観察眼 (角川oneテーマ21)

「ある時、日本代表の練習後に自分(今野泰幸)と岡ちゃんと二人で、
『本当に不細工だな』ってお互いに言い合っていたんです。
そこで(本田)圭佑に『自分と岡ちゃん、どっちが不細工だと思う?』って聞いたら、
『そりゃ岡ちゃんの方が不細工やで。今ちゃんの方がイケメンやん。
でも、髪型があかんわ。髪型をしっかりすれば今ちゃんはイケメンやで』
ってズバッと言うんです」

これを読んだとき、
「岡田武史監督って、一見とても厳しそうに見えるけど、
ピッチの外ではこんなにフレンドリーな人だったんだ」
と感動してしまいました。

…が、しかし、いくら何でもここまで?
そこでようやく気づきました。
「岡ちゃん」と呼ばれている選手がひとりいたことに。
岡田監督、ほんとにごめんなさい(汗)

。。。本書は遠藤保仁、今野泰幸両選手の対談をふくむ共著です。
面白いなと思ったのは「あの試合、あの場面でなにを考えていた?」
という質問に対するお二方の答えが、まるっきり違うところ。

同じユニフォームを着て、同じ目的を持っていても
ポジションや経験値が違うと、これほどまでにメンタルが違うんですね。
とても楽しくて、タメになる一冊でした!

(以下、引用です)

いくら上手い選手でも試合に出られないことって、あるんです。
コンサドーレ札幌時代も、自分より上手い選手はたくさんいたのに、
1年目の自分がスタメンで試合に出ることができた。
それは、何かが足りないということではなく、
監督の要求にしっかり応えられたかどうかだと思うんです。
極端な話、日本代表で生き残るためには、
何でもこなす覚悟が必要だと思っています。
南アフリカワールドカップ直前のイングランド戦では右サイドバックをやりましたけど、
試合に出られるんなら、GK以外どこでもやる覚悟でした。
「自分のポジションが」と言う選手は、日本代表では生き残っていけないし、
選手としても成長できないんじゃないかと思います。
それは、自分で自分の可能性を否定しているようなもの。
だから、オシムさんに「センターバック」と言われた時も
「この要求に応えることで、また一歩成長できるかもしれない」
という気持ちでやっていました。(今野)

後ろからボランチのヤットさん(遠藤保仁)の
プレーを見ていると、感心することばかりです。
自分もやっていたからこそ分かるっていうのもあるんですが、
本当にヤットさんはすごい。
例えば、試合中にこちらのセンターバックが
サイドに引き出されることがよくあります。
その時、素早くセンタリングを上げられると、
ペナルティボックス内の守備の人数が足りなくてピンチになるんです。
そんな時、ヤットさんは、センターバックのポジションに
すっと入ってくれているんですね。
すごく当たり前に思えることかもしれないけれど、
そういう気遣いのあるポジショニングとかカバーって意外とできる人が少ないんです。(今野)

(ブラジルワールドカップ3次予選、アウェイの北朝鮮戦)
空港に到着したところから扱いは酷かった。
入国手続きに考えられないくらい時間がかかって、
選手同士で話をしているだけでも注意されたし、
手荷物が回るところに座っているだけでも「立て」とか言われた。
ホテルに入っても「エレベーターは1基しか使わせない」
と言われてロビーは大混雑し、部屋にたどり着くまで一苦労だった。
食事に関しても用意していた食材を没収されてしまい、
日本から帯同していたシェフが地元の市場で食料をかき集めてくれたからなんとかなった。
向こうが用意したバスでスタジアムに行くにも遠回りされて到着したのはギリギリ、
その上、国歌斉唱の時はブーイングです。
「こんなのありかよ」って思ったし、「コノヤロー」って感じで
メラメラと燃えてくるものがありました。(今野)

