タイトル自体がちょっとした
パロディになっています。

ワイルダーの仕事場には、
「ルビッチならどうする?」
と書かれた額が飾ってあり、
仕事に煮詰まったときは、
彼が師匠とあがめるエルンスト・ルビッチ監督に
問いかけるということを何十年もの間
してきたのだそうです。

まさにマイルス・デイビスにとっての
チャーリー・パーカー、
エリック・クラプトンにとっての
ロバート・ジョンソンですね。

ロバジョンといえば、ロックが大嫌いな
ワイルダーがキャメロン・クロウに
「ロックとはいったい何だね?」
と質問する場面が出てきます。

キャメロン監督は
「私がワイルダーより上回っているのは
ロックの知識だけかも」などと思いつつ、
ロックの歴史を2分以内にまとめて
説明するのです。

その時の説明がブルースマンである
ロバート・ジョンソンから始まるんですねえ!
って私が興奮してどうするのでしょう(汗)。

ご存じの方も沢山いらっしゃるのを承知で
一応補足しておきますと、キャメロン監督は
何と15歳にして「ローリング・ストーン」誌の
ライターを務めたという伝説の持ち主なんですね。

その辺のことは『あの頃ペニーレインと
という自伝的映画に詳しいです。

関連エントリ :
『あの頃ペニーレインと』 Almost Famous | キャメロン・クロウ監督の優しい眼差し。

話が大きく脱線してしまいました。
この本はとにかく面白いです。笑えます。

よくまあこれだけポンポンとジョークが
出てくるなと思うほど湯水の如く
極上のジョークが出てきます。
当時91歳だったとはとても思えません。

決して電車で読まないで下さい……っていうか
読めないですね。装丁が豪華すぎるし重たいし。

その上インタビュアーが聞き上手で
映画にも詳しいキャメロン監督でしょう?
この方以上の適任者はいません。
もう最高の一冊です。

写真も豊富に載っており、
ファン垂涎のショットが満載です。

その中でも光り輝いているのは
オードリー・ヘプバーン、
そしてマリリン・モンローですね。

モンローに耳打ちをしているワイルダー監督、
というツーショットがあって、
これはおそらく有名な写真だと思います。
マリリンの表情が実に艶やかなので。

この写真だけを見ると
「もしや、この二人できてたな?」と
思ってしまっていたことでしょう。
しかし本書を読むと、それはまずなかったと
言い切りたくなります。

なぜかというと、マリリンがどれだけ
"やっかいな"人物だったを表すエピソードが、
これまた湯水の如くに載っているからです。

映画を取り終えるたびに「もう二度とごめんだ」
と思うのだけれど、次の映画でマリリンが
空いていることを知ると「ぜひ出てくれ」
……そう言わせてしまう魅力があったようです。

マリリン以外でも興味深いエピソードが満載です。
アル中の男が墜ちていくさまを描いた
失われた週末』は、酒造業界から
「この映画を引っ込めてくれたら500万ドル払う」
という申し出があったとか。

映画を作るということは、本当に
思いも寄らぬところからいろんな圧力が
かかってくるのだなと想像させる話ですね。

皮肉たっぷりのジョークに事欠かない
本書ですけれど、それは所詮トッピングにすぎず、
ワイルダーの本質はやはり純粋な映画愛に他ならないと
いうことがヒシヒシと伝わってきます。

とにかく、いろんな映画や人を褒めています。
その中でも嬉しかったのが『Shall we ダンス?
をベタホメしていること!
日本人がいないところで日本映画を
褒めているのだから本物の賞賛ですよ、これは。

それから翻訳も良かったですね。
これだけ笑えたのは翻訳の力が
大きかったと思います。
「ビバリーヒルズ」が「ベバリーヒルズ」と
表記されていたのには違和感を覚えましたけど。
おそらくは「ベバリー〜」のほうが
ネイティブの発音に近いのでしょう。

とにかく、この本に出会えて良かったです。
すっかりビリー・ワイルダーの虜に
なってしまいました。

今後しばらくは、映画はもちろんのこと、
テレビなどでかかるワイルダー作品は
欠かさず観ることになるでしょう。

それもこれもキャメロン・クロウと
宮本高晴氏のおかげ、そしてもちろん
ワイルダーのおかげです。
至福の時をありがとうございました。

ワイルダーならどうする?―ビリー・ワイルダーとキャメロン・クロウの対話
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関連エントリ :
『情婦』 <午前十時の映画祭 Series2> | ミステリ・マニア必見の大傑作。