AKB48のプロデュース業も絶好調の秋元康氏の著作。
ここに書かれていることは簡単なようで、やってみるととてもハードルが高い。

例えば「5メートル離れた書棚の本を買え」。
これはやってみたことがある。
が、どうしてもお金を払うところまでいかない。
というかそもそも全然興味のないジャンルの書棚コーナーにいる自体、たまらなく苦痛なのだ。

それから「上司から持つように言われたフライパンはいつ置けばいいのか」問題。
私は以前、これと同じような状況になり、大失態を演じた。
ああ、今思い出してもココロが痛い…。

というわけで「企画」とそれほど縁の無い人たちにとっても、本書はとてもタメになることが書かれている。
社会で生きていく上で、押さえておくべきポイントを実に適確にアドバイスしてくれる秋元康氏、さすがよく見えている人だなあと感じ入った。

通い慣れた通勤コースで、いかに新しいモノを発見できるか。
まずはそこから再出発だ。
根拠のない自信を持てるか

負けて当たり前、できなくて当たり前、やれなくて当たり前というふうに生きていると、どんどんマイナス思考になっていく。
「オレはジャンケンに強い」
「オレが負けるわけがない」
そう思いこまないと売れる企画、勝てる企画はつくれない。
そこから、すべてがはじまるのである。

喫茶店で知らないメニューを頼めるか

仲間と一緒に喫茶店に入る。
メニューを聞きもせずに、コーヒーを注文する人がほとんどだろう。
だが、ちょっと待ってほしい。
喫茶店のメニューも、さまざまである。
なかには、見たことも味わったこともないものが並んでいたりする。たとえば、「黒ザクロジュース」とか「カシス紅茶」とか「ルアック・コーヒー」とか、変わった名前の飲み物が載っていたりする。
そういうものに興味を持って、一度頼んでみようかという人間は、伸びるタイプだと思う。
面白い発想をし、ひねりのある企画を考えだすタイプに違いないと思う。

自分の武器の探し方

たとえば、上司の一人から、「お前、ちょっと悪いけどこのフライパンを持っていてくれ」
と頼まれたときに、
「なんで、オレがフライパンを持たなければいけないんだ」
といった不満や不平を言わず、「ま、あの人が言うんだから仕方ないな」
そう思えるかどうか。
三日くらい経ってから、
「あっ、いけない。あいつにフライパンを持たせたままだった」
と行って見ると、まだフライパンを持ったままだった、というような人物をほしがっているのだ。
どんなに取り柄がなくても、無学で無教養だとしても、そんな「我慢」が最後の「武器」になることがあるのだ。

ニューヨークの工事現場の穴

他にも、人から聞いた話で、なるほどと感心した例もある。
本当かどうかは分からないが、新宿のデパート「伊勢丹」の紙袋は、ほかのデパートの紙袋より、ちょっとだけ大きいというのである。
そうすると、あちこちで買い物をして紙袋が増えてきたときに、最後はいちばん大きな「伊勢丹」の袋に入ってしまうというわけだ。
その発想が、なかなか面白い。
「何かに使えそうだな」
と思うのである。
こうして街で発見したことや、人から聞いた話を記憶し、蓄積することが、発想・企画術になる。
街にたくさんころがっている発想のネタに、いちはやく気づくかどうか。
そこが、他人より一歩先を行く企画を生みだす「ターニング・ポイント」なのである。

本屋ではいつもとは5メートル離れた場所へ行け

よくOLの皆さんにはアドバイスしていることだが、書店に行ったら、いつも自分が立ち寄る書棚から5メートル離れた場所にあるものを1冊買いなさい、とすすめている。
僕自身もそうだが、人間は無意識のうちに自分のテリトリーのなかで行動しようとしている。
書店に行っても、推理小説が好きな人は推理小説、雑誌が好きな人は雑誌のコーナーと、決まったところに立ってしまうのだ。
しかし、5メートル移動してみると、『シダ科の植物』とか『可愛い赤ちゃんの名前のつけ方』といった違うジャンルの本が並んでいたりする。
たとえ植物に興味がなくても、子供がいなくても、そういう本を試しに1冊買って帰ってくるだけで、全然違う発想が生まれてきたりするのだ。
人間は何かのきっかけがなければ、書店で5メートル離れた場所に立つことはないし、たとえ気まぐれで立つことがあったとしても、そこで1冊買うという行動には出ないものだ。
それをあえて意図的に行なうところに意味があるし、いつもとは違う環境に自分を置くことができるのである。

『ザ・ベストテン』がヒットした理由

僕は、これまでに数多くのヒット番組と関わってきた。いまや伝説的な番組ともなった『ザ・ベストテン』(1978年1月〜1989年9月)という生放送の歌番組もそのひとつである。
それまで歌手にとっては、テレビという存在は絶対的なものであり、テレビの影響力の大きさは誰もが知っていた。みんなテレビによって新曲が知られてヒットし、売れていくものだと信じていたのである。
たとえば、『夜のヒットスタジオ』に歌手が出れば、次の週にはその歌手のレコードがハイペースで売れたという時代であった。

ところが、『ザ・ベストテン』では、ベストテンにランキングされた歌手が、番組に登場しないことがたびたびあった。そのときに、
「誰々さんは、こういう理由でお越しいただけません」
と、出演しないことを堂々と明らかにしたのだ。テレビの力が強大だと信じられていた時代だったからこそ、歌手もアーティストも、
「テレビに出る必要はないんだ」
という姿勢が新しかったし、衝撃的でもあった。
普通はテレビの場合、出演しない理由を、
「出たくないから出ない」
と拒否されたとは言わずに、キャスティングなどでごまかすのが通常のやり方であった。出演しない理由には、あえて触れないというのがテレビ業界としての鉄則でもあったのだ。ところが『ザ・ベストテン』では、堂々と、
「ご出演いただけません」
と発表するところが、新鮮な驚きを与えたのである。

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