『結婚哲学』(1924)のリメイク作品。
オリジナルはサイレント映画だったのが、本作『君とひととき』ではシネ・オペレッタとなっている。

リメイクの方が軽快で楽しい雰囲気に仕上がっているものの、展開がはしょり気味で、「夫の浮気がバレたのになぜハッピーエンドなの?」と疑問を持たれる方もあるかも知れない。

しかし、だからといってリメイク版の方が劣っているかというと決してそんなことはない。
前作より洗練された部分が多々ある。
会話、小道具、知り合うきっかけ、リアクション、などなど、いったいルビッチの辞書には「アイデアの枯渇」という文字はないのかと思うほどだ。

同じ監督がリメイクも手がけた映画というくくりで思い出すのは、

今井正『ひめゆりの塔』
稲垣浩『無法松の一生』
市川崑『犬神家の一族』

あたりだろうか。
不思議なことにそのどれもがオリジナルに及ばない出来に終わっている。

理由は色々考えられるだろうが、名だたる巨匠たちが難儀した「自作リメイク」を、いとも簡単に(?)やってのけたルビッチは、やはり超弩級だ。

あらすじ(ネタバレあります!)

雨の日、アンドレ医師(モーリス・シュバリエ)が待たせているタクシーに強引に乗り込もうとする女性(ジュヌビエーブ・トビン)がいた。
フェミニストのアンドレ医師は、女性と途中まで同乗する。
彼女の名はミッツィといい、奇しくもアンドレの妻・コレット(ジャネット・マクドナルド)の親友だった。

ここからミッツィの猛アタックが始まる。
彼女も人妻で、年の離れた夫がいるが、年ばかりでなく心もすでに離れてしまっているようだ。

仮病を使い、アンドレを呼び出すミッツィ。
愛妻家のアンドレは危険な香りを感じ、断わろうとするが、ミッツィの親友である妻がどうしても行けというので仕方なく出かける。

ミッツィの猛攻も功を奏さず、その日は何もなかったものの、その後に何か起こりそうな予感を見てとったミッツィの夫・オリビエ教授(ローランド・ヤング)はひそかにほくそ笑む。
彼はミッツィと別れたくてしょうがないのだ。
教授は探偵を雇い、ミッツィを見張らせる。

アンドレ&コレット夫妻の邸宅で晩餐会が開かれる。
コレットが決めた席次では、アンドレとミッツィは隣同士になっている。

アンドレはなるべくミッツィを避けたいので、こっそりカードを入れ替えるが、妻に見られてしまう。
痛くもない腹を探られた可哀想なアンドレである。
席次は元通り、アンドレとミッツィは隣同士に。

さあ、ここでミッツィのウルトラCが炸裂する。

晩餐の始まる前に来て、席次を見て取ったミッツィ。
コレットから、夫のカード入れ替えを愚痴られたことで悪魔の知恵がムクムクと。
なんとこっそりカードを入れ替えて、わざとアンドレから離れて座るのである。

どういうことかというと、

アンドレがまたまたカードを入れ替えて、ある婦人の隣に座りたがった
(と、コレットは思う)

アンドレ、浮気を画策している
(と、コレットは思う)

そうだ、親友のミッツィにアンドレをガードしてもらおう
(と、コレットは思うはず)

晴れて、堂々とずっとアンドレと一緒にいられるミッツィ

…というミッツィの読みはズバリと当たる。
そしてその夜、アンドレとミッツィは一夜を共にしてしまうのである。

その後も、ウルトラD級のアクロバティックな展開がつづく…のだが、ヤボなネタ晴らしはこの辺で。

冒頭で、この話はハッピーエンドを迎えると書いた。
ところがオリジナルのほうはちょっと違っている。
妻が浮気を仕返して、夫に復讐するのでは? と匂わせているのだ。

その方がルビッチらしいと言えるかも。

『結婚哲学』、『君とひととき』
両者を観くらべてみるとめちゃめちゃ面白い。

関連記事 ;
『結婚哲学』(1924・アメリカ)

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関連リンク : エルンスト・ルビッチ監督作品(いちおう年代順です)
★★☆☆☆ 『牡蠣の王女』(1919・ドイツ)

★★★★★ 『花嫁人形』(1919・ドイツ)

★★★☆☆ 『デセプション』(1920・ドイツ)

★★★★☆ 『結婚哲学』(1924・アメリカ)

★★☆☆☆ 『ウィンダミア夫人の扇』(1925・アメリカ)

★★☆☆☆ 『山の王者』(1929・アメリカ)

★★★☆☆ 『ラブ・パレード』(1929・アメリカ)

★★★☆☆ 上質な時間、『モンテカルロ』(1930・アメリカ)

★★★☆☆ 『陽気な中尉さん』(1931・アメリカ)

★★★★☆ 『私の殺した男』(1932・アメリカ)

★★★☆☆ 『君とひととき』(1932・アメリカ)

★★☆☆☆ 『極楽特急』(1932・アメリカ)

★★★☆☆ 『生活の設計』(1933・アメリカ)

★★★☆☆ 『メリー・ウィドウ』(1934・アメリカ)

★★★★☆ 『天使』(1937・アメリカ)

★☆☆☆☆ 『青髭八人目の妻』(1938・アメリカ)

★★★★★ 『ニノチカ』(1939・アメリカ)

★★★★☆ 『街角 桃色の店』(1940・アメリカ)

★★☆☆☆ 『淑女超特急』(1941・アメリカ)

★★★★★ 『生きるべきか死ぬべきか』(1942・アメリカ)

★★★★☆ 『天国は待ってくれる』(1943・アメリカ)

★☆☆☆☆ 『ロイヤル・スキャンダル』『クルニー・ブラウン』『あのアーミン毛皮の貴婦人』

<書籍>

「ルビッチ・タッチ」ハーマン・G・ワインバーグ(著),宮本高晴(訳)

One Hour With You (映画.comより一部転載)

監督 - エルンスト・ルビッチ
脚色 - サムソン・ラファエルソン
原作 - ロタール・シュミット
撮影 - ビクター・ミルナー
音楽 - オスカー・ストラウス、 レオ・ロビン、リチャード・ホワイティング
助監督 - ジョージ・キューカー

キャスト
モーリス・シュバリエ - Dr._Andre_Bertier
ジャネット・マクドナルド - Colette_Bertier
ジュヌビエーブ・トビン - Mitzi_Olivter
チャールズ・ラグルス - Adolph
ローランド・ヤング - Prof._Olivier
ジョージ・バービア - Policd_Commissioner
ジョセフィン・ダン - Mlle._Martel
リチャード・カール - Detective
チャールズ・ジューデルス - Policeman
バーバラ・レナード - Mitzi's_Maid