本日、5月8日は「子連れ狼」「アイウエオボーイ」「実験人形ダミー・オスカー」など、数多くのヒットを飛ばし、かつ後進の育成にも日夜尽力されている小池一夫の誕生日を記念して、対談集をご紹介申し上げる。

とにかくゲスト陣の顔ぶれに圧倒される。
目次順に名前を挙げていくと、、、

手塚治虫
小島剛夕
石ノ森章太郎
藤子不二雄A
池上遼一
叶精作
高橋留美子
さくまあきら
堀井雄二
板垣恵介
山口貴由
神山健治
虚淵玄
庵野秀明
長嶋茂雄

この方たちの年収を合わせるといったいいくらになるんだろう。
思わず「なんかちょーだい」と手を差し出したくなる。
いやいや、冗談です。
そういう根性だからいつまでたってもダメなんです。

何はともあれ。。。

小池一夫先生、お誕生日おめでとうございます。

(以下引用 …名前右の数字はインタビュー採録年です)

手塚治虫 1985

(手塚) 小池さんの『子連れ狼』なんて、すごくテンポがありますよ。あれはもう大変なもんだ。ぼくは『子連れ』の信奉者にサンフランシスコで会いましたけど、ご存知でしょう?

(小池) いえ、知らないです。

(手塚) アメリカの有名な漫画家で『子連れ』で開眼したという人がいるんです。彼は『子連れ』の最後の柳生烈堂と子供との三者の対決のときのテンポで勇者物語を描いているんです。ぼくはその人といろいろ話したんですが、彼は、あの決闘のテンポは、どのアメリカ映画にも比べようがないくらい素晴らしいといってる。その人からファンレターなんか来ないですか?

(小池) 来ないですね。

(手塚) それはおかしい。その点すごく損なのはね、小池さんはいろんな人に絵を描かせるでしょ、だから小池さんのイメージが没個性になる。そろそろ、プロデューサーとして、小池さんの名前を大々的に出した方がいいと思うんですね。

石ノ森章太郎 1989
(石ノ森) ぽくの場合、作品を作りあげていく手順は二通りある。まずキャラクターが頭に浮かんで、キャラクターを作ってから話に入っていくというのと、まず話が浮かんで、それに合わせたキャラクターを作るのと……。そこで、これまで描いてきたキャラクターと見比べながら、なんとか違う部分を出さなければいけない。そうするとさ、髪型であるとか、表情のパターンということになってくるでしょ。ほかのキャラクターとどう違えるかということが、ひとつの勝負になってくるわけだから、わりに相対的なものだね、キャラクターの外見的なことは。

(小池) ひとつのキャラクターをつくれば、十年食えるという……印税とかも引っくるめてだけど。

(石ノ森) 今は三年ぐらいになってるんじゃないの、昔は十年だったけど。

池上遼一 2005
(池上) やはり原作(『I・餓男』)が、リアルなものを追求していく話でしたので、何とかそれを表現するために、どんどん絵がリアルになっていきました。だから、原作に育てられてきた、という感じです。

(小池) そうは言うけど、やっぱり本人が努力して、どんどん上手くなっていったんだと思います。努力しかないです。漫画というのは、根気でしょう?

(池上) そうですね。

(小池) やりつづけるしかない。机の前に座るということも、実は大変なんです。一日に何時間ぐらい座ってますか?

(池上) 今でも十時間ぐらいは座ってます。若い頃は続けて二日完全徹夜、三〜四十時間とかね。

(小池) 僕もね、あの『ゴルゴ13』のさいとう・たかを先生のそばで、漫画のアシスタントと同じ生活を何年かやってるんです。僕は脚本担当だったけど、作画に入っても僕だけ遊んでいるわけにはいかないから、手伝うんです。何十時間も一緒に手伝っているわけですよね。トイレとか食事とかはしますが、四、五時間椅子を立たないというのはざらですね。今のみなさんにはそういう集中力がない気がします。机の前に五時間六時間とすわっていられるのかな。座ってないと漫画は描けません。キャラクターは立っていては創れません。私は昔から弟子たちに、一日一時間は必ず机の前に座れ、一ヶ月たったら、二時間に、二ヶ月になったら三時間に増やせ、トイレ一回三時間、そういうハードルを課してきました。