代表で、今ちゃんがセンターバックに入ったのは大きいと思うよ。
一般的には「背が低い」とか、
「(中澤)祐二や闘莉王がセンターバックの典型的なタイプだ」
みたいに言われるけれど、要はセンターの高さと強さを取るのか、
それとも後ろからのビルドアップを取るのか、どっちを取るのかってことでしょ。
それは、監督の好みの問題だけど、
俺はどんな選手がセンターバックに入っても後ろから繋ぐことを要求する。
そういう意味で、今のセンターバックの今ちゃんも(吉田)麻也も
繋ぐ意識がすごく高いんでやりやすい。(遠藤)

(ザッケローニ・ジャパンの収穫と課題)
これまでを振り返ってみると、反省点はいろいろあるね。
チームとしては北朝鮮戦みたいに前からガンガン来る相手に対して、
自分たちのサッカーができなかった。
日本は、良いところがほぼゼロだったし、チャンスもほとんどなかった。
あれくらい厳しくプレスをかけられた時に、
どうやってそれをかいくぐって、自分たちのサッカーをしていくのか。
難しいテーマだけど、こういう試合は最終予選とか、
これからもあるから考えていかないといけない。(遠藤)

遠藤 「個人のためだけじゃなく、チームのためを考えると、
同じ間違いは繰り返しちゃいけないと思う。
ミスを引きずるのも良くない。
だから、いくら悪い試合でも見直して反省して学んで行くことが重要だよ。
サッカーのゲームでは、似たような場面がたくさん出てくるからね。
その時にうまく対応できるように、自分の引き出しを用意しておくことが大事」

今野 「負けた試合って、基本的に見たくないんですよ。
見ているだけでも、なんかイライラしてくるんで。
だから、北朝鮮戦とかも見返していないんですよね。
あまりにも良いところがなかったんで。
でも、もう少し冷静に反省して次の試合に活かせるようになりたいです」

昔からユーティリティプレイヤーなんて言われてきましたけれど、
いろんなポジションができるユーティリティというより、
考え方を柔軟に変えられるユーティリティを大事にしたいと自分では思っています。
こんな言い方をすると、上手に生きていけそうだねとか、
八方美人なんて言われそうですけれど、そういうつもりではないんです。
トップの世界に居続けるためには、いろんな状況に対応できる懐の深さ、
状況に応じて生き抜く図太さが大事だと言うことです。(今野)

例えば車を運転している時。
赤信号で止まることなく交差点を何回か連続して通ることができていても、
次の交差点で信号無視とかで警察に捕まってしまったら、
そのことの方が大きくて、青信号が続いたラッキーのことは忘れてしまう。
でも実際には、この「青信号が続いた」というような「小さな成功」はいっぱいあるはず。
みんな覚えていないだけなんだと思う。
そういう小さな成功体験を無意識に身体にしみ込ませれば、
いろんなものが見えてくるし、「観察眼」が養われてくるんだと思っている。(遠藤)

(ザッケローニ監督と)コミュニケーションも取れているけど、
監督を見ていて「すごいな」って思うのは、選手をすごくよく観察していることだ。
とにかく選手の行動をよく見ている。
食事は誰と誰が一緒だとか、誰と誰が仲が良さそうだとか、いつもキョロキョロしている。
しかも、よく選手と話をしている。
選手と監督とがうまくコミュニケーションが取れればチームの質は上がっていくし、
質が下がればコミュニケーションも取らなくなる。
ザッケローニ監督はそのことをよく理解しているんだと思った。(遠藤)

バックパスはすごく重要だと思っている。
バックバスには「逃げる」っていうイメージがあるかもしれないけど、
FCバルセロナだって相手ゴール前まで行っても、
状況が悪ければバックパスをしてやり直している。
FCバルセロナがバックパスをしても何も言われないけど、
日本代表の試合で俺たちがバックパスするとブーイングが起こる。
正直、「なんで?」と思っている。
もう少し、バックパスの重要性を理解してほしいと思う。(遠藤)

「試合に負けて悔しくて泣くなら練習しろ」
これは、オシムさんがよく言っていた言葉。
自分たちに実力が足りないから負けるんであって、死ぬほど練習して、
俺はもうこれ以上何も出ないっていうぐらい戦えたら、逆に負けてもスッキリする。
でも練習が足りないから「もっとしておけば良かった」と思って悔しくなる。
オシムさんは、さすがいいこと言うなって思ったね。(遠藤)

