ルビッチ、最後の傑作。
このあと
1945年『ロイヤル・スキャンダル』(オットー・プレミンジャー名義)
1946年『小間使 クルニー・ブラウン』
1948年『あのアーミン毛皮の貴婦人』(体調悪化のため監督を途中交代)
と出すが、往年の輝きは感じられない。

あらすじ(ネタバレあります!)

死者を天国行きか地獄行きかに選り分ける部屋にヘンリー(ドン・アメチ)がやってくる。
迎え入れるはプロレスラーか用心棒かといった風情の閻魔さま(レアード・クレガー)。

そこへ割り込んできた中年のご婦人。
きたない足を披露したため、いきなり地獄に落とされる。

…この映画でのルビッチはかなり年配の女性に手厳しい。
結婚ハウツー本の著者や、看護婦に対しても、容姿に関する暴言を言わせている。
こんなルビッチ映画を観たのは初めてだ。
ほとんどの作品は、女性崇拝主義が貫かれているので、念のため。

まるでその時のノリと気分で地獄行きを簡単に決めてしまっている風の閻魔さまだが、
これは映画の世界観と方向性をわれわれ観客に提示する役目を担っているのだろう。

さて、自分はおそらく地獄落ちだろうというヘンリーに興味をそそられた閻魔さま。
じっくりと話を聞く体制に入る。

…この時の表情が良い。
お、あんたもしや話の分かるお人だね、という感じ。

ヘンリーの人生は女、女、女に彩られたものだった。
特に彼の人生を決定づけたのは、少年の頃にやってきたフランス人メイドだろう。
いけないことを教えられ尽くしたヘンリーは、立派なプレイボーイへと成長するのだった。

運命の人マーサ(ジーン・ティアニー)と出会ったのは、ヘンリーのいとこと彼女が結婚する直前のことだった。
敢然と花嫁を奪い去るヘンリー。
だが彼の浮気がやむわけはなく、結婚10年目にしてマーサは家を出てしまう。

その後、どうにか許してもらうも相変わらず女道楽はやまない。
生まれた息子も父親に似てしまい、そのうちに同じ女性に惚れてしまったり。

しかし年月は残酷なもの。
あれだけモテていたヘンリーも、今や年代物扱いされる始末。
最愛の妻マーサを亡くし、そしてヘンリー自身も…。

ヘンリーの長い告白は終わった。
すべてを聞き終えた閻魔さまの判定は…もうタイトルで言っちゃってますね。
というわけで、めでたしめでたし。

評伝「ルビッチ・タッチ」の中に、ルビッチ本人が自作を語った手紙が載っています。
誠に勝手ながら、ここに孫引きさせていただいた。
『天国は待ってくれる』───私はこれを自らの代表作のひとつと見なしています。というのも、これはいくつかの点で、映画の既成の型から脱却しようと努力した作品だからです。製作に入る前に一部から強い反対がありました。この映画にはメッセージがない、まるでテーマをもたない映画じゃないかといわれたのです。主人公は生活を楽しむことだけに興味をもっている男性であって、何かをなしとげようとか、何か高貴な人生目標を掲げるとかしているわけではない。こんな意味のない映画をなぜ作りたいのかと撮影所に問われたとき、私は次のように答えました。自分は観客に何人かの人物を紹介したいと思っている。もし観客がそれらの人物を好ましいと感じてくれれば、それでこの映画はじゅうぶん成功したといえるだろう、と。フタを開けてみると、幸いにも私のねらいは的中しました。それに加えて、この映画では幸福な結婚生活をもっと真実に近いかたちで描いてみました。従来の映画が描く幸福な結婚生活というのは、十中八九、炉端のしあわせのような何のおもしろみもない、退屈きわまりないものに限られてしまっているからです。

br_banner_kokuban




関連リンク : エルンスト・ルビッチ監督作品(いちおう年代順です)
★★☆☆☆ 『牡蠣の王女』(1919・ドイツ)

★★★★★ 『花嫁人形』(1919・ドイツ)

★★★☆☆ 『デセプション』(1920・ドイツ)

★★★★☆ 『結婚哲学』(1924・アメリカ)

★★☆☆☆ 『ウィンダミア夫人の扇』(1925・アメリカ)

★★☆☆☆ 『山の王者』(1929・アメリカ)

★★★☆☆ 『ラブ・パレード』(1929・アメリカ)

★★★☆☆ 上質な時間、『モンテカルロ』(1930・アメリカ)

★★★☆☆ 『陽気な中尉さん』(1931・アメリカ)

★★★★☆ 『私の殺した男』(1932・アメリカ)

★★★☆☆ 『君とひととき』(1932・アメリカ)

★★☆☆☆ 『極楽特急』(1932・アメリカ)

★★★☆☆ 『生活の設計』(1933・アメリカ)

★★★☆☆ 『メリー・ウィドウ』(1934・アメリカ)

★★★★☆ 『天使』(1937・アメリカ)

★☆☆☆☆ 『青髭八人目の妻』(1938・アメリカ)

★★★★★ 『ニノチカ』(1939・アメリカ)

★★★★☆ 『街角 桃色の店』(1940・アメリカ)

★★☆☆☆ 『淑女超特急』(1941・アメリカ)

★★★★★ 『生きるべきか死ぬべきか』(1942・アメリカ)

★★★★☆ 『天国は待ってくれる』(1943・アメリカ)

★☆☆☆☆ 『ロイヤル・スキャンダル』『クルニー・ブラウン』『あのアーミン毛皮の貴婦人』

<書籍>

「ルビッチ・タッチ」ハーマン・G・ワインバーグ(著),宮本高晴(訳)

Heaven Can Wait (映画.comより一部転載)

監督 - エルンスト・ルビッチ
脚本 - サムソン・ラファエルソン
原作 - ラディスラウス・ブス・フェケテ
製作 - エルンスト・ルビッチ
撮影 - エドワード・クロンジェガー
音楽 - アルフレッド・ニューマン
編集 - ドロシー・スペンサー

キャスト
ジーン・ティアニー - Martha
ドン・アメチ - Henry_Van_Clave
チャールズ・コバーン - Hugo_Van_Clave
マージョリー・メイン - Mrs._Strabel
レアード・クレガー - His_Excellency
スプリング・バイイントン - Bertha_Van_Clave
アリン・ジョスリン - Albert_Van_Clave
ユージン・パレット - E._F._Strabel