講師陣の顔ぶれがすごい。
(以下、登場順)
鴨下信一
丹羽多聞アンドリウ
林誠人
三宅隆太
高橋洋
廣木隆一
佐々木浩久
若松孝二

この方々が関わった作品を今まで一つも観たことがないという人はいないのではないか。
『相棒』『トリック』『リング』…ヒット作を挙げ出すと切りがない。

本書は2006年に行なわれた講義を採録したもの。
最前線で活躍されている方のみが持ちうる迫力に、読んでいて圧倒される。
クライアントの要求に応え、期日に間に合わせ、なおかつ実利を獲りに行く感じがなんとも生々しい。

創作のノウハウについても、ここまで明かしちゃっていいんですか? と要らぬ心配をしてしまうほど。
クリエイターを志す者なら買いの一手。

家が火事になったら、まっさきにこの本を持ちださないと。
だってこの秘伝の書があれば建て直せるかも知れないし!

(以下、引用です)
鴨下信一 (演出家プロデューサー)
※ 代表作 『岸辺のアルバム』『ふぞろいの林檎たち』『高校教師』

一にも二にも他人様とやるというのをもうちょっと考えてほしいよね。膨大な人間が一つのプロジェクトに関わって、その中のシナリオだし、もちろんシナリオは非常に基本的なことであるけれども、その中の役者であり、演出家であり、その中の企画であることは間違いないんだよね。膨大な人間が関わっているということをつい忘れて、全く個人的な自分の書斎っていうか部屋の中だけで完結するように、教わり教えられ、その通りやっちゃう。すごく困った習慣だよね。そんなこと絶対ありえないんだ。

丹羽多聞アンドリウ (プロデューサー)
※ 代表作 『ケータイ刑事』『怪談新耳袋』『恋する日曜日』

僕はそこでドラマを作って学んだのは、「出来ないって言っちゃいけない」と。絶対出来ないって言わない。出来ないって言わないことの何がいいのかというと、人間の成長って大体自分の頭のなかで「ここまでだな」と自分で止めちゃうんですよ。でも出来ないって言わないと、出来るためにどうすればいいかって考えるんですね。今では「出来ないと言わない」という僕が作った言葉を自分の座右の銘にしております。

林誠人 (シナリオライター)
※ 代表作 『トリック』『相棒』『ドクターX 外科医大門未知子』

美術館に行っても、絵なんか見ちゃダメだよ。例えばルーブルにモナリザ見に行ったとする。でもディレクターや脚本家になりたいヤツはモナリザなんか見てちゃダメなんだ。何を見るかというと、モナリザを見ている人間を見るんです。そっちを見ることが楽しめないヤツは、クリエーターにはなれない。僕も実際に三回ぐらいルーブルに行きましたけど、モナリザの前でいきなりガーッと崩れ落ちて泣き出す黒人のおばさんがいたりするんですよ。凄いよね。そんなの見てると、もうモナリザなんてどうでもいい、そのおばさんの人生を考えるわけです。自分なりのストーリーを作るわけですよ。

三宅隆太 (映画監督・脚本家)
※ 代表作 『ほんとうにあった怖い話』『学校の階段』『クロユリ団地』

僕は昔からホラーのシナリオを書くときに必ず見るようにしてるのが志村けんのコントとジャッキー・チェンの映画なんです。もし、深夜に志村けんさんの番組をやってたら音を消して観て欲しい。絶対にわかるように作られているから。

高橋洋 (映画監督・脚本家)
※ 代表作 『リング』『新生トイレの花子さん』『ソドムの市』

一番大事なことはですね、『毎日毎日書き続けること』、これにつきる。
『先行きが見えていようが、いまいが書き続ける。勝算が見えてなくても書き続ける。というのも、今抱えている難題を解き明かす手がかりは、書き続ける行為の中にしかないから。結局、シナリオをモノに出来る人と出来ない人の違いはここに気づけるかどうかでしかない』。

廣木隆一 (映画監督)
※ 代表作 『ヴァイブレータ』『さわこの恋』『ゲレンデがとけるほど恋したい』

「やわらかい生活」は寺島(しのぶ)さん、豊川(悦司)さん、妻夫木(聡)君とかみんなそれぞれの役者さんがいたので、リハーサルとかホン読みとか一切しなくて、撮影まで誰とも会わないようにしてもらったんですよ。偶然性というか、たまたますごい芝居が出来たりすることもあるんで。
(中略)
それは訓練されてる、本数も出てる役者さんだから、相手の芝居も見てるし「こう来るのか、カメラはそう行くのか」っていう計算は出来ちゃう人たちなんで出来るんですけどね。それはやりようだと思います。

佐々木浩久 (映画監督)
※ 代表作 『ケータイ刑事 THE MOVIE』『胸に開いた底なしの穴』『ナチュラル・ウーマン』

それから、テレビは残酷なシーンは駄目だよ、と言ってるのに書いている人がいる。それは自分が面白いと思ってたって、テレビでやる放送物であるということは、さっきの遅刻しないと同じように、決められたことです。どうしてもそれをやりたいなら、自主映画でやればいい。分かってほしいのは、これから作ろうとしているのは、人のために作る映画です。自分のためにと思ってる人もいると思うけれども、BS-iという会社のために、BS-iのお金を使って作るものですから、あなた方が自由にしていいお金をもらうわけではないということです。
映画というのは、例えば五千万というお金を佐々木浩久という人間に与えて、自由に作っていいよ、というものではないんです。企業が儲かるための映画を作らないといけないんです。だから映画を作るときに、僕の眼だけじゃなくて、他の人の声も聞かなくてはならない。

若松孝二 (映画監督・プロデューサー)
※ 代表作 『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』『11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち』『水のないプール』

そうじゃなくて自分が一生これを職業にして飯食って行こうと思ったら、自分の志をきちんと持って、飯食うぐらいだったら、コッペパン、おにぎり一個食ってたって、死にはしないからさ。今はスタッフだって人が足りないぐらい。いろんなところでドラマ撮っているんだから。
ここには女性もけっこういるけど、今度の俺の映画の助監督はほとんど初めてっていうのが四人来てるけど、それは全部女の子だ。どうしてもやらしてくれって。俺に毎日怒られながら準備してるけどね。男性の方がぜんぜん元気がなくなってきてるぞ。男がもうちょっと元気を取り戻して、やってくれないとね。

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