目次

第一部 今野泰幸の「観察眼」

FWで始まったサッカー人生

ストッパーとして評価された高校2年

もう一段階レベルアップのためのボランチへのコンバート

小さい頃から持ち続けた「ヒーロー願望」

練習参加から勝ち取ったコンサドーレ札幌への加入

岡田武史さんに教えてもらった「武器」

ずっと弱かった精神面

監督の要求に応えることの重要性

理解に時間がかかったオシムサッカー

反抗心があったクラブでのコンバート

「サッカーを教えてくれた」城福さんに感謝している

中澤祐二と闘莉王という大きな壁

理想のセンターバックは「自分からアクションを起こす」

まったく違うレベルだと感じたブラジル

挫折を味わったアテネ五輪の敗退

自分に腹が立ったドイツワールドカップメンバーからの落選

「代表最後」と臨んだ南アフリカワールドカップ

「6分の出場」から学び、考えたこと

コンビを組む吉田麻也との約束事

監督により異なる「求められるセンターバック」

ザッケローニ監督が要求する身体の向きと距離

自分たちも期待している3―4―3のシステム

「流れを読む感覚」をいかに身につけるか

優勝を狙ったチームでのJ2降格

キャプテンの参考にしたドゥンガと長谷部

選手だけのミーティング、大熊監督の判断

キャプテンをやって初めて感じた難しさ

タイミングとしてベストだったキャプテン就任

いじられキャラとしての役回り

人見知りで打ち解けられない選手はプレーにも影響が出る

遠藤保仁の「メッセージ付き」のパス

他人の意見に耳を傾けることの重要性

向上心が強い本田圭佑との関わり方

遠藤保仁の部屋で二人で話すこと

結婚したことでも生まれた選手としての安定感

日本代表がより上にいくためには攻撃の型が必要

とにかく嬉しかったセンターバックとしての代表初ゴール

シュートは逆サイドにインステップで

アウェイの北朝鮮戦、「優しすぎた」日本

ワールドカップ予選で感じるホームとアウェイの差

J2の難しさ、昇格したFC東京への思い

毎年、オファーをもらえるような選手でありたい

第二部 それぞれの「観察眼」

第一章 対談 日本サッカーを「観察」する

第二章 あの試合で二人は何を考えていたのか?

.タール戦(2011年1月21日)

∨鳴鮮戦(2011年9月2日)

第三部 遠藤保仁の「観察眼」

ミスをした選手にどう対処するのか

言われて気づくよりも自分で気づく選手になることが重要

ミスプレーの一つ前のシーンを考える

どんな監督であってもプレースタイルは変えてこなかった

試合中に対峙する相手選手の良いプレーを自分のモノにする

選手と監督とがコミュニケーションを取るということの重要性

プレースタイルを知るには「話す」よりも「見る」

3トップの両サイドの動き方をどう考えるか

「3―4―3」はまだ試合でやるレベルに届いていない

なぜザッケローニの「3―4―3」は難しいのか

バックパスの有効性をもっと理解してほしい

ワールドカップで痛感した日本と世界のパススピードの差

本田、香川、岡崎らとの関係性

「ダッシュ」をしなくても最長距離を走っている理由

0.1秒でも「ボールを見る時間を少なくすること」

試合に負けて悔しくて泣くなら練習しろ

日本代表にいることで得られる「気づき」

年齢でなく経験値があることで得られる信頼感

小さい頃から「個の力」を伸ばすために必要なこと

個人のレベルアップと日本のスタイル

アジアカップで改めて感じた勝つことの難しさ

南アフリカワールドカップのデンマーク戦とアジアカップのヨルダン戦

全員で考えること、チームとしての難しさであり面白さ

クラブの成長も選手個人の成長と同じ

幅広い年齢のファンに受け入れられるような選手になりたい


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