高橋留美子 2001
(高橋) 犬夜叉に誰を絡めようかという場合に、どういう性格の人間を絡めると話が転がっていくのだろうかをよく考えます。たとえばヒロインの「かごめ」っていう子は、最初はもっと強い性格の子かなっと思っていたんですけど、犬夜叉があまりにも余裕がないので、そういう子をぶつけると凄いヒステリックになってしまうと思い、かごめっていうのは柔らかい感じの女の子にだんだんなっていきました。だからケンカはするけれど、それがあまり深刻にならない程度に受け流すぐらいのキャラクターっていうのが今の感じですね。で、そうすると今度はボケが欲しい。ボケてくれるキャラクターが。ボケのノリ突っ込みがやれるキャラが欲しい。また、最初は仲間に加えたいと思って描いていても、何回か動かすと「この子はだめだ」となるんです。

(小池) キャラの食い合いってあるでしょ。

(高橋) そうなんですよね。合わせてみないとわからないというのがあります。創っているようでいてそうでもないというのか……そのキャラが何をしゃべるか……、描いてみないとわからないことってありますね。

さくまあきら 2010
(さくま) どんなに才能があっても、デビューできずに消えて行った人がたくさんいます。その運というものは、自分でつくるしかないんですね。たとえば旅に出ようとした時、隣のクラスに旅行の達人がいると知っていても、友だちじゃなかったら一緒に旅行はしないと思うんですよ。人間って、案外身近な人間で済ませようとするんです。業界に入ってびっくりしたのは、選ばれた人たちだけが仕事をしているのかと思ったら、実は友だちが友だちを呼んでいることが結構多いんですね。安易と言えば安易なんですが、デビューまではそれでいいんです。野球で言えば、打席に立たなければヒットは打てないし、空振りもできない。とにかく打席に立つためには、交友関係をフルに活用したほうがいいんですよ。

板垣恵介 2009
(板垣) 体力検定ってありますよね。100メートル走だとか長距離走だとか、懸垂、幅跳び、いろんな要素を総合して6角形のグラフで表したとき、100点満点は大きな正6角形になりますね。正6角形に近くなるのがバランスがとれていて理想的だとされます。
僕はマンガもそういうものだと思っていました。ストーリー、構成、構図、画力などの要素があって、バランスが正6角形に近くなるほどいいマンガだと思って、僕は正6角形を作ろうとしたんですが、それが大間違いだとわかった。
その6角形の一角にキャラクターという要素があるとしたら、突き抜けていれば突き抜けているほどいい。キャラクターというのは、こういう形に(正6角形をはるかに突き抜けて、黒板の枠いっぱいまで)これくらいまで来てなくっちゃいけないんですよ。
そうすれば、たとえ他の要素が弱くて、小さな6角形しかできなかったとしても、際立ったキャラクターが出来ていると、それで通用してしまう。その現実に初めて出会ってしまった訳です。
それくらい、塾頭の「キャラクターを起てろ」という言葉には価値がありました。それを知ったことにより、僕は将来「こうなりたい」とか「あれが欲しい」と思っていたもののすべてを手に入れることが出来たし、自分の想像していた以上の成功をもたらしてくれました。
これはマンガのキャラクターの話ですが、僕は今、それくらい価値がある話をしていると思っています。今、ここにいる人たちの何人かでも、それを掴めたらすごいことです。ぜひ掴んで欲しいと考えています。

虚淵玄 2012
(小池) 漫画だと、第一話の最初の七ページでしっかりキャラが立っていないと、お客さんの興味を惹くのが難しいんですが、本作(『魔法少女まどか☆マギカ』)はそういった意味でも、紙媒体とはずいぶん違う見せ方をしていますね。

(虚淵) あの手法は、アニメ脚本家の黒田洋介さんに教わったスタイルなんです。具体的に説明しますと、まず第一話でいきなり意外性を提示して、視聴者を途方に暮れさせます。インパクトのある展開で興味を惹きつけるだけ惹きつけて、起こっている出来事についてはこの段階では明かさないんです。
続いて第二話で、物語の世界観やルール、この作品はこういった話で、こういう段取りこういう法則で進んでいくということを初めて説明します。
そして第三話で、前回説明したルール以外の出来事も起こり得ることを示す、サプライズを発生させるんです。この三段階がうまく描けていれば、視聴者は四話以降も確実について来てくれますね。

庵野秀明 2013
(小池) たとえば、『新世紀エヴァンゲリオン』にはいろんなキャラクターの要素が含まれていますが、そのなかでも際立っているのが《エヴァンゲリオン》というキャラクターですね。エヴァはロボットかと思えば、宇宙から飛来した謎の生命体ともいえるし、さらには主人公の母親の魂までが組み込まれているという……この《エヴァンゲリオン》という存在のキャラクター設定は、計算の上で考え出されたものなのでしょうか? それとも偶然の産物なのでしょうか?

