マイレージ、マイライフ [DVD]

主人公は、ときおりセミナーや講演会を
開くほどの有能なビジネスマン。

アメリカ中を飛び回っている。主な仕事は
いろんな会社へ出向き“解雇勧告"すること。

年間300日以上が出張というハードワークを
屁とも思っていない。むしろ楽しんでさえいる。

なぜなら持っているカードはほとんどゴールド、
泊まるホテルは一流、飛行機の搭乗手続きも、
エコノミーの客が列をなしているのを尻目に、
VIP専用窓口でさっと済ませられる。

そしてもうひとつ楽しみがある。
マイレージを貯めているのだ。

ある目標マイルまで貯まるとすごい特典がある。
その日がくるのを主人公は心待ちにしている。

そこに青天の霹靂。会社が経費節減のため、
出張を一切廃止して、今後は解雇通告を
すべてインターネットで行うという。

それを提案したのが大学を卒業したばかりの
女性社員。主人公は猛反発するが…。

冒頭、ウディ・ガスリーの「我が祖国」
(THIS LAND IS YOUR LAND)のカバーが流れる。

この曲は、もともとアメリカ(資本主義)批判の
ニュアンスが込められた歌である。

しかし後半部分が端折られて、肯定的な歌詞の
部分のみ歌われることが多かったので
(ほかの歌手はもちろん、ときには本人さえ!)
「アメリカ賛歌」として認識している人も
少なくないようだ。

(調べてみたらブルース・スプリングスティーン
までが後半を省略していたのには驚いた)

詩の内容をかんたんに紹介するとこんな感じだ。

はじめのうちは脳天気に道、空、谷などを
称えている。そしてサビ。

この土地はお前と俺のために作られたんだぜ

そのうちだんだんと雲行きが怪しくなっていく。

大きな壁に『私有地』と書かれていた。
壁の裏には何も書かれていなかった。
こちら側が俺たちのためのものだ

教会の救済事務所で腹をすかせている人たちを
見た。この国は本当に俺たちのためにあるのか?

最後は疑問形で終わっている。まあ、そもそもが
「ここはお前の国、そして俺の国」
とわざわざ歌うということは、裏を返せば
「ここは自分たちの国である」
という実感が持てないから歌うわけで、
持てるくらいならばわざわざ
歌にする必要などない。

オリジナルはメジャーキーで
非常に明るいカントリーといった趣だ。

それだけに、曲調にそぐわない暗い歌詞が
いっそうの衝撃を伴って胸に響いてくる。

今回使われているカバーは、
ヘビなR&Bスタイル。
歌詞を変えたら、全く別の曲になるだろう。

…音楽ブログみたいになってしまった(笑)

何が言いたいのかというと、この曲がつくられた
きっかけとなったのが1930年代の大恐慌。

映画がつくられたのが、リーマンショックや
サブプライムローン破綻で景気の悪化に
あえいでいる2009年のアメリカ。

「我が祖国」という曲の生い立ちを知る者は、
どうしてもこの2つを重ね合わせずにいられない。

資本主義というシステムは、数十年周期で
襲ってくる経済破綻という天災(人災?)に
甘んじ続けなければならないのだろうか。

作り手側はこの問いに、ひとつの解を
ささやかながらも提示している。

ささやかながらーーーと申し上げたのは、
映画の内容が内容だけにスポンサーである
航空会社を全否定するわけにいかないという
大人の事情がうかがえるからである。

そんな中で、精一杯の抵抗を試みている作り手の
みなさんには惜しみない拍手を贈りたい。

ツッコミたいところはいろいろあるけれども、
観終わったときあたたかい気持ちに
なっていたことも白状しておく。

あと、邦題がすごく良いと思った。
(原題は『UP IN THE AIR』)

※以下のサイトを参考にさせていただきました。
この場を借りて心より御礼申し上げます。

玄のリモ農園ダイアリー: This Land Is Your Land

「THIS LAND IS YOUR LAND (我が祖国)」:DEB DYLAN の 風に吹かれて

LEMON TREE レモンツリー:This Land Is Your Land 我が祖国

マジックトレイン音楽のページ ウディ・ガスリー「わが祖国」

THIS LAND IS YOUR LAND - BORN TO RUN

ウディ・ガスリー - Wikipedia

YouTube - 映画 マイレージ、マイライフ 予告


『マイレージ、マイライフ』オフィシャルサイト

YouTube - Up In The Air Soundtrack
"This Land is Your Land" by Sharon Jones & The Dap-Kings


YouTube - Woody Guthrie - This Land is Your Land