子供の笑顔のアップから始まるファーストカットがとにかく可愛かった。
てっきり女の子かと思ったら、男の子。そしてペットはヘビ。
なかなか意表を突いてくれる。
監督はキャロル・リード。今のところ外れなし。
『第三の男』、『フォロー・ミー』はもちろん、評判の芳しくない(だからウィキペディアにラインナップされていないの?)『ミュンヘンへの夜行列車』も良いと感じた。
本作も良い。カメラが斜めになったり、地面に潜ったり、屋上に跳ね上がったり、観る者をブンブン振り回してくれる。これが実に気持ちよい。

もう一つ、キャロル・リードの特色は「怖さ」。
ある場面では、全身に鳥肌が立った。怖いよう(泣)。
通行人も怖い。何でだろう。いるべきじゃないところにいるからだろうか。

脚本は『第三の男』でもおなじみ、グレアム・グリーン。
最初に蛇を出したり、実弾入りの拳銃を子供の手の届くところに置いたりと、観客の緊張を持続させる術に長けている。

真夜中に少年が町をさ迷い、警官に保護され事情聴取されるシーンでも、ただ事情聴取するのではなくそこに娼婦をからませ、見応えのある場面に仕上げている。なかなか思いつかない発想だ。

あと好感を抱いたのは、大人達がこの少年に見下した態度を取らないことだ。あしらいはするけれど。
それから刑事たちがあくまでも紳士的なこと。
まあ舞台が大使館で、治外法権だからということもあるだろうが、こういうのは邦画だとまずお目にかかれないので。

1948年の洋画にしては画質がかなり悪いが、補って余りある内容でした。

あらすじ(ネタバレあり)

イギリス在駐の某国大使の息子フィリップ(ボビー・ヘンリー)は執事のベインズ(ラルフ・リチャードソン)が大好き。
ずっとベインズの後をついて回っている。
ベインズは夫婦ともども大使館勤務、夫人(ソニア・ドレスデル)のほうは鬼婆のようにフィリップに厳しい。
夫婦仲も冷え切っている。

ベインズはジュリー(ミシェル・モルガン)という女性と不倫をしていた、とはいっても肉体関係はないようだ。

密会現場をフィリップに見つかったベインズは、ジュリーのことを姪だと説明する。
「大使館で働いている人がベインズの姪だったなんてすごい偶然だね」とフィリップは無邪気だ。
ベインズは、姪と会っていたことは誰にも内緒だとフィリップに約束させる。

フィリップがほとんど食事をとらないので、ベインズ夫人はいぶかしがる。見ると服にお菓子のカスがついている。
鬼のような形相で問い詰める夫人に、ついベインズと姪にご馳走になったことを白状してしまうフィリップ。
「ふーん、姪ね」夫人が不気味に笑う。

大使館は、大使が入院中の妻を迎えに行っているため、使用人たちが休暇を取り、ベインズ夫妻とフィリップしかいない。
そこへもってきて夫人が自分も休暇を取ると言いだし、さっさと出ていった。
だがこれはもちろん罠である。夫の浮気の証拠をつかもうという魂胆だ。

そうとは知らずいそいそとジュリーを呼び出すベインズ。
ジュリーが来たのを見計らい、夫人は電報を打つ。
休暇を延長するわ、二日間は帰ってこないつもり、と。

ベインズ、ジュリー、そしてフィリップの三人は、楽しく一日を過ごす。
その夜、ジュリーは大使館に泊まった。

深夜、館内に忍び込んだベインズ夫人はダンナと口論の末もみ合いになる。今にも階段から落ちそうだ。
その様子を建物の外にある非常階段から見ているフィリップ。

ベインズと夫人はいったん離れた。
一人になった夫人は、ジュリーの居場所を突きとめようと、ベランダの外から無理な体勢でのぞきこもうとした。その瞬間バランスをくずし階段に落下、そのまま転げ落ち、絶命。

フィリップは運の悪いことに、この場面を見ていなかった。
さっき夫妻がもみ合っている場面と、いま夫人が倒れている場面が脳内で直結し、ベインズが夫人を階段から突き落としたと思いこんでしまったのだ。

外に飛び出すフィリップ。その後、警官に保護される。
フィリップが警察署にいるとき、電話が鳴った。
ベインズからだった。フィリップは警官に連れられて大使館に戻った。
すでにかかりつけの医師による検死は済んでいて、事故死として処理されようとしていた。
しかしここでフィリップがベインズに言ったひと言、
「正当防衛なの?」が事態を大きく変える。
警官たちはこの言葉を聞き逃さなかった。

ベインズは普段からフィリップに冗談話を聞かせていた。
「自分がむかしアフリカにいた頃、何百人ものアフリカの人食い人種に囲まれたことがあった。でもピストル一丁で切り抜けた。相手を殺したけれど、正当防衛さ」と。

ベインズにとって状況は悪くなる一方だった。
台所の食器や、夫人からの電報などから、愛人がいるらしいこと、夫人が疑っていたらしいことが分かってきた。

とうとうベインズは観念し、一緒にいたのは妻ではなくジュリーだったと白状した。
朝になりジュリーも姿を現わし、事実をありのままに述べた。
フィリップだけが、ベインズを窮地から救おうと、嘘をつき続けていた。フィリップからしたらベインズとの約束を頑なに守り続けているだけなのだが……。

もはや誰からも相手にされないフィリップ。
ジュリーは「嘘はいけません」と厳しくたしなめる。

ベインズも警察に連れて行かれる直前、フィリップのところに来て言う。
「あんな与太話をしたのが間違っていたんだ」
尊敬するベインズからそう言われ、フィリップはもう嘘をつくのはやめようと誓う。

その時、刑事の一人が窓の縁にハイヒールの跡があるのを見つけた。
これにより夫人は階段の上から突き落とされたのではなく、窓から落ちたことが分かり、事態は急転直下、ベインズは無罪放免となる。

だがフィリップだけは知っていた。
その足跡は前日の昼につけられたものであることを。

フィリップは何とか真実を分かってもらおうと刑事たちに必死に食い下がるが、誰一人フィリップの言葉に耳を傾けようとする者はいないのだった。

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参考リンク ;

落ちた偶像 - Wikipedia

落ちた偶像 - 映画ならKINENOTE

落ちた偶像(1948) ☆☆ : 西澤 晋 の 映画日記

少年の「落ちた偶像 The Fallen Idol」 新・豆酢館/ウェブリブログ
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The Fallen Idol (Wikipediaより引用)

監督・製作
キャロル・リード

原作・脚本
グレアム・グリーン

台詞
レスリー・ストーム
ウィリアム・テンプルトン

製作総指揮
アレクサンダー・コルダ

音楽
ウィリアム・オルウィン

撮影
ジョルジュ・ペリナール

編集
オズワルド・ハーフェンリヒター

キャスト
ベインズ - ラルフ・リチャードソン: 大使館の執事
ジュリー - ミシェル・モルガン: 大使館勤めのタイピスト
ベインズ夫人 - ソニア・ドレスデル: ベインズの妻
フィリップ - ボビー・ヘンリー: 某国大使の息子
クロウ - デニス・オディア: 警部補
エイムズ - ジャック・ホーキンス: 刑事

英国アカデミー賞作品賞
ベネチア国際映画祭 原作・脚本賞
ニューヨーク映画批評家協会賞 監督賞


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