まず、色がうっとりするほど綺麗。
それから身障者役のフランソワ・クリュゼが上手い。表情だけで見せてくれる。
介護人に雇われた黒人青年(オマール・シー)のすることなすことを、ほとんどの人は苦々しく見ているのだが、この人だけは笑顔で見守っている。度量が大きいのだ。

それにしても疑問なのは、何故このコンビがうまく行くのかということ。
よけいな気を使わないのがいいということなのか。
たしかに最初の面接の時、他の応募者は、社会のためとか、介護が好きとか、当たり障りのない事を言うのだが、そのどれもが嘘くさい。本当はやりたくないのに、仕方がなく職探しをしているだけのはずなのに。
もちろんそんな事を言えば面接で落とされるに決まっている。
しかしこの青年だけは「落としてほしい」のである。
失業保険欲しさに、きちんと就職活動をしましたよという証明がほしいだけなのだ。
しかも彼は半年間の服役経験がある前科者。
こういう人は雇いづらいだろう。いや、はっきり言って絶対に雇いたくないタイプの人間だ。
そのうえ彼は、このとき雇い主が大切にしているものを盗む。
ここが凄いところで、盗まれたほうの雇い主はそれに気づいているのだが、すぐには言わず、使用期間が終わる日に「あれは大事なものだから返してくれ」というのだ。
これが出来る人もそうはいないだろう。
さらに驚いた事に、その頃にはある程度心が通じ合っているはずの青年は、素直に犯行を認めるかと思いきや、しらばっくれるのである。
平然と嘘をつかれた雇い主はどうするのかとというと、それでも許容して雇い続けるのだ。
結局、その大事なものは最後に返すのだけれど。

私だったら雇わないかな。
しかし介護というのはつくづくむずかしいと思う。
青年のどぎついジョークは、あの雇い主だから許しているのであって、あれには怒りを禁じ得ない、受け入れられないという人は多いだろう。
だが青年にかなり魅力があるのも事実だ。
「鈍感力」という本があったけれども、それだけじゃない。
普通なら遠慮するところを、ぐいと踏み込んでくるようなところがある。
建前とかきれい事を粉砕するようなパワーがあるのだ。
今回の雇い主との出会いは、そのへんがとても上手く機能したものと思われる。
そのような邂逅にもかかわらず、この二人は依存し合っていない。
だから絶頂期であっても、お互いの成長のためによくないと思えば別れられる。
これはよほど強くないとできないことだ。
だからこの「最強のふたり」という邦題は的を射ていると思う。
素晴らしいタイトルを考えついたものだ。
80点つけたいところなんだけれど、ドリスがかなり暴力的なところに引いちゃったので5点マイナス。

あらすじ(ネタバレあります)

介護の面接にやってきた青年ドリス(オマール・シー)。
仕事を探しているわけではない。
失業保険をもらうために就職活動をしている振りをしているだけ。
しかしどこを気に入られたのか、試用期間付きの採用となる。
このときドリスは卵の置物を盗む。
ドリスと雇い主フィリップ(フランソワ・クリュゼ)はうまが合い、介護する側される側という間柄を越えて友人同様のつきあいをする。
周囲は、ドリスが前科を持っていることを突きとめるが、フィリップは意に介さない。
試用期間が過ぎても、ドリスはやめなかった。かくて本採用となる。
卵の置物は大切なものだから返してほしいとフィリップがいうと、青年は、さて何のことだかとしらばっくれる。
フィリップには文通している女性がいた。
いつまでも進展しない関係にドリスは業を煮やし、強引に女性のところに電話をかけてしまう。実際に会う約束を取り付けるが、彼女は来なかった。
落胆するフィリップ。
音楽・美術に造詣の深いフィリップの影響を受けて、ドリスは絵を描き始める。これがなかなかの出来で、高値で売れる。
息の合った二人はこのままずっとこの関係を続けると思われたが、フィリップは解雇を言い渡す。
ドリスは一介の介護人で終わる器ではないと見たのだ。
ドリスは、以前に盗んだ置物の卵を返し、屋敷を後にする。
新しくやって来た介護人は、これといって不足はないのだけれど、どうも気に入らない。フィリップのストレスはたまる一方。
見かねた雇い人イボンヌ(アンヌ・ル・ニ)は、ドリスに電話する。戻ってくるドリス。
二人は以前の調子を取り戻す。
ある日、ドリスはフィリップをレストランに連れて行く。
実は、文通相手の女性とこっそり連絡を取っていて、ここに彼女を招待したというのだ。戸惑うフィリップ。ドリスはフィリップを一人置き去りにしてレストランを出る。彼女はやって来た。それをガラス越しに外から優しく見守るドリス。彼は笑いながら去っていった。

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原題: Intouchables

監督
エリック・トレダノ
オリビエ・ナカシュ

脚本
エリック・トレダノ
オリビエ・ナカシュ

製作
ニコラ・デュバル・アダソフスキ
ヤン・ゼノウ
ローラン・ゼイトゥン

出演者
フランソワ・クリュゼ
オマール・シー
アンヌ・ル・ニ
オドレイ・フルーロ

音楽
ルドビコ・エイナウディ

撮影
マチュー・バドピエ

編集
ドリアン・リガ