(庵野) 両方混ざっている感じですね。《ロボット》にキャラクター性を持たせるのは、僕にとっては当たり前のことなんです。子供の頃から『鉄人28号』や『マジンガーZ』を見てきましたから。
それに、戦艦大和やゼロ戦が活躍する戦記物をたくさん見たことも大きいですね。戦艦大和はよく、映画や小説の題材として扱われますが、言ってしまえば《ただの船》で、《鉄の塊》でしかありません。
けれども日本では、まるでそれに《魂》が宿っているかのように扱われることが多い。この、船ですらキャラクターとして捉えることができる感覚は、日本人ならではの特性だと思うんです。思いを込めれば何にでも魂が宿る。八百万の神様もこれと同じ原理ですよね。その延長でエヴァンゲリオンというキャラクターを考えたんです。
それと、登場人物で例を挙げるなら、綾波レイはあの当時、まだアニメで描かれたことがないタイプの女の子を描こう、というコンセプトで思いついたキャラクターです。
ああいう内向的で、感情を表現する方法を知らない女の子って、現実ではクラスにひとりくらい必ずいるんですよ。誰ともあまり話さず、ずっと本を読んでいるような子が。それをいざ、アニメに登場させてみたところ、ものすごい反響をいただいた、という次第です。

長嶋茂雄 2002
(小池) 長嶋さんは三振しても、「次は打つんじゃないか」と感じさせてくれました。

(長嶋) 失敗した後は無念さ、悔しさで眠れません。やるからには次は勝つ、それが野球人生です。リカバリーのチャンスは絶対回ってきます。

(小池) そのチャンスを掴めない人が多い。

(長嶋) 惰性にならないことですね。

(学生B) 毎朝、散歩されるそうですね。

(長嶋) 5時半に起きて、ひとりで多摩川を散歩しながら1日のスケジュールを決めるんです。1日のスタート、いいスタートを切るために。散歩はひとりがいいですね。頭の中にイメージをつくって。今日は30分で話の内容を考えました。このキャンパスは風光明媚なところですから、是非みなさんもやってみて下さい。

(学生C) 僕にオーラはありますか?

(長嶋) オーラですか? そういう質問、戸惑いますねえ(笑)。一見したところ、クールでクレバーなタイプに見えますが、オーラはこれから磨いていけばいいと思います。
僕は66歳、ゾロ目ですが、まだ磨き足りない。肉体は老けていきますが、精神面はまだまだ磨くことができます。あなたも苦汁をなめ尽くして下さい。

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目次 (オンライン書店 ブックサービスより転載)

手塚治虫「僕は神様じゃないんです」

小島剛夕 「小池さん、近頃は不親切なんだ(笑)」

石ノ森章太郎 「全てのキャラクターはキングコングに通じる」

藤子不二雄A 「キャラクターは読者に見られることでココロと体を持っていく」

池上遼一 「僕はロボットには興味がないんです」

叶精作 「…やっぱり、首の付け根ですね」

高橋留美子 「私はもっと『悪』を描けたらいいなと思うんです」

さくまあきら 「みんな友達が支えてくれる」

堀井雄二 「本質的な『面白さ』って変わらないんですよね」

板垣恵介 「キャラクターは突き抜けていれば突き抜けているほどいいんです!」

山口貴由 「漫画家って描きたいキャラクターは一つしか持っていないものかも知れない」

神山健治 「リアルさが足りないと物語に面白味が出ないんです」

虚淵玄(ニトロプラス) 「誰もが当たり前に、『キャラクター・シンキング』できる時代がやって来る」

庵野秀明 「南極にいる人は、北極の人に憧れるんです」

長嶋茂雄 「プラス思考の人はオーラが出やすいんです!」