「ビブリア古書堂の事件手帖3」で一躍有名になった短編「たんぽぽ娘」や、クリストファー・リーブ主演『ある日どこかで』のファンの方ならこの映画を好きになっていただけると思う。

興味を持たれた方はぜひ、前情報はできるだけシャットアウトして(もちろんこのブログも読まずに)映画を堪能していただきたい。
上記の2作品と巡り会えたときのような感動を再び味わえるかも知れない。

心の旅路 [DVD]

あらすじ(以下ネタバレです)

1910年代のイギリス。
軍人のスミス(ロナルド・コールマン)は記憶喪失で、メルブリッジ精神病院に収容されていた。
終戦の知らせに沸きあがる群衆の喧騒に紛れて、彼は町にさまよい出る。

タバコ屋で、要領を得ない彼の様子を見て声をかけた踊り子のポーラ(グリア・ガースン)。
ほっとけずに自分が出演している劇場までスミスを連れて行く。
スミスはそこで気を失い、ポーラのアパートへ運び込まれる。

自分は記憶を失ってはいるが精神は正常である、というスミスを見て、ポーラは彼をかくまう決心をする。

西へ移住し、結婚した二人。
下宿から一軒家に移り住み、待望の赤ちゃんも誕生。
知り合ってから3年、二人は幸せな日々を過ごしていた。

スミスは作家として芽が出そうになったところで事故に遭い、それが原因で記憶が蘇る。
しかし、それと引き替えにポーラとの3年間の記憶を失ってしまった。

つまりスミスからしたら、昨日まで軍人としてフランスで戦っていたのに、今日目が覚めると3年という月日が経過していた。
なぜか軍服ではなく背広を着ていて、リバプールの町なかにいる、といった状態だ。

彼の本当の名はチャールズと言い、大資産家の次男だった。
父親が亡くなった直後で、彼は豪邸を相続する。
そこで15歳の義理の姪キティ(スーザン・ピータース)に惚れられる。
チャールズ(=スミス)は、実業家として頭角を現わしていく。
3年が過ぎ、18歳になったキティと婚約する。

チャールズのもとに新しい秘書がやってきた。
なんとポーラだった!
ポーラはチャールズ(=スミス)と対面しても、驚く様子がない。

どうやら偶然の出会いではないらしい。
雑誌で社長チャールズ(=スミス)の写真入り記事を見て、彼の会社に応募したのだという。

しかしチャールズ(=スミス)の方は、ポーラを見ても何の反応もない。
チャールズからしたら、ポーラは赤の他人、有能な秘書でしかない。

この後ポーラは事あるごとにさりげなく過去の思い出を提示していくのだが、チャールズには何の変化も見られない。

空白の3年間、ポーラはどう過ごしていたか。
スミス(=チャールズ)が行方不明になった直後、病気になり、生まれたばかりの赤ちゃんを亡くした。

舞台へ戻ることができず、昼は働き、夜は秘書の勉強をし、空いている時間にスミスを探していたのだ。

そんなこととはつゆ知らず、チャールズ(=スミス)とキティは結婚を一週間後に控えていた。

しかしキティは、チャールズの中に全くの他人を見る。
彼の心の中には自分より大切な人が住んでいるのではないかと。

それは誰よりもチャールズ本人が感じていた。
生活の端々に、意識の底から浮かび上がってくる思い出のかけらが、喪失感と、何かを渇望する気持ちを呼び起こさせるのだ。

婚約は解消された。

チャールズは周りに進められるままに代議士に立候補、当選する。
そしてポーラにプロポーズ。

しかし、それは愛情が昂じてというのではなく、代議士の有能な妻としてふさわしいからというものだった。

ポーラは一人で思い出の地へ旅行に出かける。

その直後、メルブリッジ工場でストライキが起こる。
昔、二人が夫婦として暮らしていた場所だ。

チャールズは彼の地へ赴き、問題を解決。
その後、なぜか自分がこの町を知っていることに驚く。

記憶の導くままに一軒の家を訪ねると、後ろから「スミシィ」と彼を呼ぶ声がする。
そんな呼び方をする女性は一人しかいない。
“スミス"が振り向くと、そこには最愛の妻ポーラが立っていた。

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参考リンク ;

心の旅路 - Wikipedia

心の旅路 - 映画ならKINENOTE


映画「心の旅路(Random Harvest)」で描かれる温もり - 陸奥月旦抄


P.S.

最近『男はつらいよ』シリーズに嵌まっていて、『寅次郎心の旅路』を観る前に、タイトルのパロディの元となった本作を観てみようと軽い気持ちで手に取った。
まさかこれほどの名作だったとは!
寅さんと山田洋次監督に足を向けて寝られない。

原題の『Random Harvest』の意味については、いろいろな解釈があるようだ。
スミスの人格がランダムだからとか、人生の行方がランダムだからとか、とても面白い。

原書を読めたら答えが分かるのだろうが、私にそんな能力はない。

ただ、映画の中でチャールズが相続した建物が「ランドム・ホール」という呼び名らしいので、あるいは単純にこれのことを指しているのかも。
というあまり役に立ちそうもない情報を最後に付記しておく。

読んでくださりありがとうございました。

Random Harvest (Wikipediaより転載)

監督 マービン・ルロイ
脚本 クローディン・ウェスト、ジョージ・フローシェル、アーサー・ウィンペリス
原作 ジェームズ・ヒルトン
製作 シドニー・フランクリン
音楽 ハーバート・ストサート
撮影 ジョセフ・ルッテンバーグ
編集 ハロルド・F・クレス

キャスト
ロナルド・コールマン - チャールズ・レイニア
グリア・ガースン - "ポーラ・リッジウェイ"/マーガレット・ハンソン
フィリップ・ドーン - ジョナサン・ベネット
スーザン・ピータース - キティ
ヘンリー・トラバース - シムズ
レジナルド・オーウェン - Biffer
ブラムウェル・フレッチャー - ハリソン
リース・ウィリアムズ - サム
ウナ・オコーナー - タバコ屋の女主人
オーブリー・メイザー - シェルドン
マーガレット・ワイチェリー - Mrs. Deventer
アーサー・マーゲットソン - Chetwynd Rainier
メルビル・クーパー - ジョージ・レイニア
アラン・ネイピア - ジュリアン・レイニア
ジル・エズモンド - リディア・レイニア


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