあそんな感じで、大人の私には厳しかった…テンション低くてすみません。

タイトルが「若草」シリーズではなく「プラムフィールド学園の子どもたち」だったら読まなかったかも。
でもジョーが登場しているから、やっぱり手に取っただろうな。
ちなみに原題は「Little Men : Life at Plumfield with Jo's Boys.」。

「第四若草」は、この子たちが成長した姿が見られるようなので、かなり期待している。

「若草物語3 ジョーの魔法」の書評はこれでおしまい。
以下は「青い鳥文庫」についての雑感。

良いと思ったところをざっと挙げると───。


  • 総ルビ

  • 紙質が良い

  • 注釈がない

  • カバーイラストが現代風

「総ルビ」だと、ひら仮名しか知らない子でも読めるのは言うまでもない。
さらにこのシリーズのルビは「ゃ、ゅ、ょ、っ」などの、小さく表記すべきひら仮名がちゃんと小さい。
大概の本が「じむしよ」「びようにん」「しゆつぱつ」で済ませているところを、「じむしょ」「びょうにん」「しゅっぱつ」と表記。すごいこだわりだ。

それから「紙の質」。
幼い頃、親や兄弟姉妹の本をこっそり読んだという経験は誰にもあるだろう。
だが今や紙の本はどんどん電子書籍に取って代わられている。
それは兄や姉の本棚から本が消えていくことを意味する。

未知の文学や知識と出会う機会がひとつ失われつつある。じつに由々しきことだ。
だからこそ「紙質が良い」ことはとても大切なのだ。
今本棚にある「青い鳥文庫」が数十年、数百年と読み継がれていくために。

本の作りもとても頑丈。これで600円前後というのは信じがたいほどだ。
このシリーズには素晴らしく暖かな意志を感じる。

「注釈がない」ことについては賛否両論あるだろう。
私はとても良いことだと思う。物語に集中できるからだ。

逆に注釈がびっしり書かれている本も、また良きかなと。
まったくない本も、びっしりある本も、どちらも読者のことを真摯に考えた末でのこと。
方法論が違うだけで、本を好きになってほしいという編集に携わった方の気持ちは同じだ。

「カバーイラストが現代風」というのは非常に重要、と今回痛感した。
新しさというのか、切実感というのか、そういうのって思った以上に大切で、数十年前のイラストをそのまま載せているようでは───少なくとも今の子どもたちには───やはりダメなのだ。

たとえばミッキーマウスでもスーパーマンでもスパイダーマンでも、年々マイナーチェンジを繰り返し、今に生き延びている。
もしデビュー当時のまま、何もメンテナンスしなかったらとっくに寿命が尽きていただろう。
我ながらまったく説得力がないとは思うが、気づかぬうちに何かが確実に古びていくようだ。
それはそれでまた別の価値が生まれるのだろうが、新しいファンは獲得しづらい。

「青い鳥文庫」lシリーズのターゲット層は小学校中級以上の女の子と思われる。
が、案外私のようなオヤジの隠れファンも少なくないのではないか。

もしかしたら、ここに手つかずの美味しいマーケットが潜んでいるのかも知れない。
死ぬまでにシェイクスピアを、森鴎外を読んでみたい、けれど文庫を買う気にはなれない…という人は意外と多い気がする。

中高年向けには活字の大きなヤツがあるじゃないかと言われるかも知れないが、あれは一見中高年に優しいようでその実、1冊のものを3〜4冊にカサを増やして儲けようという魂胆が透けて見えるので買う気が起こらないのだ。
それはともかく…。

本書は「ナンとジョー先生」というタイトルで「世界名作劇場」アニメにもなった。

若草物語 ナンとジョー先生 | 作品紹介 | NIPPON ANIMATION


この原作をどうやって全40話に膨らませたのか気になるところなので、近々コンプリート視聴しようと思っている。

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関連リンク ;
「若草物語 青い鳥文庫」オルコット・著 | 藤田香のイラスト付きでとても読みやすい。

「若草物語2 夢のお城 青い鳥文庫」オルコット・著 | 別れ、そして新たなる出会い。

「若草物語4 それぞれの赤い糸 青い鳥文庫」オルコット・著 | 人は死して、言葉を残す。