赤い指 (講談社文庫)

「あ、これ一度読んだことがある」と、
数十ページ進んだところで気づいた。
とうとうボケが始まってしまったか(泣)

しかしこれは二回目のほうが心に刺さる。
とくにワタシのような親不孝者には堪らない。

物語は、中学生の少年が小さな女の子を
殺してしまったことから始まる。
そのとき両親がとった行動は…。

老人介護や少年法、現代社会が抱えている
問題を寄せ集めたようなこの一家と、
対比して描かれるのが加賀恭一郎の肉親関係。

警視庁捜査一課の松宮は、
伯父の加賀隆正を実の父親のように慕っている。

(松宮は家庭の事情で、隆正から
いろいろな面にわたって援助を受けてきた。
それで余命幾ばくもない隆正に対して、
できる限りの恩返しをしようと考えている。
関係ないが『松宮は将棋ができなかった』
の一行では涙腺崩壊してしまった)

したがって、隆正の息子である恭一郎とは
従兄弟同士ということになる。
(年齢差は十歳くらいか?)
その二人が何の因果か、コンビを組んで
この事件に当たることになる。

しかし松宮の記憶にある恭一郎アニキは、
いつも父親を避けているようで、二人が
顔を合わせたところを見たことがない。

それで松宮は、入院している隆正の見舞いに
一度も来ない恭一郎に内心不満を抱いている。
この父子の確執の理由も、のちに明らかになる。

加賀恭一郎シリーズにおいて、
父親の隆正は一作目から登場していた。

恭一郎が推理に行き詰まったとき、
元警察官の父親に不承不承電話して、
重大なアドバイスを授けてもらう、
という設定が二作目まであったと思う。
ちょっとした安楽椅子探偵といったかんじ。

本作品は加賀恭一郎シリーズの中ではもっとも
社会派に針が振れた作品と言えるのではないか。

トリックはないに等しい。
じゃあつまらないのかと聞かれると、
決してそんなことはない。

たしかに主題はヘビーで、暗くて、
読者受けはあまり良くないかも知れないが、
問題ときちんと向き合う機会を与えてくれた
という意味においてもかなり重要な作品に
位置づけてよいのではないだろうか。

「だったらなんで星三つなんだよ?」
とお叱りを受けるかも知れない。

この作品は見方によっては「加賀恭一郎シリーズ
・スピンオフ版 新米刑事松宮の成長物語」
としても成立する側面があるように思える。
(“松宮の成長"と“松本清張"を
かけていることはナイショだよ)

つまり本作では、恭一郎が可愛い弟分の松宮に
手柄を譲っている分だけちょいと華がないのだ。

まあ、それよりも何よりもワタシ自身が、
以前この本を読了したあと、とくに
東野圭吾を追っかけてみようという気に
ならなかったという事実が物語っている。
良作だが派手さに欠けるのは否めない。

東野圭吾が作品の中で、こんなセリフを
加賀恭一郎に言わせている。
「社会が高齢化していることは、
何年も前からわかっていた。それなのに
大した準備をしてこなかった国の怠慢のツケを、
個人が払わされているというわけだ」

ワタシの母も認知症であることは、
ずっと以前にブログに書いた。

東野先生の仰るとおり、国の政策を当てにせず、
自分で何とかせねばと改めて思う次第である。

…ああ、とうとうシリーズ全部読んでしまった。
ヒジョーにさみしーーー!

内容 [BOOKデータベースより]
少女の遺体が住宅街で発見された。捜査上に浮か
んだ平凡な家族。一体どんな悪夢が彼等を狂わせ
たのか。「この家には、隠されている真実がある
。それはこの家の中で、彼等自身の手によって明
かされなければならない」。刑事・加賀恭一郎の
謎めいた言葉の意味は?家族のあり方を問う直木
賞受賞後第一作。

赤い指 (講談社文庫)
赤い指 (講談社文庫)講談社 2009-08-12
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<東野圭吾作品 - 極私的星取り表>
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★★★☆☆ 「マスカレード・ホテル
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★★★☆☆ 「赤い指
★★★☆☆ 「嘘をもうひとつだけ
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★★☆☆☆ 「ラプラスの魔女
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★☆☆☆☆ 「夜明けの街で
★☆☆☆☆ 「パラドックス13
★☆☆☆☆ 「ナミヤ雑貨店の奇蹟
★☆☆☆☆ 「危険なビーナス

番外編 :
映画『白夜行』 | 東野圭吾ワールドを完璧に再現。