戦争当時の沖縄の状況が生々しく伝わってくるという点で、資料としても貴重だし、なにより遠く離れて暮らしている奥さまと子どもさんへの愛情にあふれていて、涙を誘う。

いうまでもなく戦時中の手紙はすべて封を切られ、憲兵に検閲されていた。
それを考えると、書かれていることすべてが本心であるかどうかについては一考の余地があると思うが、著者の方は最後まで日本の勝利を信じておられたようで、文面をそのまま受け取ってよいように感じた。

さすが教育者だけあって、お子さんへの文はひらがなと漢字のバランスを配慮されて書かれてある。

手紙と一緒に、紙や砂糖なども添えられることも多く、それらがいかに貴重であったかということがうかがわれる。

一週間に一度の豆腐料理がじつにありがたい、という文からも当時の食糧事情と、我々がいかに飽食の時代に生かされているかを思い知らされる。

興味深い文言はまだまだ沢山ある。
疎開して無人の家は泥棒に入られることがままあった、という事実なども、今となっては貴重だ。

戦後に為された証言は、どうしても軍人や大本営の悪口ばかりになってしまい、民間人にとって不都合な事実にはなかなかお目にかかれないので。

ひんぱんな手紙のやり取りも、日本が敗色濃厚になるにつれ遅延が当たり前になり、さらには届かずじまい、という事態になってくる。

挙げ句の果ては、「沖縄への郵便物は一切受け付けない」という措置までとられたようだ。

奥さまの願いもむなしく、ご主人は帰らぬ人となってしまう。

二度とこのような悲劇が起こらぬためにと、大切な、個人的な書簡を公開してくださった奥さまに、心より感謝を捧げたい。

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