現代の倫理観で描いた西部劇。
いつまでもジョン・ウェイン、ヘンリー・フォンダじゃないだろうということか。

娼婦の顔を切り裂いた男たちが、ジーン・ハックマン扮する保安官によって裁かれる。
「馬を7頭おさめれば許す」という裁定に、「それでは軽すぎるだろう」と、女たちは納得がいかない。

そこでみんなで金を出し合い、賞金をかけることに。
昔、非道のガンマンとして鳴らし、今では貧乏にあえぐクリント・イーストウッドとモーガン・フリーマンが老骨にむち打ち、首を討ちに立ち上がるというお話。

貧乏農場主のイーストウッド。
豚に引きずられたり、馬に乗れなかったり、弾が当たらなかったりと、かっこ悪いことこの上ない。

だがもちろんこれは布石で、クライマックスには超人的な活躍を見せてくれるんだ…ろうと思ったら、それがそうでもないところがイーストウッドらしいというか。

すると今度は若いカウボーイが、「もう人殺しなんてごめんだ」と泣き言をこぼす。
どうやらこれは普通の西部劇ではない…というか、はっきりいって「アンチ」西部劇だ。

"許されざる者"とは、極悪非道な悪人を指しているのではなく、殺し合いに明け暮れるガンマンはもちろん、悪徳保安官も、売春宿の経営者全員のことを言っているようだ。

たしかに間違ってはいない。
しかし、当時には当時なりの倫理観があったはずだ。
それを21世紀に生きる人間が、今どきの気質をもってして断罪していいものだろうか、という疑問が残った。

たとえば、日本でいったら『忠臣蔵』を、「吉良上野介を殺すことはないよね」とか、「基本、暗殺はいけないことだよね」というところで語られたら、それは違うだろうと言いたくなる。

『忠臣蔵』はもはや日本の歳時記のようなもので、すでに「型」として定着している。
そんなものにまで現代の倫理を当てはめることはない。

今回、イーストウッドがやったのはそういうことじゃないかという気がする。
自分こそ正しいと信じて疑わない孤高のガンマンが大活躍する「型」通りの西部劇は、イーストウッドにとって居心地の悪いものなのかも知れない。

そんな彼が撮ったこの映画は、私は観ていて居心地が悪い。
別に「型」でいいじゃん、西部劇なんだからさ、と思ってしまうのだ。

『桃太郎侍』が何十人も斬り殺すことに、『ルパン三世』が窃盗を繰り返すことに、いちいち現代の倫理を持ち出して文句をつけてどうすんの。

イーストウッド扮する主人公が、自分をさえも「許されざる者」の一員だと思っているのなら、自分が手をかけた者たちの遺族に謝罪してまわり、「許しを請う者」として残りの人生をまっとうする道もあったのではないか。

若い頃にはたくさんの人を殺しました、その後、洋服屋として成功しました、そんな私はガンマンを全否定します、では、「やりたい放題、言いたい放題でけっこうな人生ですこと」と嫌味のひとつも言いたくなる。

そんな私には、おそらく一番「許されざる者」なんだろう、ジーン・ハックマン扮する自己チュー保安官が、一番男らしく、格好良く、潔い死に様に映った。

映画自体はめちゃくちゃ面白い。
どうせなら現代劇としてやってくれたら、もっと楽しめたろう。

本作はリメイクだそうで。
いつか機会があればオリジナルも観てみたい。

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UNFORGIVEN (allcinemaより一部転載)

監督: クリント・イーストウッド
製作: クリント・イーストウッド
製作総指揮: デビッド・バルデス
脚本: デビッド・ウェッブ・ピープルズ
撮影: ジャック・N・グリーン
プロダクションデザイン: ヘンリー・バムステッド
美術監督: エイドリアン・ゴートン、リック・ロバーツ
編集: ジョエル・コックス
キャスティング: フィリス・ハフマン
音楽: レニー・ニーハウス
舞台装置: ジャニス・ブラッキー=グッダイン

出演:
クリント・イーストウッド : ウィリアム・マニー
ジーン・ハックマン : リトル・ビル・ダゲット
モーガン・フリーマン : ネッド・ローガン
リチャード・ハリス : イングリッシュ・ボブ
ジェームズ・ウールベット : スコフィールド・キッド
ソウル・ルビネック : W・W・ボーチャンプ
フランシス・フィッシャー : ストロベリー・アリス
アンナ・トムソン : デライラ・フィッツジェラルド
デビッド・マッチ : クイック・マイク
ロブ・キャンベル : デイビー・バンティング
アンソニー・ジェームズ : スキニー
タラ・ドーン・フレデリック : リトル・スー
ビバリー・エリオット : シルキー
リーサ・レポ=マーテル : フェイス
ジョジー・スミス : クロウクリーク・ケイト
シェーン・メイア : ウィル・マニーJr
アリン・レバシュー : ペニー・マニー
シェリリーン・カーディナル : サリー・トゥー・トゥリーズ
ロバート・クーンズ : クロッカー
ロン・ホワイト : クライド・レッドベター
ミナ・E・ミナ : マディ・チャンドラー
ジェレミー・ラッチフォード : アンディ・ラッセル保安官補
ジョン・パイパー=ファーガソン : チャーリー・ヘッカー
ジェファーソン・マッピン : ファッティ・ロシター
フィリップ・ヘイズ : リッピー・マグレガー
ラリー・ジョシュア : バッキー