明日はシドニー・ポラック監督の命日。
『愛と哀しみの果て』(1985)でアカデミー監督賞を受賞、
他にも『追憶』『トッツィー』『ザ・ファーム 法律事務所』
などの名作を数多く残した。
(没年月日 2008年5月26日 満73歳没 ウィキペディアより)

今回選んだのは『コンドル』。
ロバート・レッドフォードがいきなり何者かに命を狙われ、必死に逃げ延びつつ、情報を収集し、反撃に転じていくという、とても密度の濃い作品だ。

なぜこの映画を選んだかというと、
映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと シド・フィールドの脚本術
という本の中で推薦していたからだ。

実は、以前にこの映画を観たことがある。
だが最初の10分がどうもパッとせず、そこでギブアップしてしまった。

出だしはこんな感じだ。

「文学史協会」という会社があり、社員たちが殺人事件の話をしている。
よく聞いてみると、本当にあった話ではなくミステリのようだ。

そこへターナー(R・レッドフォード)が遅刻してくる。
どうも常習らしい。
それを遠くに駐めてある車の中から男が見ている。
社員たちの出入りをチェックしているようだ。

その後、ターナーは上司に憎まれ口を利いたり、子供の自転車泥棒を追っ払ったりするシーンがあり、雨の中、外へ昼飯を食べに行く。

…このあたりでつまらなくなりDVDをとめてしまったのだが…ここから話は急加速するのだった。
会社の中にいる人間が全員殺されてしまうのである。

裏口から出て行ったターナーは、偶然殺人者の目から逃れたために助かる。

…70年代R&Bとデイブ・グルーシンの音楽をバックに、ターナーの生き残りを賭けた闘いが始まった…。

あらすじ (ネタバレあります!)

ターナーはまずCIA本部に電話する。
実は、彼の勤めている「文学史協会」というのは世を忍ぶ仮の姿。
本当は、世界中のミステリを集め、トリックを分類するというCIAの出先機関なのだ。

これで冒頭のミステリの話が、世間話などではないことが分かった。
社員の出入りをチェックしていたのは、殺し屋だったことも。

ターナーの専門は「読書」。
タイトルの『コンドル』というのは彼のコードネームだ。

CIAニューヨーク支部長ヒギンズ(クリフ・ロバートソン)からの電話での指示は
「自宅に帰るな。指定ホテルに部下を二人行かせるからそこで落ち合え」

この時、ターナーは顔見知りのサム(ウォルター・マッギン)に来てもらうよう指定する。
この用心深さが、彼の命を救うことになる。

ターナーがその場所に行くと、サム一人しか見えない。
「二人来る」と言っていなかったか?
おかしい…と思ったターナー、歩みをとめ、注意深く様子をうかがう。
その時、ビル陰に隠れていたもう一人がいきなりターナーめがけて発砲。
ターナーも応戦して、相手の足を撃ち抜く。
その後、すぐに逃げるターナー。

すると意外なことに撃たれた男は、仲間…のはずのサムを射殺する。

ターナーに右足を撃たれた後に、サムを射殺したのはウィクス(マイケル・ケーン)という男。
彼は病院に搬送される。

これでターナー、行くところがなくなっちゃった。
そこでどうしたかというと、キャシーという見ず知らずの女性(フェイ・ダナウェイ)に目をつけ、拳銃でおどし、強制的に彼女のアパートまで同行するのだ。

そこでテレビニュースを確認すると、ターナーが二人を撃ったことになっている。
(もちろんターナーの名前も、撃たれた二人がCIA職員であることも知られていない)

びっくりするターナー。
しかし、ここでCIA内部の紛争の目もあるかもと気づくところなんぞは、さすがミステリ読み(?)。

ターナーはためしに、殺されたサムの自宅へ電話してみる。
電話口に出た奥さん(カーリン・グリン)の口調からすると、まだ夫の不幸を知らないようだ。

ターナーはキャシーを縛り上げ、キャシーの車でサムの家に行く。
奥さんと会い、詳しい事情は言えぬまでも、とにかく安全なところに身を隠すよう言い置く。

帰りのエレベーター、何と冒頭から顔を見せている殺し屋ジョベア(マックス・フォン・シドー)とバッタリ。

ターナー絶体絶命!
観ているほうは大緊張。
ターナーも相手が殺し屋と知らぬまでも、警戒を怠らない。

怠らないのにはいくつか理由がある。
サムの奥さんは、夫の帰りが遅くなることを、CIAからの電話で知っていた。

さらに無言電話が3回あったこと。
これは彼女の在宅を確かめるためだった可能性がある。

殺し屋ジョベアは、サムの奥さんを始末するためにやってきたのかも。
あるいは、ターナーが行けるところはもはやここしかないと踏んだのか…。

ジョベアは先にエレベーターを降り、ターナーがマンションから出てくるのを、外から銃口を構えて待っている。

このピンチ、ターナーはどうやって危機を脱したか。

フロアでたむろしていた若者たちに声をかけ、一緒に出てきたのである。
彼らにバリケードになってもらい脱出成功!

