今日は、59歳という若さで惜しまれつつ世を去った西ゆうじ氏の命日である。
鈴木清順監督に師事し、タモリのオールナイトニッポンなどの放送作家を経て、マンガ原作者として多くのヒット作を世に残した。
代表作は「あんどーなつ」「蔵の宿」「華中華」など。
この3作のどれもがお薦めなのだが、個人的には「華中華」(ハナ・チャイナと読む)を推したい。

世界一の料理人を目指して、徳島から横浜・中華街にやってきたハナちゃんの成長物語だ。
大きなお店のいちばん下っ端として働き始める彼女は、昼休みの間だけ別の小さなお店で調理を任せてもらうこととなる。
ここでハナちゃんは日替わりでいろんなチャーハンを考案していく。
これは実際に、西ゆうじ氏が作り、本当においしかったもののみを採用しているそうだ。コミックスにはレシピも載っている。
ちなみに西氏は、プロの調理人にレクチャーするほどの腕前だったそうだ。

ハナちゃんを陰から支えるのは楊貴妃、とはいっても幽霊だが。
というわけで、昼休みに他店でバイトしているのは内緒、楊貴妃のことも内緒、というなかなか面白い設定がほどこされている。
西氏は毎回、冒頭でそのあたりの事情を、初見の読者にむけてであろう、とてもスマートに説明している。

物語が進むにつれて、いろいろな新キャラが登場してくるのも楽しい。
そして舞台が横浜・中華街ということで、当時実際にあったイベントや事件などがリアルタイムで取りあげられているのも、さすがビッグコミックに週刊(隔週)連載されていただけある。

原作の魅力を余すところなく引き出しているのが、ひきの真二氏の絵だ。
ここまで丁寧な作画をする漫画家さんもちょっといないのではないか。
横浜の街の描写、モブの描き分け、モノの質感、どれをとっても文句のつけようがない。
チャーハンの米粒の、一粒ひとつぶまでしっかりと描かれている。
それでいて登場人物は4〜6等身というマンガチックさなので、取っ付きづらさがまったく感じられない。
西ゆうじ氏とひきの真二氏という、一流の職人同士の幸せな邂逅がここにある。
お二人のコラボは他に「みんなのバス」という作品もあり、こちらも佳作だ。

機会があれば手にとっていただきたいと思う。
氏が手がけられた作品で、未単行本化のものがいくつかあるようだ。
それらがいつか日の目を見ることを切に願う。

br_banner_kokuban