抜群の読みやすさ。
興味を惹く出だしは健在。
今回も一気読みさせられた。

東野圭吾氏が長年、第一線で活躍し続けている理由のひとつに、常に時代の最前線の情報を収集、咀嚼し、それを上質のエンタメにまとめ上げているというのがあると思う。

今回は補助ロボット、脳死判定、臓器移植の現在についての知識を得ることができた。
常に新しく、分かりやすく、かつ押しつけがましくない。
人気があるのもうなずける。

ミステリ作家としてデビューした氏だが、近年はもはやその範疇に収まらない。
というか、長年かけて読者をうまく飼い慣らしてきたというか。

読者の興味を惹き続けるのがエンタメの肝ならば、それは「犯人は誰か」とか「どのようなトリックを使ったのか」じゃなくても別に良いわけだ。

「この少女はいつまで生きていられるのか」あるいは「両親は離婚に至るのか、それともヨリを戻すのか」というのも、充分興味を惹くテーマだ。

そういう小説を発表し続けるだけでも凄いのに、氏の場合はさらに時代に寄り添ったテーマを常に模索し、見いだしている。その姿勢とたゆまぬ努力には頭が下がる。

おそらく本作も遠くない将来に映画化されるだろう。
岩井俊二氏か深川栄洋氏が監督だといいなあと夢想している。

静謐かつ温かみの残る極上のエンディング───そこにおおよそ作品の内容とリンクしているとは言いがたいタイアップ曲がつけられ、すべてが台無しになることのないことを祈りつつ。

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<東野圭吾作品 - 極私的星取り表>
★★★★★ 「容疑者Xの献身」
★★★★★ 「真夏の方程式
★★★★★ 「白夜行
★★★★★ 「卒業
★★★★★ 「眠りの森
★★★★☆ 「マスカレード・イブ
★★★★☆ 「人魚の眠る家
★★★★☆ 「どちらかが彼女を殺した
★★★★☆ 「新参者
★★★☆☆ 「マスカレード・ホテル
★★★☆☆ 「片想い
★★★☆☆ 「赤い指
★★★☆☆ 「嘘をもうひとつだけ
★★★☆☆ 「私が彼を殺した
★★★☆☆ 「悪意
★★☆☆☆ 「ラプラスの魔女
★★☆☆☆ 「虚ろな十字架
★★☆☆☆ 「麒麟の翼
★★☆☆☆ 「宿命
★★☆☆☆ 「名探偵の掟
★★☆☆☆ 「カッコウの卵は誰のもの
★☆☆☆☆ 「夜明けの街で
★☆☆☆☆ 「パラドックス13
★☆☆☆☆ 「ナミヤ雑貨店の奇蹟
★☆☆☆☆ 「危険なビーナス

番外編 :
映画『白夜行』 | 東野圭吾ワールドを完璧に再現。