キャシーの部屋に戻ってくるターナー。
その夜、結ばれる二人。(ここツッコミどころです。…あいや、言葉通りの意味です 汗)

翌日、ターナーは郵便配達人を装った殺し屋に襲われる。が、逆に射殺する。

殺し屋のフトコロからカギと、電話番号の書かれたメモをいただくターナー。
その番号に電話すると、果たしてCIA本部だった。

ターナーは、ためしに「ウィクス」という名前を出してみる。
案の定「ウィクス」はCIAに在籍していた。
ターナー&キャシーはCIA本部のあるワシントンD.C.へと向かう。

…説明し忘れたが、ターナーがなぜ「ウィクス」という名前を知ることができたかというと、抜群の記憶力によってである。説明になっていないが、まあそういうことで(汗)。

ターナー&キャシーはなんとヒギンズを誘拐。

…一言で「誘拐」といっても、そこまでいくためにキャシーが求職中を装ってCIA本部に潜入したり、いろいろ手の込んだことをしているのだが、いちいち拾っていくと切りがないので涙をのんで割愛しております…。

直談判で説明を求めるターナーに、殺し屋を雇ったのは自分ではないというヒギンズ。

…話がこんがらがってきたので(というか、私が説明下手なので)、整理をしてみる。

ターナーがCIA本部に送った「中東侵略計画」ミステリのまとめが、CIAの極秘計画と偶然合致していたために、ターナーを除く全員が殺された。

殺し屋を雇ったのはCIA作戦本部副部長アトウッド(アディソン・パウエル)とウィクス(右足を撃たれて、サムを殺した人)。
この二人がCIAの「影の組織」とでも呼ぶべきものの中心的存在。
これをCIA内の分裂とか扮装と捉えると話が見えなくなってしまう。

ただでさえややこしいこの話、
「CIAの中に、さらに隠れたCIAがあった」というのだから本当に骨が折れる…。

「影の組織」の一員ウィクスは病院内で殺し屋ジョベアに抹殺される。
依頼したのは何と上司のアトウッド。
組織って恐ろしい…ブルブル。

ターナーは、殺し屋から奪ったカギからホテルを割り出したり、電話会社に潜入してアトウッドの自宅の電話番号を割り出したりと、ちょっとありえないアクロバティックな技を連発し、アトウッドの自宅を調べ上げる。

アトウッド宅へ単身乗り込むターナー。
しかしそこへまたもや殺し屋ジョベア登場。
またまたターナー絶体絶命!

ところがジョベア、なんとアトウッドのほうを射殺。
目が点になるターナー。

とにかくアトウッド邸を出る二人。
ここでさらに驚くべき事に、度胸・頭脳・行動力の三拍子そろっているターナーを、"殺し屋として"スカウトするジョベアである。

このあたりの会話がちょっと良いので採録してみた。

(ジョベア) 先が知れてるぞ。目に見えるようだ。
君が歩いている、春浅い日差しを浴びて。
すると車が横に止まり、ドアが開き、
君が信頼してる人間が車から降りる。
作ったような笑いを浮かべてだ。
ドアは開いたままだし、君は乗らざるをえない。

(ターナー) 何でもお見通しらしい。
で、どうしたらいい。

(ジョベア) ヨーロッパへ行け。
はっきり言って私の仕事は悪くないよ。
雇い主には困らない。

(ターナー) とても耐えられない。

(ジョベア) いや、楽だし、平和な生活だよ。
どっち側も信じなくていい。
主義もない。あるのは自分だけ。
それと仕事の正確さだ。

(ターナー) 私は合衆国生まれだ。
長くは離れられない。

(ジョベア) 気の毒に。


なんとジョベア、せんべつに拳銃をプレゼント。

ところでアトウッド殺害をジョベアに依頼したのは誰だったのかというと…もはや残っているのはヒギンズしかいないということになる。
CIAは魑魅魍魎の館かっていう…。

ラストシーンはニューヨークの大通り。

ヒギンズを呼び止めるターナー。
彼は得意げに言い放つ。
「今回のあらましはすべてニューヨークタイムズにリークした」。

対するヒギンズ、
「記事にはならないぞ」

ターナーの顔から勝ち誇ったような笑みが消える。
そのままニューヨークの雑踏へ消えていくターナーであった。

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Three Days of the Condor (allcinemaより一部転載)

監督: シドニー・ポラック
製作: スタンリー・シュナイダー
製作総指揮: ディノ・デ・ラウレンティス
原作: ジェームズ・グラディ
脚本: ロレンツォ・センプル・Jr、デビッド・レイフィール
撮影: オーウェン・ロイズマン
音楽: デイブ・グルーシン

出演:
ロバート・レッドフォード : ジョー・ターナー(コンドル)
フェイ・ダナウェイ : キャシー・ヘイル
クリフ・ロバートソン : ヒギンズ
マックス・フォン・シドー : 殺し屋ジョベア
ジョン・ハウスマン : ウォバッシュ
アディソン・パウエル : アトウッド
ウォルター・マッギン : サム
ティナ・チェン : ジャニス
マイケル・ケーン : ウィクス
ハンク・ギャレット : 郵便配達人
カーリン・グリン : サムの妻
ラッセル・ジョンソン
ハンスフォード・ロウ