プロ野球界というのは人生の縮図のようです。
ドラフトで鳴り物入りで入団したものの
その後、鳴かず飛ばずで消えてゆく選手。

テスト生から、名球会入りするまでに上りつめ、
その後、指揮官としても輝かしい実績を築き上げた人。

運、不運もあるでしょう。
しかし、何か厳然たる分け目のようなものが
ある気がしてなりません。
本書はその答えを垣間見せてくれているのではないでしょうか。

中西太
だから僕はチームで一番、下手クソな選手と仲良くします。
(中略)
下手クソな子が上達すると、
ほかの選手たちも私の意見に耳を傾けるようになる。

山本浩二
(金本知憲の入団当時)、バッティングはダメ、
守備はダメ、足だけはそこそこ。
とてもレギュラーになれるような選手じゃなかった。

ところがハートだけは強いのよ。
1年目、オープン戦に出したら、
打てなくても粘ってフォアボールをとってくる。

これは使えるぞ、と思って、
そこから徐々に鍛え上げたんだ。
使っているうちに守備も上達し、
レギュラーを獲ったんだ。

工藤公康
あるとき、王さんからこう言われたんです。
“オマエ、なんで打たれるのがわかっていて
城島のサインどおりに投げているんだ。
サインに首振りゃいいじゃないか"って。
(中略)
“お言葉ですが、『城島を一人前にしてくれ!』と
頼んできたのは王さんですよ。
ちょっと打たれたからといって慌てないでください。
僕が必ず一人前にしてみせますから"って。

それ以来、王さんは何も言わなくなりましたね。

そういうことをしていたのは勝ち試合のときだけで、
大事な試合では、自分で配球を決めていたそうです。
誤解のなきよう。

古田敦也さんは、プロ入りのとき、
野村克也さんの本を書店にあるだけ(4冊)
購入したとか。
古田敦也
野村監督にはリード面でよく怒られました。
でも、これがよかった。
僕が打席に立てば、相手捕手はどう考えるだろうかと。
(中略)
逆算式に考えていくと、自ずと攻め方がわかってくる。
守りの知識が打撃に生かされたということです。

今から100年近く前、東京朝日新聞社は
反野球キャンペーンを展開しました。
なぜ反対なのか。その理由がすごいです。
新渡戸稲造
野球という遊戯は悪く言えば巾着きり(スリ)の遊戯、
対手を常にペテンに掛けよう、計略に陥れよう、
ベースを盗もうなどと眼を四方八方に配り、
神経を鋭くしてやる遊びである。

ゆえに米人には適するが、
英人や独人には決してできない。
野球は賤技なり、剛勇の気なし。

その他にも
「強い球を受けたときの振動が脳に伝わって
脳の作用を遅鈍にさせる」
という人や、

「妙な塩梅に頭脳を用いる遊戯であるので
神経衰弱にかかる」
という人まで。

言いがかりにもほどがある
と言わざるを得ないでしょう。

このキャンペーンを張った4年後、
朝日新聞社は、全国中等学校優勝野球大会
(現在の全国高等学校野球選手権大会)
を主催します。ウーン、どうなんでしょう……。

視聴率低下、裏金問題、一流選手のメジャーリーグ流出
高野連と特待生問題、独立リーグの在り方……

日本野球を愛するがゆえに憂う
二宮清純氏の論説がさえわたる1冊です。
目次

はじめに

第1章 監督の極意、投打の奥義

1 野村克也の「配球学」
開幕戦で最強・巨人を葬った理由 /
内角球の意味 / 弱者の戦略

2 中西太「育てる打撃論」
若松勉と内転筋 / アウトローの葉っぱを打て /
フォー・アイズと「何苦楚」

3 稲尾和久に捧ぐ - 中西太インタビュー
「練習のマウンドが宝の山に」 /
「長嶋は何も考えていなかった」 /
三原監督16年目の謝罪 / 風雲に乗って

4 大野豊のピッチング論
江夏豊に導かれて / 松井秀喜、立浪和義、落合博満……

第2章 名選手たちの技術と陥穽

1 松坂大輔論 - 東尾修インタビュー
メジャー1年目の試行錯誤 / 指先に永遠の課題が

2 清原和博は強打者か
4番打者としての実績 / 死球禍とバット投げ

3 土井正博「名伯楽のインコース論」
清原とインコース攻め

4 新井貴浩は「アニキ」を越えられるか

5 渡辺俊介、サブマリンの極意
ぼくはストレートを投げない

6 山武司のホームラン人生
打法改造という勇気 / スイングをする根拠

7 工藤公康「バッテリーとは何か」
軸回転とタテ回転 / 城島はなぜ大成したか

8 古田敦也「日本野球のために」
一振り勝負の真髄 / 18年間の波瀾万丈を語りつくす /
野村監督の本を読破 / 荒木大輔に出したサイン /
イチローの攻略法は / 球界再編の裏のシナリオ

第3章 日米の野球格差を問う

1 松坂大輔ポスティング移籍を考える
サイヤングと野茂英雄 / イチローの「4倍」 /
代理人・ボラスの手腕 / 松坂のコントロール /
ボストンで子育てを / 日本球界がやるべきこと

2 野球超大国アメリカの品格
WBC日本優勝の陰で / 米国有利の試合日程 /
波紋を呼んだ"誤審事件" / アメリカ早期敗退の影響

3 バリー・ボンズと薬物問題

4 日米野球格差の本質 - 団野村の警告
代理人と労使協定 / メジャーの経営戦略と日本の無策

第4章 日本野球を脱構築せよ

1 裏金問題と日本球界の体質
きわめて悪質な所業 / 元スカウトの証言 /
球団経営を圧迫するシロアリ / 資金管理団体を

2 特待生問題と高野連
プロのほとんどは元・特待生 / 朝日新聞社と高野連 /
「興行の論理」そのもの / 斎藤も田中も"野球留学生"

3 独立リーグという可能性
アイランドリーグ・ドリーム / 独立リーグとNPBの関係 /
BCリーグの成算 / BCリーグ・金森栄治の夢

br_banner_kokuban

プロ野球の一流たち (講談社現代新書 1941)
4062879417二宮 清純

講談社 2008-05-20
売り上げランキング : 1814

おすすめ平均star
star面白いです
star選手論、指導論、そして野球の現在と未来
star清原は強打者か?

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

【著者紹介】 二宮清純(にのみや・せいじゅん)
1960年愛媛県生まれ。
フリーランスのスポーツジャーナリストとして、
野球、サッカー、ボクシングなどを取材。新聞、
雑誌、テレビ等を舞台に幅広く活動中。
株式会社スポーツコミュニケーションズ
(http://www.ninomiyasports.com)代表取締役。
主な著書に、「スポーツ名勝負物語」
「最強のプロ野球論」「スポーツを『視る』技術」
(いずれも講談社現代新書)がある。

(本データは、2008年5月20日第1刷発行当時のものです)