シドニー・ルメット監督が、好きで好きで、すきで。
ネットを散見すると評判が芳しくないようだが、私にとっては傑作。

そういえば『刑事エデン 追跡者』(1992)という映画も、主演のメラニー・グリフィスがゴールデンラズベリー賞最低主演女優賞をもらっていたっけ。

あれだって私の中では大傑作。
人の評価に惑わされずに生きていくのさ。
でも正直、いま見直すのが怖い。(笑)



『デストラップ 死の罠』の原作は、
アイラ・レビン「死の接吻」。



日本推理作家協会が出している
「ミステリーの書き方」という本の中で、
梓林太郎が、“理想とする作品"に
「顔」「点と線」(ともに松本清張)と、
この「死の接吻」を挙げている。



同名の小説や映画が他にあるので、お間違えのなきよう。

私は映画を観るときは、1回目は流し気味に観るのだけれど、この映画だけは最初から気合いを入れてみればよかったーーー!と、すごく後悔している。

やっぱりミステリーはファーストコンタクトがいちばん面白い。
なのでミステリー好きの方には、最初から真剣勝負されることをオススメする。

あらすじ(ネタバレあります!)

シドニー・ブリュール(マイケル・ケイン)は落ち目の戯曲作家。

教え子から送られてきた習作があまりにも素晴らしいので「殺して自分の作品にしようか」なんて、妻のマイラ(ダイアン・キャノン)と冗談ぽく話している。

シドニーは、その才能ある学生アンダーソン(クリストファー・リーブ)に電話をかけ、自宅に呼び出す。

妻のマイラも加わり、3人で話をしているうちに冗談が冗談でなくなっていく。

アンダーソンは作品のことを誰にも口外しておらず、コピーも取っていないというのだ。
完全犯罪が成立しそうな条件がそろいすぎている。

ところが夫妻の態度を不審に思ったアンダーソンは、辞去をこころみる。

この辺の3人の駆け引きが絶妙。

結局、アンダーソンは絞殺されてしまう。

死体を片付け、夫婦二人きりになると、マイラは別れを切り出す。
さすがに殺人犯の夫とは今後も一緒にやっていけないという。

ここでチャイムが───。

近隣に住む“霊能者"ヘルガ・テンドープ(アイリーン・ワース)がやってきたのだ。

いきなり家の中を歩き回り、
「痛み」がそこら中に漂っていると言い出すヘルガ。

さらに「二人とも命の危険にさらされている」と。

「ブーツを履いている男があなたに襲いかかる」とも。

まさにアンダーソンはブーツを履いていたが…。

ヘルガ、嵐のように去って行く。
再び夫婦二人に。

ここでヘルガ、玄関に誰かいると言い出す。
悲鳴。だが、誰もいない。

そのとき二階の窓から死んだと思われたアンダーソンが突然の乱入!
シドニーに襲いかかり、こん棒で滅多打ち。

ぎゃああああああ!

そして……

ええええええええ??!!

ヘルガ、もともと心臓が弱かったのにショッキングな光景を目の当たりにし、心臓マヒで死亡…。

……実は作家と学生はグル(&恋人同士)で、殺人は狂言だったのだ。

ヘルガの死は自然死として処理される。

かくしてシドニーは妻の遺産を手に入れた。
男二人は共同で執筆を始めることにする。

二人の計画はうまく行ったかに思えた。

ある雨の夜、霊能者ヘルガ・テンドープが訪ねてくる…。

…ここまでが映画の4分の3。

この先あっと驚く展開が。
そして、おそらく誰も予想できなかった衝撃の結末があなたを待っている───。

(あらすじ紹介、ここまででカンベンして下さい)

シドニーがアンダーソンを絞殺(する演技を)したとき、
あんな短い時間、首を絞めただけで人が死ぬものだろうかと思ったものだが、なるほど死なないように締めていたわけだ。

うまいのは、
死体の演技をしていたアンダーソンをわざとモノのように扱い、頭をゴチンと床に落としたりするもんだから、観客は「ああ、やっぱり死んでいるんだな」と思ってしまう。

このあたりの微に入り細をうがった演出で、ミスリードしていく手練手管はさすがシドニー・ルメットだ。

そして本当に参ったのが、“霊能力者"ヘルガ・テンドープ!

現実世界で、霊能力者が実在するか否かは、人によって見解が違うだろう。

映画の世界についてはどうか。

スクリーンの中では何でもアリだ。
「実在する」という映画もあれば、
「いるわけがない」という映画もある。

その映画(世界)が霊能力の存在についてどういう立場を取っているかは、フタを開けてみなければ分からない。

いや、正確に言うと、最後まで見なければ分からない。
最後のワンカットを見て、ようやく我々は判断を下すことが許されるのだ。

この作品は、そこを逆手に取った、実に実に、見事な作品だ。
見事すぎてちょっと腹が立つほどさ。(笑)

br_banner_kokuban



Deathtrap (KINENOTEより一部転載)

監督
シドニー・ルメット

脚本
ジェイ・プレッソン・アレン

原作戯曲
アイラ・レビン

キャスト
マイケル・ケイン Sidney_Bruhl
クリストファー・リーブ Clifford_Anderson
ダイアン・キャノン Myra_Bruhl
アイリーン・ワース Helga_Ten_Dorp
ヘンリー・ジョーンズ Porter_Milgrim
ジョー・シルバー Seymour_Starger
トニー・ディ・ベネデット