(ネタバレあります!)

1時間弱の小品。
なので話は至ってシンプル。

若旦那(上原謙)にほのかな想いを寄せるお加代(田中絹代)。

失恋

芸の道に生きる決心をするお加代

といった流れで、恋のライバルや交際に反対する肉親とか、話をややこしくする人は出てこない。

田中絹代の歌と踊りを堪能するための映画といっても良いかと。
この人がこれほどできる人だとは知らなかった。

19歳で、踊りのお師匠さんとして独り立ちまであと一歩というお加代は、師匠(三宅邦子)の内弟子として暮らしている。

三宅の旦那さんは軍人として出征中。
事あるごとに、
「お国のために頑張っていらっしゃる兵隊さんのことを思えば〜」
というセリフが差し挟まれるのは時節柄か。

三宅と田中の会話の中でも
「タワシはこんなことにもあんなことにも流用できるので主人に送るのよ」
と、出征兵士がいる家庭向けのトリビアを披露したりもしている。

三宅が旦那さん宛にしたためる手紙の書き方が、優雅に一行おきだ。
まだ紙不足が切実ではなかったのだろう。

田中絹代の所作で感心したことがあった。
師匠が脱いだ履き物をキッチリと揃えるのは、まあ当然としても、師匠が履き物を履く寸前、ちょうどよい具合に履き物を左右に離すのである。
あまり離しすぎても下品に見えるし、かといってぴったりくっついたままでは履きづらく、このあたりに田中の、というか日本人の心遣いの細やかさを感じた。

br_banner_kokuban

『お加代の覚悟』 (allcinemaより一部転載)

監督: 島津保次郎
脚本: 島津保次郎
撮影: 生方敏夫
美術: 脇田世根一
音楽: 早乙女光

出演:
田中絹代
三宅邦子
林一重
河村黎吉
上原謙
葛城文子
小島照子
坪内美子
久保田勝巳
飯島善太郎
平野鮎子
大築週子
大河三鈴
岩波玲子
高橋佳代子