マスカレード・ホテル

発売して間もないので、ネタバレ無しの方向で。

とある一流ホテルで殺人が行われる可能性があることが分かり、
数人の刑事がホテルのスタッフになりすまし、警戒することに。

若き刑事と、彼の指導係に任ぜられた女性ホテルマンが、
ぶつかり合いながらも、客が持ち込むさまざまな無理難題を
解決していくうちに、徐々に歩み寄りを見せはじめます。

・・・・・・と書くと、今、出版業界で流行っている
「神様の〜」とか「天国の〜」とかをタイトルにつけても
いいんじゃないかと思われるかも知れません。

たしかに、主人公のホテルウーマン・山岸尚美は
一流ホテルの名に恥じない、それこそリッツ・カールトンに
勝るとも劣らないホスピタリティを魅せます。
(いや、リッツ・カールトンに泊まったことは
ないんですけどね。まあ、イメージで 汗)

しかし、対する新田刑事は、そこに欺瞞を感じ取ります。
「お客さまのためとは言っているが、ホテルを一歩出たら
赤の他人で、何一つ助けないんだろう?」というわけです。
それならば、あなたが礼を尽くしている相手はお客さまではなく
お客さまが落とすお金じゃないのか、と暗に非難するんですね。

これに対し、山岸尚美は言い返すことができません。
それというのも、新田ら刑事たちが勤務時間の内外にかかわらず
犯人検挙に血道を上げているのを間近に見ているので
ホテルの敷地内だけでお客さまを神様扱いしている自分のあり方を
問い直さざるを得ないのです。

このへんが実に東野圭吾らしいなと。
今の日本では、多くの人が「感動系物語」「泣ける話」を求めているように思います。
実際、そういったニーズに応えたものが沢山ヒットしています。

「○○の従業員の方がこれほどまでに尽くしてくれた」
という、いわゆる感動を呼ぶ話も、つまるところ
リピーター客をつくるための戦略の一環でしかありません。

ちまたでは「泣ける話」として、上っ面だけ撫でて
小ぎれいにまとめているのを、経営サイドの“仮面"を引っぱがして、
真の思惑を白日の下にさらけ出すところまで書いてしまう
東野圭吾が、私は大好きなのです。

総合評価は、星3つです。(5つ満点)
減点理由を2つだけ挙げてみます。
・新田刑事のキャラが、加賀恭一郎とかなりかぶる。
・クライマックスがあまり盛り上がらない
といったところでしょうか。

最後に、作品の質とは無関係ですけれど
自炊云々の注意書きについてひとこと述べさせて下さい。

読み終わった次のページに「自炊によるデジタル化を認めず」
の文字が目に入ってきて、物語の爽やかな余韻が台無しでした。

たとえば、コンビニで買い物をしたとき、店員さんに
「ありがとうございました。あ、それからうちは万引き禁止ですから」
とわざわざ言われているような気分、とでも言ったらいいでしょうか。
そんなコンビニ、二度と行きませんよね。

そもそも自炊する人の割合って、0.0001%くらいでしょう?
関係のない99.9999%の人が、1680円払って
わざわざ目にしなければいけない一文なのでしょうか。
(しかも、次のページにも同じ事が書いてある)

利益を著しく削られている出版社の気持ちも分かりますが、
金を払った人間に対してのホスピタリティとしては最低だと思います。
それこそ本書の山岸尚美を見習ってほしいですね。

マスカレード・ホテル
東野 圭吾
集英社 (2011-09-09)
売り上げランキング: 94


<東野圭吾作品 - 極私的星取り表>
★★★★★ 「容疑者Xの献身」
★★★★★ 「真夏の方程式
★★★★★ 「白夜行
★★★★★ 「卒業
★★★★★ 「眠りの森
★★★★☆ 「マスカレード・イブ
★★★★☆ 「人魚の眠る家
★★★★☆ 「プラチナデータ
★★★★☆ 「どちらかが彼女を殺した
★★★★☆ 「新参者
★★★☆☆ 「マスカレード・ホテル
★★★☆☆ 「片想い
★★★☆☆ 「赤い指
★★★☆☆ 「嘘をもうひとつだけ
★★★☆☆ 「私が彼を殺した
★★★☆☆ 「悪意
★★☆☆☆ 「ラプラスの魔女
★★☆☆☆ 「虚ろな十字架
★★☆☆☆ 「麒麟の翼
★★☆☆☆ 「宿命
★★☆☆☆ 「名探偵の掟
★★☆☆☆ 「カッコウの卵は誰のもの
★☆☆☆☆ 「夜明けの街で
★☆☆☆☆ 「パラドックス13
★☆☆☆☆ 「ナミヤ雑貨店の奇蹟
★☆☆☆☆ 「危険なビーナス

番外編 :
映画『白夜行』 | 東野圭吾ワールドを完璧に再現。