最近、再発売された「子連れ狼」を買いました。

子連れ狼 第1巻 愛蔵版 (キングシリーズ)子連れ狼 第1巻 愛蔵版 (キングシリーズ)
小池 一夫 小島 剛夕

小池書院 2011-12-10
売り上げランキング :

Amazonで詳しく見る by G-Tools

これが抜群に面白くて、自分の中で今『小池一夫』ブームが来ています。

今回取り上げた「春が来た」は、
「子連れ狼」と同じく、小島剛夕先生とのコンビ作品。
それぞれの事情で、仕えるべき主人を失った二人の老人の破天荒な余生が描かれています。
この二人ほど、老境という言葉がまったく不似合いな人はいませんね。
このマンガを読んだ後、自分は本当に「生きている」と言えるのだろうか…
そう自問自答してしまったほど、強烈な内容でした。

(以下、ネタバレあります!)

春が来た(1)
老境を迎えた元同心と元忍者のコンビが織りなす時代劇。
現代でいえば定年退職して、何者にもはばかることのなくなった境涯を
「春が来た」と表現するセンスが素晴らしいと思う。
竹の子を100両で売る話で、それを買い上げる女主人のレトリックが鋭い。

春が来た(2)
「蛍火燈籠」。元同心の太郎兵衛が、
自分を刺せないと分かっているくせに娘に小柄を渡し
「俺を刺せ」と言ったことをとがめる元忍者の次郎兵衛。
太郎兵衛の「なんとかこの場を切り抜けたい」という
「そこはかとない期待感」を厳しく戒める。実に耳が痛い。
「刺せ」と言っただけでも凄いと思ってしまった自分を恥じる。

春が来た(3)
二人の老人が、第二の春を謳歌する痛快時代劇かと思ったら、
話は全然違う方向に。自分の非力さ、この世のままならなさを、
これでもかと思い知らされるという厳しい展開。

春が来た(4)
旅すがら、出会う仏像に小便をひっかけてまわる二人。
まさに神をもおそれぬ所業。無宗教の私ですら、読んでいてビビってしまう。
小池一夫先生の腹の据わり具合が半端ない。

春が来た(5)
これからは罪を重ねるだけ重ねて死んでいこうと決意した二人。
なぜか俄然活き活きして見えるからフシギ。
もはや決めゼリフとなった「わしらは悪事を働いたんですかのう」
この問いかけに、答える言葉を持たない自分がいる。

春が来た(6)
今更ではあるが、小島剛夕先生の画力がすさまじい。
とくに女性の表情! 「欲の皮屋」こと浪花屋真盛が初登場。
強力なキャラなのでレギュラーになるのだろうと思いきや、
あっさり姿を消す。うーん、豪華すぎるキャスティング。

春が来た(7)
賞金稼ぎを邪魔する新商売「賞金塞ぎ(ふさぎ)」。
これまたなんとも奇抜なレトリック。
これが個人的には最強のエピソードだった。
それにしても、こんなピカレスクな物語を、
NHKはいったいどうやってドラマ化したのだろう。
とても気になる。いつか見てみねば。

春が来た(8)
縁あって尾張藩に召し抱えられた二人。
次から次へと城内潜入を試みる徳川方の忍びを、
知略のかぎりを尽くして迎え撃つ次郎兵衛。
しかし自分も元忍びだっただけに、
主人のために自分の生き方に疑いを持つことなく
犬死にしていく彼らが忍びなく思え、つい情けをかけてしまう…。
全巻読了。大満足です!

番外編 :
「小池一夫伝説」 大西祥平・著
小池一夫伝説 (映画秘宝COLLECTION)

面白すぎて、一気に読んだ。思うに小池先生の凄いところは、
原作が実写化に耐えうるというところだと思う。
引き合いに出して申し訳ないが、梶原一輝や手塚治虫の作品は
アニメだと見られるけれども、実写だと大惨敗…というケースがままある。

その主たる原因は、ストーリー展開や表現方法を
アニメでならではの荒唐無稽さに頼る比重が
大きすぎるきらいがあるからだと思うのだけれど、小池作品の場合、
核となっているのは、人間の業であったり、心の機微であったりするので、
実写化、ひいては舞台にかけても十分通用するのだろう。

念のため申し上げておくが、だから梶原・手塚作品が
小池作品より劣っていると言いたいわけでは全然ない。

むしろアニメでしか表現し得ない破天荒さを駆使して、
我々を楽しませてくれたことに大いに敬意を表したい。
どうかご理解の程をよろしくお願いいたします。

br_banner_kokuban

春が来た [DVD]
春が来た [DVD]
posted with amazlet at 11.12.18
NHKエンタープライズ (2006-07-28)
売り上げランキング: 128643