職を探しながら小説家を目指している佐野周二。
女給をして彼をかいがいしく支える高杉早苗。
二人はアパートで同棲している。
この頃は「アパート」なるものが新鮮だったようで、佐野の妹役の高峰三枝子が偵察がてら見学にやってくる。

ぎろっ、ぎろっと部屋の中をチェックする三枝子。
どうやらお眼鏡にかなったようで以後、三枝子は高杉早苗を「おねえさま」と呼ぶようになる。

高杉は女給勤めであることから、佐野の親から交際を許してもらっていない。
だが、ここからは高峰三枝子が強力な援軍となり、高杉早苗の良い人ぶりを熱心に両親にアピールしていく。
三枝子と早苗の女性の友情が美しい。

いったんは別れる寸前まで追い込まれる佐野と高杉カップルだが、最後は晴れて交際を許されめでたしめでたし。
と書くと他愛ない話のようだが、途中で悲劇のフラグが何本か立つのでけっこうハラハラドキドキさせられた。

高杉が、まったく女給をやっているように見えない、いい意味で。
いいところのお嬢さん然としている。

佐野周二は口も悪く、さいしょヒモのようにしか見えないのだが、実は高杉を愛し抜いていることが判明していく。

要するに両者とも印象と中身が正反対で、こちらがもっている先入観を逆手にとられた形になるのだけれども、印象がだんだんよくなっていっているので、観ていてそんなに悪い気はしない。

河村黎吉が例により(?)小悪党を演じ、いい味を出している。
この人だけは印象を裏切らない。
自分に得になるようにしか動かない、ある意味いちばん分かりやすいキャラクターだ。

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『愛より愛へ』(allcinemaより一部転載)

監督: 島津保次郎
脚本: 大庭秀雄
撮影: 生方敏夫
美術: 金須孝
編集: 吉村公三郎
音楽: 早乙女光

出演:
佐野周二
高杉早苗
高峰三枝子
水島亮太郎
河村黎吉
坂本武
葛城文子
野寺正一
高松栄子
小林十九二