あらすじ (ネタバレあります!)

ダンカンという警察署員が自殺する。
かたわらに警察上層部と悪の組織との癒着を告発した書状を残して。

だが夫人(ジャネット・ノーラン)は自分の懐に入れてしまう。
この書状が打ち出の小槌になり得ることに気づいたのだ。

ダンカン夫人は書状を盾に、悪の組織のボス、ラガーナ(アレクサンダー・スコービイ)から定期的に口止め料を貰うことに成功する。

警察はダンカンの死を、病気を苦にしての自殺として片付ける。

だがここで密告者が現われる。
ダンカンの愛人キャシー(ジョスリン・ブランド)だ。

ダンカンは病気などしていなかったこと、
離婚して自分と一緒になるはずだったこと、
身分不相応の別荘を所有していたこと、
などの情報を得たバニオン刑事(グレン・フォード)は、ダンカン自殺説に疑いを持ち始める。

…厳密に言うと、自殺は疑いのないところだが、なぜ夫人はウソをついたのか、自殺の本当の理由は何なのか、真実を明らかにする必要あり、とバニオンは考えたのだ。

上司のウィルクス警部補(ウィリス・バウチイ)は、バニオンが再度ダンカン夫人宅へ事情聴取に行ったことをたしなめる。

が、実はウィルクスら警察上層部はすでに悪の組織と癒着していた。
バニオンにあまり嗅ぎまわってほしくないのである。

密告したキャシーが死体で発見される。
全身に拷問の後が見られる無惨な姿だった。
これはキャシーの証言が真実だったことを意味する。
バニオンの孤独な捜査は続く。

…自己に厳しい規範を抱いて生きるバニオンも、家庭では優しい夫である。
ときおり差し挟まれる妻子との愛情あふれる生活が微笑ましい。

しかし、その家庭の中にまで脅迫電話が掛かってくるようになる。
妻が汚い言葉を浴びせられたことで、バニオンにスイッチが入った。

悪の組織の首領、ラガーナ邸へ直接対決に乗り込む。
ラガーナの部屋には、母親の巨大な肖像画が掛かっている。
悪人とはいえ、彼も人の子というところだが、バニオンにとっては「それも、善良な人々から奪い取った金で描かせたんだろう」という論理になるようだ。

ラガーナはバニオンを抹殺するべく、車に爆弾を仕掛けさせる。
だが最初に車のキーを回したのは妻だった…。

奥さんを殺されたバニオンはバッジを返上。
何のしがらみも無い身となって、悪の組織に戦いを挑んでいく。

バーにて組織のナンバーツー格のビンス(リー・マービン)とやり合うバニオン。
ビンスの愛人デビー(グロリア・グレアム)はバニオンに一目惚れして、彼のホテルまでついてくる。

…言い忘れたが、バニオンは奥さんを亡くした後、家を引き払い、娘は別のところにかくまってもらい、ホテル住まいをしているのだ。

バニオンとデビーの間には何も起こらなかったが、ビンスはそうは思っていない。

それでなくてもバーで衆人環視の中、顔をつぶされたのだ。
腹いせもあったか、デビーの顔に煮え立ったコーヒーをぶちまける。

顔半分に大やけどを負うデビーである。
デビーはバニオンの元に逃げ込む。

デビーの持っている情報と、バニオンの調べとをつきあわると、事件の全貌がつかめてきた。

ここでデビーが驚くべき行動に出る。
なんとダンカン夫人を射殺するのである。
このような行動に至った理由は以下のようなものと思われる。

夫人が死ねば、告発状が公になる

ラガーナ(と自分の顔を台無しにしたビンス)たちは一網打尽

デビーの復讐完成

しかしデビーの気持ちはこれでも収まらなかったようだ。
ビンスのペントハウスで彼を待ち伏せしたデビーは、お返しとばかりに、帰宅した彼に煮えコーヒーをぶっかける。

怒ったビンスはデビーを射殺。
一歩遅れて駆けつけてきたバニオンとビンス、一対一の銃撃戦。

ここに警察もやってきて、ビンスはお縄となる。

警察と悪の組織の癒着は白日の下にさらされる。
かくしてバニオンは復職。
“正義の人"の帰還を、署員たちは心の底から喜ぶのであった。

。。。改めて振り返ってみると、
『復讐は俺に任せろ』という邦題は内容をうがっていないと言わざるをえない。

バニオンの行動は、バッジを返上した後も一貫して“公僕"そのものだった。
さらに、ビンスを殺すチャンスは充分あったにもかかわらず、司法の手に委ねた。

これを「妻への復讐を果たした」と片付けるのはいかにも乱暴だ。

バニオンは「復讐」したのではない。
野獣と化して暴れたい気持ちを必死に押しとどめ、夫として、男として、人間としての義務を立派に果たそうとしたのだ。

…フリッツ・ラング監督作品を観るのは、恥ずかしながら初めてだと思う。
いやあ、実に素晴らしい映画だった!

本作を観ようと思ったきっかけは塩田明彦氏の「映画術」という本との出会いだった。
このような上質な映画(と、見どころ)を教えてくださった塩田氏に心より感謝申し上げます。

関連エントリ ;
塩田明彦・著「映画術 その演出はなぜ心をつかむのか」に現代の職人魂を見た : 23時の雑記帳

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THE BIG HEAT (映画.comより一部転載)

監督 - フリッツ・ラング
脚色 - シドニー・ボーム
原作 - ウィリアム・P・マッギバーン
製作 - ロバート・アーサー
撮影 - チャールズ・ラング
美術 - ロバート・ピーターソン
音楽監督 - ミッシャ・バカライニコフ
録音 - ジョージ・クーパー
編集 - チャールズ・ネルソン

キャスト
グレン・フォード - Dave_Banion
グロリア・グレアム - Debby_Marsh
ジョスリン・ブランド - Katie
アレクサンダー・スコービイ - Mike_Lagana
リー・マービン - Vince_Stone
ジャネット・ノーラン - Bertha_Duncan
キャロリン・ジョーンズ - Lucy_Carroway
ウィリス・バウチイ - Thomas_Wilkes
Chris Alcaide - George_Rose
Linda Bennett - Joyce
Kathryn Ames - Marge
レックス・リーズン - Lou