1991年に出されたシド・フィールド・著
「シナリオ入門 映像ドラマを言葉で表現するためのレッスン 別冊宝島144」
が大変な高値をつけている。

今日現在(2015年3月12日)のアマゾンでは5,790円。
2004年に再発売された版などは何と80,000円だ。

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著者のシド・フィールドはこの後も本を出している。

「映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと」と
「素晴らしい映画を書くためにあなたに必要なワークブック シド・フィールドの脚本術2」がそれで、今現在は簡単に入手できる。

「映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと」
の後書きで、幻の「シナリオ入門」について触れてあるので引用してみる。

この、脚本術のバイブルとも言うべき本書が、未だ日本で翻訳されなかったのは、不思議と言うほかありません。
わずかにワークショップ用のテキストが「別冊宝島」から出ましたが、今やプレミア本としてオークションに出され、高値を付けています。
共著の脚本家、加藤正人氏などは、そのぼろぼろの一冊をいつも大事に抱えていました。
その原書ともいうべき本が本書です。
世界二十二カ国語以上に翻訳され、数回の改訂と四十版を重ねる名著です。

「映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと」
訳者あとがき p347より

『天地明察』
『孤高のメス』
『だいじょうぶ3組』
『クライマーズ・ハイ』

などで有名な、あの加藤先生がボロボロになるまで読み込んだ、となればこれは凄い本に違いない。
もしかしたら1991年の「シナリオ入門」では、シド・フィールドが思わず口を滑らせてしまって、上記の2冊には書かれていない特別な秘密が書かれていて、それで高値を呼んでいるのかも?!

気になったわたしは矢も楯もたまらず、1991年版を入手してみた。

結果は……

「シナリオ入門」に書かれていることは、その後に発売された2冊にすべて網羅されている。
むしろ
『パルプ・フィクション』
『テルマ&ルイーズ』
『ターミネーター2』
などの「シナリオ入門」後に製作された映画についての分析や考察が加筆されており、断然お得だ。

ただ「シナリオ入門」は、左からも右からも読めるという、2冊が1冊にくっついたような作りになっている。
どういうことかというと、左側から開くと横書きで、シド・フィールドの脚本術が、右側から開くと縦書きで、日本の脚本家の方々のアンケートや文章が読めるのだ。

もしかしたら、現在の絶版本プレミア現象は、この右半分の日本の脚本家パートに対して起こっているのかも知れない。
たしかに面白さだけを言うなら右半分に軍配が上がる。

ただし貧乏臭い。
映画・テレビ界への恨み辛みや生活の窮状が切々と語られている。

もちろん全編そうだというわけではない。
当時、第一線で活躍していた脚本家たちを分析したコラムはとても面白い。
70〜90年代のテレビドラマに興味がおありの方には垂涎の本と言える。

しかし総体として、脚本家を目指す人に向けて作られた本であることを踏まえれば、日本の脚本家たちの「つらい、つらい」の大合唱に、やる気が萎えてしまうかも。

まあ事実なのだろうし、親切心からのご忠告ということは百も承知なのだけれど、わざわざ冷や水を浴びせられるよりは、シド・フィールドに
「書け、書け。書けば書くほど上達するんだから」
と叱咤激励されるほうがどれほどありがたいか知れないわけで。

そして、そのシド・フィールドの“勇気が湧いてくる言葉"は、現在発売中の2冊にたっぷり詰まっている。

というわけで「シド・フィールドの脚本術」のほうを求めている読者にとっては、プレミア本を買う必要はなし、という結論に至った。

(以下、引用)
プロットポイントの役割と目的は、単にストーリーを進展させることである。
それがストーリーの方向を変える出来事やエピソードなのである。
映画にはすべてプロットポイントがあるのだろうか。
“当たった"映画は間違いなく、明らかなプロットポイントのある確固とした組織的な構成を持っている。
シナリオには、15から20ほどの異なったプロットポイントを置くこともできる。
第1幕に2つ、第2幕に10、第3幕に1つのプロットポイントを設定することも可能である。
しかし、初めてシナリオを書く準備をする場合、アイデアを構成するためには、結末、発端、プロットポイント機▲廛蹈奪肇櫂ぅ鵐鉢兇4つだけで充分だ。
いちど、この4つの基本的な構成要素を知れば、あなたはストーリーの筋を組み立て、発展させることができる。

効果的な会話を書く助けとなる道具を紹介しよう。
ひとつは、カセットレコーダーを使って人びとの話を録音することである。
友達や知人との会話を録音し、それを聴く。
そして、いかに会話が断片的で、人の考えが変わりやすいかに気づいてほしい。
もし“実際"の会話がどのようなものか知りたいと思ったら、そのテープをシナリオの形にタイプしてみなさい。
癖や抑揚に気をつけて聴き、話し方や語法を見つけなさい。
次に、自分の登場人物がそのような“リズム"や“言葉"で話したらどうなるか考えなさい。
ダスティン・ホフマンは、新しい役に取り組むとき、この方法を使っている。

ここでは、最初の10ページの重要性を考察する。
(中略)
私は、読者が最初に注目するのは、作家がページに言葉を書いていく方法、つまり執筆のスタイルであることを学んだ。
次に読者が注目するのは、ストーリーが何についてのものか、誰についてのものか、そして、3番めに、行動や登場人物が力強い劇的文脈のなかで“設定"されているかどうかに注目する。
私は、ほとんど最初の10ページで決定を下した。
読み続けるべきか、読み続けたいか、ストーリーは何か、誰が主人公か、何が劇的前提となるのか、何についてのストーリーなのか。
読者の心をつかむには、最初の10ページがすべてだ。

(小林竜雄)
私は『アニー・ホール』の分析に感心した。
筆者はこの映画を「ある女性との関係を失うまいとする男のストーリー」と規定し、「しかし、彼女が彼から別の男へと去っていったとき、彼にはその理由が理解できない」、そういう作品であると。
簡単にして明瞭なとらえ方である。
『アニー・ホール』というとウディ・アレンのユダヤ性といった面で語られていることが多いが、その構成に言及することは少ない。
こういった形で余分なものをすべて削ぎ落として、短い言葉で見事に語られると改めて『アニー・ホール』が新鮮なラブ・ストーリーであることに気づく。

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