初見の印象は良くなかったけれど、何回か観ているうちに面白くなってきた。

ピアニスト役のバージェス・メレディスってどんな映画に出てるんかいなとググってビックリ!
なんとあの『ロッキー』のコーチ、ミッキーだったとは!
ぜんっぜん気づかなかった。

ヒロイン役のマール・オベロンは初めてお目にかかった。
インド出身、ってことはつまり超絶美人。
コメディのセンスがあるようには思えなかったが、ルビッチの趣味なんだろうか。
怒った表情がとても美しい。

彼女の夫役のメルビン・ダグラスが、ひとり気を吐いている。
『ニノチカ』では、グレタ・ガルボを立てる、絶妙のエスコートぶりを見せていた。
本作での彼は、恋敵を殴ったり、銃でおどしたりと、けっこう怖さも垣間見せる。

ストーリーは単純。
あまり夫(M・ダグラス)にかまってもらえないジル(M・オベロン)が、芸術家肌のピアニスト、アレクサンダー(B・メレディス)にいっとき惹かれるが、結局は元のさやに収まるというお話。

オリジナルは同監督作品『当世女大学 (原題 Kiss Me Again)』(1931・アメリカ)というサイレント映画で、これが現存していないらしい…ってウソでしょう?

同じ年に発表された『陽気な中尉さん』のフィルムは非常に良い状態で残っているというのに。
どうか私の勘違いか情報不足でありますように。

今までに見た約20本のルビッチ作品の中でランク付けをするなら、
中の下、あるいは下の上あたりだろうか。
あまりオススメはできないけれど、ルビッチらしさが無いわけではない。

最後に、一つのギャグが形を変えて何度か登場するという、いかにもルビッチという演出を紹介させていただいて終わりにしたい。

ジルは、夫のラリーに脇腹を「ツン!」とされるのを非常に嫌がっている。
ラリーは愛情表現のつもりなのだけれど。

その後、別れることになる二人。
ラリーは、ジルの新しい恋人アレクサンダーにウソを教える。
「妻は脇腹を『ツン!』ってされると喜ぶんだよ」

真に受けたアレクサンダーはここぞというときにジルに「ツン!」。
結果は推して知るべし。

…これで終わらないところがルビッチのルビッチたるゆえん。
もう一度、意外な形で「ツン!」が出てくる。

アレクサンダーに嫌気がさしたジルは、ラリーとヨリを戻したくなり、彼のアパートを訪ねる。
とりあえずジルを招き入れるラリー。

ラリーが別室に引っ込んでいるときに玄関のチャイムが鳴る。
ジルがドアを開けに行く。
訪問者はラリーの新恋人だった。

まさか元妻がいるとは夢にも思わない新恋人は、てっきりラリーが開けてくれたと思い、元気よく「ツン!」と言いながら入ってくる。

…ラリーは新恋人とのほうが相性いいんじゃないかなあ。(笑)

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関連リンク : エルンスト・ルビッチ監督作品(いちおう年代順です)
★★☆☆☆ 『牡蠣の王女』(1919・ドイツ)

★★★★★ 『花嫁人形』(1919・ドイツ)

★★★☆☆ 『デセプション』(1920・ドイツ)

★★★★☆ 『結婚哲学』(1924・アメリカ)

★★☆☆☆ 『ウィンダミア夫人の扇』(1925・アメリカ)

★★☆☆☆ 『山の王者』(1929・アメリカ)

★★★☆☆ 『ラブ・パレード』(1929・アメリカ)

★★★☆☆ 上質な時間、『モンテカルロ』(1930・アメリカ)

★★★☆☆ 『陽気な中尉さん』(1931・アメリカ)

★★★★☆ 『私の殺した男』(1932・アメリカ)

★★★☆☆ 『君とひととき』(1932・アメリカ)

★★☆☆☆ 『極楽特急』(1932・アメリカ)

★★★☆☆ 『生活の設計』(1933・アメリカ)

★★★☆☆ 『メリー・ウィドウ』(1934・アメリカ)

★★★★☆ 『天使』(1937・アメリカ)

★☆☆☆☆ 『青髭八人目の妻』(1938・アメリカ)

★★★★★ 『ニノチカ』(1939・アメリカ)

★★★★☆ 『街角 桃色の店』(1940・アメリカ)

★★☆☆☆ 『淑女超特急』(1941・アメリカ)

★★★★★ 『生きるべきか死ぬべきか』(1942・アメリカ)

★★★★☆ 『天国は待ってくれる』(1943・アメリカ)

★☆☆☆☆ 『ロイヤル・スキャンダル』『クルニー・ブラウン』『あのアーミン毛皮の貴婦人』

<書籍>

「ルビッチ・タッチ」ハーマン・G・ワインバーグ(著),宮本高晴(訳)

That Uncertain Feeling (KINENOTEより一部転載)

監督 エルンスト・ルビッチ
脚本 ドナルド・オグデン・スチュワート
原作戯曲 ビクトリエン・サルドウ、エミール・デナジャック
翻訳 ワルター・ライシュ
製作 エルンスト・ルビッチ
撮影 ジョージ・バーンズ
美術 アレクサンダー・ゴリッツェン
音楽 ウェルナー・R・ハイマン
編集 ウィリアム・シー

出演
マール・オベロン - Mrs. Jill Baker
メルビン・ダグラス - Larry Baker
バージェス・メレディス - Alexander Sebastian
アラン・モウブレイ - Dr. Vengard
オリーブ・ブレイクニー - Margie Stallings
ハリー・ダベンポート - Jones
Sig Ruman - Mr. Kafka
Eve Arden - Sally Aikens
Richard Carle - The Butler