戦前の三大喜劇王といえば、チャールズ・チャップリン、バスター・キートン、そしてハロルド・ロイド。
すべての作品を観たわけではないが、この「猛進ロイド」がベストだ。
本作はチャールトン・ヘストン「ベン・ハー」とダスティン・ホフマン「卒業」の元ネタとも言われている。
真偽のほどは知るよしもないが、創作者の魂を刺激して止まないエネルギーが詰まっている映画だと思う。
圧巻はラスト15分、ロイドが愛する人を追って猛追劇を見せる。
ここは何度見ても息を呑んでしまう。
次から次へと繰り出されるアイデア。
もう駄目かと思わせておいて、鮮やかに次の一手をひねり出してくる。
車で追いかけて、駄目。
次にバイクで追いかけて、駄目。
ならばと電車で追いかけて、駄目。
こうなりゃ馬車で追いかけて……!
これらすべてをロイドは身体を張って演じている。
一歩まちがえば大惨事、まさに命懸けというシーンがところどころに出てくる。
実際「ロイドの化け物退治」で、爆発物の取り扱いミスにより彼は指を二本失った。
言われなければ気づかない。いや、言われたあとも気づかない、どころか映画を観ているうちにすっかり忘れてしまう。

ときどきズルをしてラスト15分から見てしまう。
それでも盛り上がるのだけれど、やはり最初の気弱なロイドに寄り添いながら観るべきだったと、その都度反省する。
「ロッキー」でも、生卵ゴックンのあたりから観るのではなく、きちんとオープニングからダメ青年ロッキーと一緒に屈辱を味わいながら観たほうが、後半何倍も盛り上がれるのと一緒だ。

ところでロイドは来日した際、当時の人気バラエティ番組「シャボン玉ホリデー」に出演したそうだ。
観たいぃぃ! でもテープ残ってないだろうなあ。。。

あらすじ(ネタバレあり)

叔父が経営する仕立屋で働く青年ハロルドは、緊張すると吃音が出て上手く喋れない。
特に女性が相手だとひどくなってしまう。
そんな彼の夢は作家になること。今日も遅くまでタイプライターに向かっている。
目下執筆中の作品タイトルは「愛の達人になる秘訣」。
彼は、妄想の中でだけ名うてのプレイボーイなのだ。
列車で出版社に向かう途中、ハロルドは深窓の令嬢メアリー(ジョビナ・ラルストン)と知り合う。

メアリーはハロルドの原稿に目をとめ、彼を「愛の達人」と思いこむ。
ハロルドもこの時はよく喋ることができた。

しかし出版社で、ハロルドの原稿はさんざんバカにされる。
落ちこむハロルド。
その後、再びメアリーと会うが彼女の心からの賞賛も、今のハロルドは皮肉としてしか捉えることができない。
ハロルドは心にもない決別の言葉を口にして、メアリーから離れていってしまう。

ある日、ハロルドが店で新聞を読んでいると「メアリー嬢結婚」の記事が目にとまった。
店内にいた客がその記事をのぞいて驚きの声を上げる。
「相手の男は私の夫よ」
メアリーは結婚詐欺に引っかかっているのだ。
そうと知ったハロルドは、何としてでも式をやめさせようと店を飛び出していく。
ハロルド一世一代の猛追劇がはじまった───。

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Girl Shy

監督
サム・テイラー
フレッド・ニューメイヤー

脚本
サム・テイラー
テッド・ワイルド
ティム・ウィーラン
トミー・グレイ

原作
サム・テイラー

キャスト
ハロルド・ロイド (ハロルド・メドウズ 仕立屋店員)
リチャード・ダニエルス (ジェリー・メドウズ 仕立屋店主)
ジョビナ・ラルストン (メアリー・バッキンガム 大富豪令嬢)

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