1993年発行だから、
17年前の本ということになる。

三人が歓談しているわけではない。それぞれの
インタビューを一冊の本にまとめたもの。

宮崎駿のそれは「風の帰る場所」に
同じものが収録されているので今回は省略。

インタビュアーの渋谷陽一は、対象となる人物と
あえて戦うスタイルをとっていくことを
前書きと後書きで表明している。

黒澤明の自殺未遂、北野武のフライデー襲撃事件
など、ちょっと躊躇してしまいそうな話題にも、
臆せず切り込んでいっているのがスリリングだ。
その緊張感こそが、本書の最大の魅力であろう。

世界に名をとどろかす三人と正面から打ち合いを
するためには、彼らが手がけたすべての映画を
観ておくことはもちろん、経歴、著作、
趣味なども下調べしておかなくてはいけないし、
話があらぬ方向にそれていっても
ついていけるだけの素養が必要。

実際、黒澤明へのインタビューでも能、
狂言、歌舞伎、絵画にまで話題が及んだ。

それらすべてを網羅するのは
並大抵のことではないと思うが、
渋谷陽一は十二分に責を果たしている。

2010年の現在から見たら、
この三人を並列に扱うことに
異論を唱える人は少ないだろう。

しかし、北野武が『HANA-BI』で、
ベネツィア国際映画祭・金獅子賞に輝いたのが
1997年、宮崎駿が『千と千尋の神隠し』で、
ベルリン国際映画祭・金熊賞を獲ったのが2001年。

海外の賞履歴だけでものを語れるはずも
ないのだけれど、1993年当時においては、
黒澤明以外の二人は今ほどの高評価は
得ていなかったと言っていいと思う。

そういった意味でも渋谷陽一の先見性には
脱帽せざるを得ない。

絵ってねえ、たとえばセザンヌでも誰でも
長いことかかって絵を描いてるでしょ?
下手な絵描きっていうのは
すぐ絵ってできちゃうんだよ。
あんなには描いてはいられないんですよ。
ということはねえ、あの人達が見てるものを
僕たちは見てないわけ。
あの人達が見えてるものは違うんですよ。
だからあんだけ一生懸命描いてるんですよね。
自分に本当に見えてるものを
本当に出そうと思って。
僕達にはじつに浅はかなものしか見えてないから
すぐできちゃうわけ。(黒澤明)

映画っていうのは何かのきっかけで生まれてくる
ものでね、つくっていくわけじゃないんだよね。
そういうものをもう一遍ったって
そうはいかないよね。(黒澤明)

たとえば「乱」で国境の河を
渡ってくるとこがあるでしょ?
あれもセリフでさ、「国境の河を渡って、
ナントカ原に陣を敷きました」
でそこは飛ばせるわけ。
でも、恐らくお客は河を見たいであろうと、
そういうとこはやる義務があると
僕は思うんですよ。(黒澤明)

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黒沢明、宮崎駿、北野武―日本の三人の演出家