本日は、26歳という若さで惜しまれつつ世を去った女優、及川道子(1911-1938)の命日ということで、残された数少ない作品の中から『港の日本娘』を鑑賞した。

横浜(ハマ)、恋愛(こひ)などの字幕がなんとも洒落ている。
ときにはフォントの大きさを変えて声の大小を表わすところなどは、今のマンガそのものだ。

清水宏監督の代名詞といえば、カメラの横移動。
ヨコハマの港をバックに、なかよし女学生の及川道子と井上雪子が歩いている。

だが、永遠を誓い合った女の子同士の友情も、江川宇礼雄の登場であっけなく終わりを迎える。
しかもプレイボーイの江川に惚れてしまったのが運の尽きか、及川道子は恋のライバルをピストルで撃ってしまう。

楚々とした女学生から一転、夜の女へ。
そして流れ流れて神戸でイヌと暮らしている…もとい、イヌと蔑まれてもひたすら及川に惚れ抜く斎藤達雄と暮らしている。

斎藤の役どころは貧乏画家。ようするにヒモですな。
どんどん暗い方向へ向かっていく物語の中で唯一コミカルさを醸し出している。

斎藤がらみで面白い演出があった。
及川道子がヒステリーを起こして、斎藤の画材道具をポンポンドアの外へ放り投げるところ。
この時カメラは廊下にあり、及川ではなく放り投げられる画材道具のほうを映す。
まるで及川の部屋の中に、巨大なポップコーンマシンがあるみたい…って、ちょっとオーバーか。(汗)

一段落付いた頃、避難していた斎藤がおそるおそるといった態で現われ、道具を拾いはじめるのがまたおかしい。

清水宏監督はかなり頑張って撮っている感じだ。
かなりカット割りが細かい。
シーン終わりでスーッと人物が消えていくという特殊効果も多用している。
だがその努力が各シーンを有機的に結びつけ、相乗効果を上げるまで至っていないのが惜しい。

なんてことを言ったらバチが当たっちゃうな。
フィルムが現存していることがありがたいのだから、このお二方に関しては。
とくに及川道子の出演作はわずか4本しか残されていない。
内容はともかく(汗)、実に貴重な作品であることは間違いない。

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『港の日本娘』(allcinemaより一部転載)

監督: 清水宏
原作: 北林透馬
脚本: 陶山密
撮影: 佐々木太郎
作詞: 大木惇夫、野口雨情
作曲: 江口夜詩、高階哲夫

出演:
及川道子
井上雪子
江川宇礼雄
沢蘭子
逢初夢子
斎藤達雄
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