明日、5月21日は稲垣浩監督の命日ということで
(1980年5月21満74歳没 ※Wikipediaより)
『稲妻草紙』を観てみた。

本作には印象的なシーンがいくつもあった。

まず、阪妻が太鼓を叩くシーン。これはジェスチャのみ。そこに本物の太鼓の音が被さってくるという趣向。

それから阪妻、田中絹代、木暮実千代の3人が屋台で楽しげに一杯やるところ。

三國連太郎の韋駄天走り。

そして忘れられないのは、阪妻と田中が雨宿りをしているシーン。

阪妻の笠をかぶっておどけてみせる田中絹代が可愛い。
続けてうなじのアップ、そして素足…これは阪妻の視線。
見とれていた阪妻、ハッと我に返る。
そして距離を詰めようと寄っていくのだが、田中はさりげなくかわす。

つつましさの中に激しさを秘めた大人の男の情愛が行き場を失うさまが何とも切ない。
だがそういう阪妻だって、木暮実千代扮する仲居から想いを寄せられているのだ。

部屋に二人きりの時、意を決した木暮が阪妻ににじり寄っていく。
その気配を背中で察したか、阪妻は振り向きもせず、スッと立ち上がり、間合いを外す。

秋波を投げかけたり、かわしたり…この世に男と女がいる限り、恋のドッジボールは続いていく。
もっとも私の場合、受けてくれる人がいないので、壁相手のキャッチボールさ、あはは…。(泣)

あらすじ (ネタバレあります!)

お祭りを控え、どことなく浮かれ気味の町に有馬又十郎(阪東妻三郎)が現われる。

脱藩した船木源三郎(三國連太郎)を討てとの上意を受けて、彼の故郷を訪ねてきたのだ。

有馬はお雪(田中絹代)という女と出会い、惹かれていく。

奇しくもお雪は以前、船木と結婚寸前までいった仲だった。

しかし家庭の事情により破局、いまだに船木に惚れている。

その船木が、博打打ちの用心棒となって町に帰ってきた。

有馬はほどなくしてそれを知るが、船木を討つ気はないようだ。

悪徳家老を殴った船木を、むしろ藩を憂えた正直な男だと、好ましく思っている。

もし船木を斬れば、藩士としての株も上がるし、お雪をものにできるかも知れない。
だが有馬はそういう男ではない。
彼は船木に直談判をし、町を出るよう説得する。

藩からはさらに6人の追っ手が放たれ、このままでは船木が生き残る道はない。
がしかし、船木はこれを拒否する。
お雪と有馬が恋仲と思い込んだ彼は、二人は一緒になりたいがために、逃亡を促しているのだと思い込んでしまった。

何とも悩ましい話だ。
こりゃあクライマックスは二人の対決だな、と思っていたら、話は意外な方向に…。

船木を用心棒として雇っている博打打ちの親分(上田吉次郎)が、12万石の大藩を相手にするのはカンベンと、船木に暇を出したのだ。
さらに、藩からの追っ手6人に船木の所在を教えてしまう。

このことを知った有馬は船木を装って、6人が待ち構える場所へと出向く。
なんと上意討ちを受けた者同士が斬り合うことになってしまった。

夜の境内、“稲妻"に照らされての阪妻の大立回り。
瀕死の状態になりながらも6人を斬り伏せる。
(実際には5人。子供思いの藩士をひとり逃がしてやったのだ。阪妻、えらい!)

後から駆けつけてきた船木の目の前で、上意状を破り捨ててみせる有馬。
お雪の幸せを託された船木は今度こそ頷くのであった。

…1年後、お雪とおうた(木暮実千代)が船木と有馬の帰りを待ちわびているところをみると、二人はその後も元気にしているようだ。

藩士を5人も殺しておいて大変なことになっていると思うんだけど…。
映画はそんなことは気にせず、ハッピーな雰囲気で幕を閉じるのでした。

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監督 - 稲垣浩
脚本 - 鈴木兵吾、稲垣浩
製作 - 小倉浩一郎
撮影 - 安本淳
美術 - 角井平吉
音楽 - 鈴木静一

キャスト
阪東妻三郎 - 有馬又十郎
田中絹代 - お雪
木暮実千代 - おうた
三國連太郎 - 船木源三郎
葛木香一 - 辰五郎
上田吉二郎 - 亀屋六蔵
山路義人 - 弁慶の丑
進藤英太郎 - 四郎兵衛
鮎川十糸子 - 酌婦
羅門光三郎 - 風速兵衛
戸上城太郎 - 九鬼一角
永田光男 - 高見六郎右衛門