プロサッカー選手、中澤佑二の歩みは、
そのまま日本代表の歩みでもあると
言えるのではないでしょうか。

しかしプロになるまでは非常に苦労をしたと
いうことをこの本を読んで初めて知りました。

高校時代はほとんど無名。
(しかし練習は地獄。100mダッシュを100本
とか当たり前のようにやっていたそうです)

ブラジルにサッカー留学に行くも、
ビザの関係により途中で断念。

ようやくベルディの練習生に加えてもらうが、
交通費は自腹。いつ「明日から来なくていい」
と言われるか分からないので
定期も買えない状態が続きます。

その年はクラブの予算大幅削減があり、
往年のスター選手も容赦なく戦力外通告となった
時期で、自分もこれで終りかと思ったら、
当時の監督が「身長が高いからとりあえず残そう」
のひと言で、ついにベルディとプロ契約。

実は中澤は中学時代から炭酸飲料は一切口にせず
牛乳を毎日2リットル飲んでいたそうです。
その執念が実ったのかも知れません。

ここからは快進撃。あれよあれよという間に
日本代表まで登りつめ、
その後の活躍は皆さんご存じの通り。

もちろんその陰には休日返上の練習、
徹底した自己管理がありました。

2002日韓W杯は最後の最後で代表落ち。
2006ドイツでW杯初出場を果たしますが、
選手の気持ちはバラバラ。

有名な話かも知れませんが、
敗戦後の移動バスの中で数人の選手が
奇声を発しながら携帯ゲームに
いそしんでいたという話には驚きました。

そして未だ興奮冷めやらぬ2010南アW杯。
ここでも驚くべき事実が語られます。

報道とは裏腹に岡田監督と選手たちの関係は
試合を重ねるごとに修復不可能なほど
悪化していったと本書では明かされています。

中村駿輔が主力メンバーからはずれたこと、
中澤佑二がキャプテンを下ろされたことは、
この二人が選手間ミーティングを画策した
張本人と見なされ、その制裁という側面がある…
と、なっているのですけれど…
果たして真相はどうなんでしょう。

私個人の意見を述べさせていただきますと、
岡田武史氏の著書やインタビューなどから受ける
印象は、選手の自主性を重んじる人かなと。

なので、選手間ミーティングが行われても
歓迎こそすれ、制裁を課すということは
ちょっと考えにくいです。

事実その後、選手の意見を取り入れ、
戦術を変更しているわけですし。

それから、監督と選手の関係が冷え込んでいた
ことについては、テレビを通してゲーム中の
ベンチを見る限りでは、非常に
一体感があったように思います。

帰国後の記者会見でも、実に和気あいあいと
していたと感じたのは私だけではないでしょう。

チームの内情がどうだったのかは、それこそ
関係者にしか分からないことなので、
部外者が何を言っても詮無いですが…。

文中で、岡田氏批判ととれる証言を
している選手はすべて匿名扱いになっており、
「選手間ミーティングを企てた事に対する制裁」
云々も、中澤佑二選手本人ではなく
著者の私見のように、
本書を読んだ限りでは、受け取れます。

そうであるならば、中澤佑二という名前を
タイトルに戴いている本書の中で
語るべき事ではなかったような気がします。

最悪の場合、中澤選手にいわれのない火の粉が
降りかかることにもなりかねません。

このへんは岡田武史氏本人に事実確認するなり、
証言した人間の名前を明記するなりして、
記事の信憑性を確保するなどの配慮はあって
しかるべきではなかったかと思います。

そういうわけで、本書の後半部分には疑問が
残りますが、前半の中澤佑二半生記は
実に読み応えがあり、とても面白かったです。

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中澤佑二 不屈